2026年5月19日火曜日

自筆証書遺言書保管制度について

法務局における遺言書保管制度が、2020年7月10日から開始されました。


自分で書く「自筆証書遺言」のメリットを活かしつつ、デメリット(紛失、隠匿、形式不備による無効など)を解消するために作られました。実務上も非常に利便性が高く、利用者が増えている制度です。

この制度の概要、メリット、手続きの流れについて分かりやすく解説します。

1. 制度の主なメリット
従来の自筆証書遺言は「自宅で手軽に書ける反面、紛失や改ざんのリスクがあり、死後に家庭裁判所の『検認』が必要」という負担がありました。
この制度を利用すると、以下の強力なメリットが得られます。

紛失・隠匿・改ざんの防止
遺言書の原本が法務局(遺言書保管所)に安全に保管されるため、紛失や、特定の相続人による破棄・隠匿・改ざんの恐れが完全になくなります。

家庭裁判所の「検認」が不要
自筆証書遺言は通常、遺言者の死後に裁判所で「検認」という手続きを踏まないと遺産分割協議や各種名義変更に使えませんが、この制度を利用した遺言書は検認が不要になります。相続開始後、速やかに手続きに移れるため、相続人の負担が大幅に軽減されます。

外形的な形式チェックを受けられる
申請時に、法務官が「日付はあるか」「署名・押印はあるか」といった民法上の形式要件を満たしているかを確認してくれます(※遺言内容自体の有効性を保証するものではありません)。

通知システム(死亡時通知)
あらかじめ希望しておけば、遺言者が亡くなった際、法務局が戸籍担当部署と連携して死亡を検知し、指定された相続人等(1名)に「遺言書が保管されていること」を自動で通知してくれる機能があります。


2. 保管できる遺言書の種類とルール
対象となるのは「自筆証書遺言」のみです(公正証書遺言や秘密証書遺言は対象外)。
また、法務局のシステムで画像データとしても管理するため、用紙のサイズや余白に厳格なルールがあります。

用紙サイズ: A4サイズのみ(片面印刷・筆記)

余白: 上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上の余白が必須

綴じ方: 複数枚になってもホチキス等で綴じてはいけない(契印も不要)

財産目録の緩和: 本文は自筆が必要ですが、財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピー、登記事項証明書の添付でも認められます(ただし、目録の全ページに署名・押印が必要)。

用紙サイズの限定や、綴じ方については、保管制度を利用しない自筆証書遺言とは異なるところです。


3. 手続きの流れ(遺言者本人が行うこと)
保管申請の手続きは、必ず遺言者本人が法務局に出向く必要があります(代理申請は不可)。

① 保管する法務局(遺言書保管所)を選ぶ
以下のいずれかの管轄にある法務局(本局・支局のうち指定された保管所)を選択します。

・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地

② 予約と申請
遺言書、申請書、添付書類(住民票の写し、顔写真付きの本人確認書類など)を用意し、法務局に事前予約を行った上で出向きます。

費用(手数料): 遺言書1通につき 3,900円(収入印紙で支払い)

③ 保管済証の受取り
手続きが完了すると、遺言者の氏名や出生の年月日、保管番号などが記載された「保管済証」が交付されます。

4. 遺言者の死後に相続人が行うこと
遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者、遺言執行者は以下の手続きを行うことができます。
・遺言書保管事実証明書の請求
・遺言書情報証明書の請求・・・検認済み遺言書と同じ効力をもつ書面で、各種相続手続きに用いることが出来ます。
・遺言書の閲覧



まとめ
公正証書遺言を作成するほどのコスト(公証人費用など)をかけたくないものの、自宅保管によるリスク(紛失・死後に発見されない・無効になるリスク)を回避したい場合には、有力な選択肢となります。




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2026年5月12日火曜日

共同親権について

2024年5月に成立した改正民法により、日本でも離婚後の「共同親権」が導入されることになりました。

そして、2026年4月1日から、実務上の運用が本格的に始まりました。





1. 原則と選択制

これまでは離婚後、父母のどちらか一方が親権者となる「単独親権」のみでしたが、改正後は「共同親権」か「単独親権」かを父母の協議で選択できるようになりました。

  • 協議で決まる場合: 父母が合意すれば、共同親権を選択できます。

  • 協議が調わない場合: 家庭裁判所が、「子の利益」を最優先に考慮して、共同か単独かを判断します。

2. 裁判所が「単独親権」を命じるケース

共同親権が原則として検討される一方で、子の安全が脅かされる可能性がある場合は、裁判所は必ず「単独親権」を定めます。

  • DV(配偶者暴力)や虐待: 一方の親による暴力や虐待の恐れがある場合。

  • 関係破綻: 父母の対立が激しく、共同して親権を行使することが困難と認められる場合。

3. 親権行使のルール(日常と緊急時)

共同親権において、あらゆる決定に双方の合意が必要となると生活が停滞するため、以下の例外が設けられています。

  • 日常の行為: 習い事の選択、食事、軽微な治療などは、同居している親が単独で判断可能です。

  • 急迫の事情: 緊急の手術や虐待からの避難など、猶予がない場合は一方が単独で親権を行使できます。

  • 重要な決定: 教育方針(進学先)、転居、重大な手術などは、原則として父母の合意が必要となります。

4. 養育費と面会交流の強化

親権のあり方だけでなく、子の生活を支える実務面も強化されました。

  • 法定養育費制度: 養育費の取り決めをしなくても、一定額を請求できる仕組みが新設されました。

  • 先取特権の付与: 養育費債権に優先的な効力(先取特権)が認められ、強制執行が容易になりました。

5. 過去の離婚への適用

この制度は、法改正前に離婚した父母にも適用可能です。すでに単独親権で離婚している場合でも、家庭裁判所に申し立てて「子の利益」にかなうと認められれば、共同親権に変更することができます。


この制度変更により、親権の有無にかかわらず「父母双方が子の養育に責任を持つ」という理念が明確化されましたが、実務上は「日常の行為」と「重要な決定」の境界線など、個別の事案に応じた解釈が重要になります。

親権があることと、一緒に生活することはまた別の話で、一緒に生活するのは監護権を持つ親ということになります。
もっとも、共同親権の導入により、監護の分掌など、より柔軟な監護のあり方についても選択肢が広がったと言えます。


摂津市、吹田市、茨木市、高槻市、島本町で、離婚に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。

2024年4月11日木曜日

大阪北摂法律事務所 情報セキュリティに関する基本的な取扱方法

当事務所(弁護士磯野真)の情報セキュリティに関する基本的な取扱方法(2023年4月17日制定)を公開いたします。

なお、原本はデータ保存されており、以下は、ブログでの公表用に体裁を整えたものとなっております。




本書は、当職が弁護士としての職務を遂行する際に、情報セキュリティを確保するための基本的な取扱方法を定めるものである。当職は、本書に従い取扱情報を取り扱うとともに、当事務所で勤務する事務職員その他取扱情報に接する者(以下「事務職員等」という。)にも基本的な取扱方法を遵守させる。

1 用語

  本書で用いる用語は、日本弁護士連合会の弁護士情報セキュリティ規程(会規第117号。以下「規程」という。)で定義されたものと同様とする。本書で保護の対象となる「取扱情報」も規程で定義されているとおり「弁護士等がその職務上取り扱う情報」を広く含むが、公開情報等の情報セキュリティを保持する必要のない情報は含まない。

2 安全管理措置

(1) 組織的な安全管理措置
ア 事務職員等に対し、本書をいつでも参照できるようにして、これを遵守することを求め、情報セキュリティを確保するために必要に応じて役割分担を与え、情報セキュリティの確保に関する指揮と監督を行う。
イ 共同受任又は弁護団等で他の弁護士と共同で取扱情報を取り扱う場合には、当該他の弁護士と協議して、取扱情報の授受方法、共有方法等、当該案件の遂行に必要な場合に必要な範囲で、共同の基本的な取扱方法を定める。

(2) 人的な安全管理措置
ア 当職は自ら又は事務職員等に命じて、日本弁護士連合会が発信する情報セキュリティに関する脅威や脆弱性についての情報等の情報セキュリティに関する注意情報を収集する。
イ 当職は、取扱情報の情報セキュリティを維持するために必要な情報セキュリティに関する脅威や脆弱性についての情報収集を行い、教育及び訓練に参加するとともに、事務職員等に対しても、その機会を確保する。
ウ 事務職員等による取扱情報の漏えい等を防止するため、当職の許可なく取扱情報を外部に持ち出すことを禁止する。
エ 事務職員等が退職する際には、保有している取扱情報を返還させ、事務職員等に対し業務用に貸与したもの以外の機器の利用を許可した場合は、当該機器に保存された取扱情報を消去させる。
オ 取扱情報の取扱いを第三者に委託するときは、以下に定めるとおり行う。
① 適切な情報セキュリティ対策を行っている委託先を選定する。
② 委託先との間で、提供する取扱情報に関し、(a)内容、利用目的及び保管方式の定め、(b)第三者提供及び目的外利用の禁止、(c)委託終了時の返還又は消去に関する取り決めを行うか、これらの事項について適切に設定されていることを確認する。

(3) 物理的な安全管理措置
ア 取扱情報がみだりに第三者の目に触れないよう、取扱情報が存在する部屋には第三者を単独では入室させない。
イ 第三者が許可なく執務スペース等の取扱情報にアクセス可能な場所に立ち入らないようにするため、出入り口の施錠又は何らかの入退室確認ができる措置を講ずる。
ウ 来訪した第三者を取扱情報にアクセス可能な場所に入室させる場合には、来訪者の氏名又は属性の確認を行う。

(4) 技術的な安全管理措置
ア アカウント管理及びアクセス制御
① 当事務所で用いるソフトウェア、サービス又はハードウェアの利用に際して、必要かつ可能な場合は、ID、パスワード等を用いた認証及びアクセス権限・範囲の設定等によるアクセス制御を行う。
② 取扱情報にアクセスするためのアカウントは、当事務所が特に定める場合を除き、技術的に可能な範囲で、それを使用する人ごとに発行し、そのID及びパスワード等を共用しない。
③ アカウント情報は、当該アカウント利用者以外の者の目に触れるところに書き記さない、使い回しをしない等の適切な管理を行う。
④ アカウントのパスワードについては、適切な長さと複雑さを持たせ、第三者から推測されないようにする。
⑤ 携帯電話へのコード送信、ワンタイムパスワード等の多要素認証又は生体認証を利用できる場合は、当該アカウントで取り扱う取扱情報の重要度に応じて利用する。
イ ソフトウェア及びサービス(以下「ソフトウェア等」という。)
① 事務職員等に対し、別途当職が定めた一定のソフトウェア等の使用を禁ずる。ただし、業務上使用の必要がある場合は、事前に報告させ、当職の承諾の上で使用させる。
 ※別途定めるネガティブリスト
 無償で提供される無線LANサービス(弁護士会が提供するものを除く。)
② OSを含むソフトウェア等のアップデートを適切に設定し、必要な更新を行う。
③ ウェブサイトを閲覧する際には、マルウェアに感染しないために、業務上必要な範囲を超えての不必要なサイトの閲覧又はファイルのダウンロードは行わない。
ウ ハードウェア
① ファイアウォールの設定、セキュリティ対策ソフトのインストール等の適切な防御措置を施して、それを最新の状態に保ち、定期的にチェックを行う。
② ネットワーク機器、複合機等のファームウェア等のアップデートを適切に設定し、必要な更新を行う。
③ ハードウェアでもパスワードの設定等アクセス制御の機能がある場合は、必要に応じて第三者から容易に推測されない適切な強度のパスワード等を設定する等の措置を講ずる。
④ 取扱情報にアクセスできるルータ、ノートパソコン、スマートフォン等のハードウェアを、アクセス制御がなされていない状態で取扱情報へのアクセスが許容されない第三者に使用させない。
⑤ ハードウェアに対し外部からインターネットを経由したアクセスを許す場合に、通信の暗号化及び秘匿化、IDとパスワードの設定等によるアクセス制御を行い、第三者に情報が漏えいしないようにする。
⑥ サーバに格納したデータのバックアップを取り、6か月に一度はバックアップデータを元の情報機器から隔離して保管する。
⑦ 事務職員等が業務用に貸与されたハードウェア以外の自己所有のスマートフォン等を業務で使用する場合は、あらかじめ当職の許可を得るものとし、使用に際しては本書に規定された安全管理措置と同等の対策を施すものとする。

3 情報のライフサイクル管理

(1) 情報の受領・取得
ア 受領・取得(総論)
取扱情報の受領又は取得に関し、その方法又は利用する情報機器の特性に応じ、次のイからオまでに掲げる対策を取り、情報セキュリティの維持に注意を払う。
イ 受領(FAX)
① 受信がいつでも確実に行われるように機器の整備を行う。
② 受信したFAX文書について適切な受信管理を行う。
ウ 受領(郵便、宅配便)
① 郵便及び宅配便(以下「郵便等」という。)を受領するときは、みだりに配達人を執務室内に立ち入らせないようにする等、情報漏えいを防止する措置を講ずる。
② 郵便受その他これに相当するものには、錠を付ける等、郵便等の破損又は持ち去りを可及的に防ぐための措置を講ずる。
エ 受領(電子メール)
① 電子メールを受信するコンピュータ又はソフトウェア(OSを含む。)に対し、あらかじめマルウェア等による攻撃を防ぐためのソフトウェア等の適用を行う。
② 電子メールを受信した場合において、送信者(氏名、メールアドレス等)の表示、文面、文面に記載されたリンク、添付ファイルの名称及びファイル形式、メールソフトウェアの警告表示等を注意深く確認する等して、不審であると判断したときは、電子メール又は添付ファイルを安易に開かず、リンクを安易にクリックせずに、発信者に電話、ショートメッセージ等電子メールとは異なる方法で発信の有無、内容等を確認する等サイバー攻撃を回避する措置を講ずる。
オ 取得(撮影、録音又は録画)
① スマートフォン、デジタルカメラ等の撮影、録音又は録画の機能を有する機器(以下「スマートフォン等」という。)により取扱情報を撮影、録音又は録画する方法により記録する場合、情報の漏えい及び拡散の防止を図るため、使用するスマートフォン等を紛失しないようにする、スマートフォン等のパスワード等を設定する等の措置を講ずる。
② スマートフォン等をネットワークに接続させるときは、ネットワーク上の第三者からもアクセスできる領域に、写真、動画等の取扱情報がアップロードされないよう適切に設定する等、記録した取扱情報の漏えいを防止する措置を講ずる。
③ スマートフォン等に格納された写真、動画等の取扱情報を、当該取扱情報の性質及び重要度に応じて、適時に、サーバ等の安全な格納場所に移して保管する。

(2) 情報の保管
ア 保管(紙媒体記録等)
① 紙媒体記録等(取扱情報が記載された紙その他の有体物。以下同じ。)を第三者からのアクセスを適切に制御できる場所に保管し、容易に第三者が紙媒体記録等の内容を認識できる場所に放置しない等、紙媒体記録等の漏えい、改ざん及び紛失を防止するための措置を講ずる。
② 紙媒体記録等の紛失又は漏えいを防止するため、紙媒体記録等に含まれる情報の秘匿の必要性に応じて、適切な保管場所及び保管方法を選択する。
イ 保管(データ)
データの性質等に応じて必要な場合は、当該データ又はフォルダにアクセスできる者をID、パスワード等により制限する等、データの漏えい、改ざん及び紛失を防止するための適切な措置を講ずる。
ウ 保管(モバイル機器)
 モバイル機器(持ち運びが容易なUSBメモリ、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の情報機器)に格納して取扱情報を取り扱うときは、イのデータの保管に関する措置を講ずるほか、取扱情報及び使用するモバイル機器の特性に応じて、特に以下で定める措置を講ずる。
① モバイル機器に保存する目的を超えてデータをモバイル機器に格納しない。また、その格納する必要がなくなったときは、速やかにモバイル機器から当該データを消去する。
② データをモバイル機器に格納して外部に持ち出すときは、個別のデータ又はモバイル機器全体にパスワードの設定、暗号化その他データの漏えいを防止する措置を講ずる。
③ モバイル機器の所在を常に把握する等モバイル機器について適切な管理を行い、遠隔操作によるデータの消去が可能な場合はその設定を行っておく等の相当な措置を講ずる。
エ 保管(外部サービス)
① 外部サービス(ファイル転送、クラウドストレージ、メッセージ交換等)を用いてデータを取り扱うときは、当該外部サービスの信頼性を十分に吟味し、外部サービスの利用により守秘義務違反を招かないように注意する。
② 外部サービスの利用を停止するときは、当該外部サービスで保管しているデータを確実に消去する。

(3) 情報の発信・交付等
ア 発信・交付(総論)
取扱情報を発信する際には、宛先違い及び内容違いがないか確認する。
イ 発信(FAX)
① 繰り返し送信することが予定される送信先については、当該送信先のFAX番号をあらかじめ登録する。
② 取扱情報をFAXで送信したときは、送信記録を作成して保管する。
ウ 発信(電子メール等)
①電子メール、携帯電話又はスマートフォンのショートメッセージ、SNSのメッセージツール等インターネット経由の送信方法(以下「電子メール等」という。)により、その性質上漏えいにより深刻な結果を招くおそれのある取扱情報を発信する場合は、宛先違い、内容違いがないか十分に確認し、できるだけ安全な方法を選択する。
② 複数の宛先に電子メールを送信するために同報送信機能を利用する場合は、電子メールアドレスが個人情報に該当する場合があることに留意しつつ、cc(カーボン・コピー)機能とbcc(ブラインド・カーボン・コピー)機能を適切に使い分ける。
エ 発信(SNS)
情報主体の承諾なく、公衆に向けて送信するSNSにおいて取扱情報及びこれを推知させる情報を書き込まない。
オ 交付
取扱情報が記載又は記録された文書又は物品を交付(直接対面で渡すこと)する場合は、受領者の権限を確認した上で交付するものとし、受領証を取り付ける等当該文書又は物品の交付の事実及び受領者を確認できる措置を講ずる。
カ マスキング
取扱情報の一部にマスキングを施して相手方当事者や第三者に提示する場合は、開示すべきでない情報を確実にマスキングするように注意する。特に、画像、PDF又は文書ファイル等のデータを加工してマスキングするときは、提出先においてマスキングを除去することができないように注意する。

(4) 情報の持ち出し・複製
ア 持ち出し
紙媒体記録等及び取扱情報を格納したモバイル機器を必要な範囲を超えて外部に持ち出さない。
イ 複製(紙媒体記録等のデータ化を含む。)
① 取扱情報を必要な範囲を超えて複製しない。
② 情報漏えい及び目的外利用の危険を考慮し、複製の可否及び範囲を慎重に判断する。
③ 複製物を適切に管理し、紛失の防止に必要な措置を講ずる。

(5) 情報の廃棄・返還
ア 廃棄(総論)
① 保有する必要のない取扱情報は、速やかに廃棄する。
② 取扱情報を廃棄する場合は、廃棄の可否を慎重に判断し、誤って必要なデータを廃棄しないように注意する。
③ 取扱情報の廃棄を専門業者等に委託する際には、委託先が守秘義務を負っていること及び廃棄方法の適切さ等を確認する等して、委託先から取扱情報が漏えいすることを防ぐ措置を講ずる。
④ 外部業者に委託して廃棄したとき(例えば、業者に委託して紙媒体記録等を溶解したとき、業者に委託してパソコン、モバイル機器等のデータを消去したとき等)は、廃棄した取扱情報の概要、廃棄の時期、廃棄に際して講じた措置等を記録し、適切な期間保管する。
イ 廃棄(紙媒体記録等)
① 取扱情報が記載された紙媒体記録等を廃棄するときは、漏えいを防止するためシュレッダによる裁断、溶解処理等の措置を講ずる。溶解処理を委託する場合には、受託業者に守秘義務を負わせる。
② 取扱情報が記載された紙媒体記録等の裏面に印刷をして、他事件の記録への編綴、FAX送信等をしない。
ウ 廃棄(データ)
取扱情報に該当するデータが格納されている電子媒体を廃棄するときは、消去ソフトウェアを利用する、破壊処理を行う等データを読み取ることを不可能とする等の措置を講ずる。
エ 返還
情報主体から預かった書類又は物品を返還するときは、必要に応じて、返還する書類又は物品の内容を確認して記録し、その返還記録を適切に保管する。

(6) 会議・期日出席
ア 総論
会議又は期日等(以下「会議等」という。)に際して、取扱情報が漏えいしないよう、盗み見、盗み聞きができない環境・設備で会議を実施し、以下で定める措置その他の相当な措置を講ずる。
① 会議等から離席するときは、取扱情報が記載され又は記録された物品を、施錠又は監視等の情報セキュリティを保持する措置が講じられていない会議室内に放置しない。
② 会議等に際して、ホワイトボード等に取扱情報を記載したときは、当該取扱情報の保存の要否を確認し、保存を要するときは撮影その他の適宜の方法により保存した上で、ホワイトボード等の記載を確実に消去する。
③ 会議等に際して、ディスプレイ等で取扱情報を表示するときは、表示するべきでない取扱情報が表示されないようにする。
イ 期日
① 期日への出席に際して、その性質上漏えいにより深刻な結果を招くおそれのある取扱情報が第三者の目に触れないように適切な措置を講ずる。
② 期日への出席に際して、持参した証拠の原本を紛失しないよう適切な措置を講ずる。
ウ ウェブ会議
① 取扱情報にアクセスさせることが適切でない第三者との関係で、盗み見、盗み聞き、背景の映り込み、周囲での会話等により取扱情報の漏えいが発生しない環境及び設備でウェブ会議に出席する。
② ウェブ会議の参加者の中に出席が予定されていない者が紛れ込んでいないかを、可能な範囲で確認する。
③ ウェブ会議が許された者以外によって録音又は録画されないような措置(ウェブ会議ソフトウェアの録音・録画機能の停止等)を可能な範囲で講ずる。
④ ウェブ会議において画面共有により取扱情報を共有するときは、表示するべきでない取扱情報が表示されないようにする。

4 点検及び改善

(1) 毎年1月及び7月に、基本的な取扱方法の実施状況を点検する。

(2) 前号の点検の結果、基本的な取扱方法が有効に実施されていないことが分かった場合は、その原因を特定し、改善計画を立案し、必要がある場合は基本的な取扱方法を改訂する。

5 漏えい等事故が発生した場合の対応

(1) 取扱情報の漏えい、滅失、毀損等の事故(以下「漏えい等事故」という。)が発生した場合には、当職がその対応を指揮し、事務職員等の役割分担を決定する。

(2) 漏えい等事故が発生した場合、発見者は、当職に対し、速やかに報告し、指示を仰ぐ。

(3) 原因を調査し、情報主体への連絡、マルウェアに感染した情報機器の停止若しくはネットワークからの遮断又はセキュリティ対策ソフトウェアによる検査若しくは駆除等の応急措置を実行する。

(4) 必要に応じ、外部の情報セキュリティの専門家等の助言又は補助を得る。

(5) 調査の結果判明した原因についての対策を実行する。

2023年5月12日金曜日

なるべく公共交通機関を使ってお越しください

千里丘駅西口の再開発のため、大型のコインパーキングが閉鎖されました。
小規模なコインパーキングはいくつかありますが、満車になることも増えると思われます。
そのため、お車でお越しいただいても、近くに駐車できない可能性が高くなっています。

なるべく公共交通機関をつかってお越しいただきますようお願いします。

これから閉鎖になるところも増えると思われるので、個別のコインパーキングの案内は控えさせていただきます。

摂津市、吹田市、茨木市、高槻市、島本町でお困りのことがあれば、 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。

2022年12月13日火曜日

最高裁令和4年12月12日判決

不動産賃貸借契約に関する重要な判決がなされました。


争点1
賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性
→
回答1
消費者契約法10条の適用があり、消費者(借主)の利益を一方的に害するものであり、無効である。


争点2
賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性
→
回答2
消費者契約法10条の適用があり、消費者(借主)の利益を一方的に害するものであり、無効である。

※ 消費者契約法10条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。


昨今、家を借りる際に、連帯保証人として保証会社を入れる(入れなければならない)ことが多くなっています。
保証会社としては、自分たちの負担を最小限にするために、借主が家賃をしばらく滞納した時に連帯保証人が契約解除をすることができる、とか、借主が家賃をしばらく滞納したうえ連絡が取れない状況になり借家には住んでいないことが認められる場合には、連帯保証人は建物明渡があったものとみなすことができる、といった保証契約を借主との間で結んでいることがよくあります。
これらの規定の有効性が問題となった本件では、これらの規定が消費者契約法10条に違反するかどうかという形で争われました。
そして、最高裁はこれらの規定は無効であると判断しました。

一見、借主にとって有利な判断のようではありますが、家賃滞納して居なくなった借主まで保護されてしまうのであれば、保証会社が契約してくれない、という人が今より多く出てしまうのではないか、却って弱者が家を借りる機会が狭められてしまうのではないか、という不都合も指摘されています。
保証会社としては、滞納による家賃保証の範囲を狭く限定するなどにより、対策をとっていく必要があるでしょう。

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2022年7月8日金曜日

事務所移転のお知らせ

大阪北摂法律事務所は、千里丘西駅前再開発にともなう立ち退きに応じ、移転いたします。
移転時期は、8月1日を予定しております。

電話、FAX番号、メールアドレス等に変更はありません。

新住所
大阪府摂津市千里丘1-13-5、2階





今後とも、地元の方々中心に、親身になって相談をお受けいたします。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。


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2021年6月10日木曜日

建築アスベスト被害救済について

建設現場でアスベストを吸い、中皮腫などの健康被害を受けた労働者や遺族が国や建設資材を製造していた企業の責任を問うた一連の裁判の最高裁判決(2021年5月17日)を受けて、救済法が成立したとのことです。

建設アスベスト 最大1300万円の給付金 救済法可決・成立 参院

これまで、アスベスト被害については、石綿健康被害救済制度により一定の救済がされていましたが、その対象外とされていた被害者たちが集団訴訟で救済を訴えていたものです。

対象者
1975年10月から2004年9月までに屋内での建設作業を行っていたり、1972年10月から1975年9月までにアスベストの吹きつけ作業に従事したりしていて、アスベストが原因の中皮腫や肺がんなどになった人とその遺族

症状に応じて550万円から1300万円の給付金が支給されるとのことです。

摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,建築労災事故等に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。

2021年6月9日水曜日

検察審査会

当初は不起訴とした被疑者を一転して略式起訴にした、というニュースがありました。

東京地検特捜部が菅原前経産相を一転略式起訴したワケ

不起訴は検察官による終局処分の一つで、新たな証拠でも見つからない限り、略式起訴にしろ、通常の起訴にしろ、原則として同じ事件で起訴されることはないと考えて良いかと思います。
もちろん、身柄拘束(逮捕・勾留)が続いていた場合も、不起訴により釈放されることになります。

起訴・不起訴は検察官が独占する権限ですが、不起訴に対する不服申立の手段があります。
それが検察審査会の制度であり、検察官の権限に民意を反映させることを目的としています。

検察審査会は、無作為に選ばれた国民から構成されており、各地方裁判所の中(建物内)に設置されています。
検察官による不起訴処分に不服のある告訴者、告発者、犯罪被害者等は、検察審査会に不服を申し立てることができます。

検察審査会の審査により、「起訴相当」または「不起訴不当」と判断された場合には、検察官が再度、起訴するかどうかを判断することになります。
もっとも、検察官は、検察審査会の判断に拘束されることはありませんので、再び不起訴と判断することも、よくあります。

「起訴相当」とした事件が再び不起訴とされた場合、検察審査会は、弁護士を審査補助員に委嘱して、再び審査を行います。
この再審査の結果、再び「起訴相当」と判断した場合は、「起訴をすべき議決」(起訴議決)を行います。

起訴議決された事件は、裁判所が弁護士を検察官の職務を行う「指定弁護士」として、刑事裁判が開始されることになります。(強制起訴)

今回のニュースの記事では、「起訴相当」決議を受けて、検察官による再度の判断として、略式起訴が選択された、という事情があります。

「嫌疑不十分」といった理由で不起訴となった事件については、強制起訴しても有罪判決を得ることはなかなか容易ではありません。
もともと検察官が、裁判では有罪とするのは難しいだろうと考えていた事件であるからです。
しかし、今回のケースは、「起訴猶予」という理由で不起訴とされているものであるため、いったん起訴されてしまえば有罪が予想されるところでした。
そのため、強制起訴されてしまうと、検察官の判断は誤っていたと評価されることになってしまいます。
そのため、検察官は、略式起訴を決めたのであろうと思われます。
検察官は、起訴に際して、略式起訴と通常起訴の選択ができますが(略式起訴には被疑者の同意が必要です。)、強制起訴の場合は、通常の裁判手続となります。

なお、検察審査会に申立がされた場合に、審査会の判断を待たずに、検察官が再考して起訴に踏み切る事件が一定数あるとのことです。
その場合は、検察審査会の審査は打ち切りとなります。
いったん不起訴とされた被疑者の立場が不安定になるため、問題であろうと思われます。

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2021年6月8日火曜日

保釈制度

保釈のニュースを元に

秋元司衆議院議員 保釈され東京拘置所出る

刑事手続における身柄拘束には、逮捕、勾留といったものがあります。
さらに勾留は、起訴前の勾留、起訴後の勾留といったものがあります。

逮捕と起訴前の勾留には期間制限がありますが、起訴後の勾留は容易に更新されるため、ずっと身柄拘束されているということも珍しくありません。

なお、起訴前の段階で犯人であると疑われている人を「被疑者」と呼びますが、起訴後の段階では「被告人」という呼び方に変わります。
マスコミなどは、それぞれ「容疑者」「被告」という呼び方を使うことも多いですね。

さて、本題の保釈ですが、これは起訴後の勾留に対して、被告人側で請求できる制度となります。
保釈には、権利保釈と裁量保釈という2種類がありますが、権利保釈は要件さえ整っていれば保釈を認めなければならないという場合の保釈、裁量保釈は要件は満たさないものの裁判所の判断で保釈しても良いと判断される場合の保釈を言います。

権利保釈でも裁量保釈でも、保釈保証金が設定され、これを収めることで身柄拘束が解かれるというのが通常です。
保釈保証金は、被告人が逃走等をせずに公判(刑事裁判)へ確実に出席すること等を担保するために必要なもので、約束事項を守らなければ没収(法律用語では「没取」)されてしまいます。


以下の6つの要件に当てはまらなければ、権利保釈が認められることになります。
①被告人が重大犯罪(死刑・無期・短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪)を犯した
②被告人が前に死刑・無期・長期10年を超える懲役・禁錮にあたる罪で有罪の宣告を受けた
③被告人が常習として長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した
④被告人が証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
⑤被告人が被害者や証人となり得る者またはその親族の身体や財産に害を加え、またはこれらの者を怖がらせる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある
⑥被告人の氏名または住居がわからない

軽い犯罪行為であれば、証拠隠滅等のおそれがなければ権利保釈が認められそうです。
もっとも、否認をしていると、④罪証隠滅のおそれや、⑤被害者証人等への危害のおそれ、などといった理由が認められやすく、権利保釈は認められない、という結論になるのが通常です。

裁量保釈は、前述のとおり権利保釈が認められない場合に認められる可能性のある保釈です。

否認していれば裁量保釈も認められないことが多いことは事実ですが、必ずしもそうとも限りません。
近年は、「人質司法」と批判される日本の刑事捜査・裁判制度への批判への反省からか、保釈が認められる可能性は高まってきていると思われます。

冒頭で引用したニュースでも、被告人は無罪を主張していますが、保釈保証金8000万円という条件で保釈が認められたようです。

保釈保証金8000万円というのは、相当に高額な金額ですね。
これは、保釈保証金の目的から考えて、逃走や罪証隠滅の可能性などと、本人の財産状況を踏まえて没取されては困る金額などを考慮して決定される金額となります。
一般的な事件であれば、このような高額になることはほとんどありません。

被疑者の段階では、準抗告等で身柄解放を目指し、それがかなわなかった場合にも、起訴後には速やかに保釈制度による身柄解放を目指す、これが初期の弁護人の重要な活動の一つとなっています。

籠池夫妻、「事実誤認」と二審でも否認 森友補助金不正
こちらの事件は、起訴後も保釈がなかなか認められない(身柄拘束が1年8か月に及んだ)事件でした。
判決が確定するまでは無罪推定が働くわけですから、このように起訴後勾留を続けることは重要な人権侵害であると主張する必要があります。
有罪か無罪かを決めるのは弁護人の役割ではありませんが、判決確定前の身柄拘束が、事実上の刑罰の執行であってはならないということは言うまでもありません。


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2020年10月15日木曜日

有期契約社員に対する退職金の不支給について不合理ではないと判断した最高裁判決

2020年10月13日に、労働契約に関して、重要な2つの最高裁判決が出されました。

1つは、「無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例」であり、

もう1つは、「 無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例」です。


今回は、1つめを見ていきましょう。

○ 事例

使用者(メトロコマース:東京メトロの子会社)と有期労働契約を締結して東京メトロの駅構内の売店における販売業務に従事していた契約社員らが、同じ業務に従事している正社員(無期契約労働者)との間で、退職金を支給しない等の相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったなどと主張して、使用者に対し、不法行為等に基づき、退職金に相当する額等の損害賠償等を求めた事案。

○ 条文
平成30年法律第71号による改正前の労働契約法20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、当該業務の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

法改正(いわゆる働き方改革)の一環として、この条文は廃止され、現在は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条・9条に定めが写っています。

パートタイム労働法第8条(不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

同第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

これらは、「同一労働同一賃金の導入」と言われている部分であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の労働条件について不合理な待遇の解消を目指すものであり、廃止された労働契約法20条自体、2013年4月1日に施行された比較的新しい条文です。

本件では、有期雇用契約社員は労働契約上退職金の支給を受けられないことになっていることが、無期契約社員が退職金を受け取れる労働契約になっていることに対して、不合理な相違であるかどうかが問題となりました。

○ 最高裁の結論

正社員に対して退職金を支給する一方で、契約社員にこれを支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない

○ 理由・解説

まず、この判断は、様々な要素を考慮して、本件に対する結論として出された事例判断ですので、契約社員に退職金は不要である、というのがあらゆる会社に当てはまるものでないことには注意すべきです。
しかし、重要な判断であることには違いありません。

最高裁の判断の枠組みは次のとおりです

① 労働契約法20条の判断基準

 同条は、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、両者の間の労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得る
 もっとも、その判断に当たっては、他の労働条件の相違と同様に、当該使用者における退職金の性質やこれを支給することとされた目的を踏まえて同条所定の諸事情を考慮することにより,当該労働条件の相違が不合理と評価することができるものであるか否かを検討すべきものである

② 本件事例での検討

 退職金の支給対象となる正社員は、本社の各部署等に配置され、業務の必要により配置転換等を命ぜられることもあり、また、退職金の算定基礎となる本給は、年齢によって定められる部分と職能給の性質を有する部分から成るものとされていた。
 このような同社における退職金の支給要件や支給内容等に照らせば、上記退職金は、上記の職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり、同社は、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し退職金を支給することとしたものといえる。

 売店業務に従事する契約社員と正社員で見ても、業務の内容はおおむね共通するものの、正社員は、休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか、複数の売店を統括し、売上向上のための指導、改善業務等の売店業務のサポートやトラブル処理、商品補充に関する業務等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し、契約社員は、売店業務に専従していたものであり、両者の職務の内容に一定の相違があった。
 また、正社員については、配置転換等を命ぜられる可能性があり、正当な理由なくこれを拒否することはできなかったのに対し、契約社員は、業務の場所の変更を命ぜられることはあっても業務の内容に変更はなく、配置転換等を命ぜられることはなかったものであり、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲にも一定の相違があった。

 売店勤務の正社員は、その採用の経緯から、賃金水準を変更したり、他の部署に配置転換等をしたりすることが困難な事情があったことがうかがわれ、その意味で他の多くの正社員と職務の内容及び変更の範囲について違う部分はあった。
 一方で、会社は、契約社員から正社員へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け、相当数の契約社員を正社員に登用していた。

 これらの事情は、労働契約法20条における「その他の事情」として考慮すべきである。

 そうすると、正社員に対する退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて、売店業務に従事する正社員と契約社員Bの職務の内容等を考慮すれば,契約社員の有期労働契約が原則として更新するものとされ、定年が65歳と定められるなど、必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえず、契約社員らがいずれも10年前後の勤続期間を有していることをしんしゃくしても、両者の間に退職金の支給の有無に係る労働条件の相違があることは、不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。
 

○ 評価

 今回の判断は、あくまでも事例判断であるため、前述のとおり、正社員には退職金があるのに契約社員にはない、という違いは全て合法、というわけではありません。
 なお、改正後のパートタイム労働法が適用される場合でも、同じ結論になったと思われます。
 
 本来の非正規社員というものを考えれば、当然とも言える判断であるとも言えるでしょう。
 しかし、人件費削減のために非正規雇用を増やし、非正規雇用労働者に正規雇用労働者と同等の仕事を任せ、責任を課すような働かせ方を行っている企業は多くあります。
 このような場合に、例えば配置転換等の可能性があったかとか、といった形式的な事情を並べて、待遇の相違は不合理ではないと考えることは、果たして妥当でしょうか。
 同一労働同一賃金という理想が骨抜きにされるのではないかという懸念から、多くの批判が寄せられています。


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2020年4月28日火曜日

大型連休後の相談対応について

2020年5月7日以降の大阪北摂法律事務所の相談・打合せ体制についてお知らせいたします。
緊急事態宣言が延長されても、以下の対応に変わり有りません。

オンラインでの相談体制は継続いたします。
http://o-h-law.blogspot.com/2020/04/blog-post.html


ウイルス感染対策をしたうえでの事務所での面談体制を整えましたので、ご案内いたします。

事務所での対面法律相談は、通常通り30分5500円(税込、債務整理相談は初回無料)での相談となります。

オンラインでは話が伝わるか心配、といった方は、対面での相談をお勧めします。
また、債務整理相談は特別の場合を除いて、対面での相談とさせていただきます。

事務所での相談体制

相談室机上、御相談者と弁護士の間にアクリル遮蔽板を設置します。
アルコール除菌ジェルを備え置きますので、相談室入室の際にはご使用下さい。
お茶はお出ししません。
御相談者以外の同席は、原則としてお断りいたします。
弁護士はマスクをして相談に臨みます。
健康に不安のある方、風邪の症状のある方などは、オンラインでの相談をご利用下さい。

法律相談の性質上、一定程度の時間はかかりますので、万全のウイルス感染対策に、ご理解・ご協力をお願いします。


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2020年4月5日日曜日

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う相談等の対応について

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、大阪北摂法律事務所では、以下の対応を取らせて頂きます。

事務所での法律相談について
4月6日より当分の間(さしあたって5月6日までと考えております)来訪相談の受付および事務所での打合せを中止いたします。

※ 緊急事態宣言が大阪府を対象として出された場合も、対応は基本的には変わりません。


メールフォーム :
http://jp.o-h-law.com/contact/index.html

Skype:問い合わせの際はビデオ通話、音声通話ではなくメッセージでお願いします。
「81661555085」で検索して下さい。

LINE:メッセージが送れます(通話はできません)
「06-6155-5085」の電話番号検索をして下さい。

facebook:メッセージが送れます(通話はできません)
https://www.facebook.com/osakahokusetsulawoffice 

電話:
06-6155-5085
 

なるべくメールもしくはメッセージでのお問合せをお願いします。


◆ 新規相談への対応について ◆
相談のご依頼があった場合、日程を調整させていただきます(電話またはメール)。
電話、Skype等による相談対応の案内をさせて頂きます。
試験的に30分をめどに無料とします。
時間超過の場合は、法律相談料30分5500円(税込、口座振込、もしくはペイパル利用によるクレジットカード決済)をいただきます。
有料となるタイミングについては、きちんとお伝えいたします。
事件受任に際しては、あらゆる事件で委任契約書を取り交わさせていただきますが、この際、ご本人確認書類の写しを頂きます。

◆ 債務整理相談への対応について ◆
上記と同様に対応いたします。
日本弁護士連合会の取り決めで、受任に当たっては原則面談が必要とされていますが、緊急性が認められる場合は、受任を先行し、面会可能になった段階で事務所に(最低)一度お越しいただくことで対応可能です。

◆ 既存相談に対する再相談について ◆
事前にメールまたは電話でご連絡ください。
日程を調整させていただきます。
債務整理相談を除いて、事前に法律相談料30分5500円(税込、口座振込)をいただきます。
その他は、上記の通りです。

◆ 打合せへの対応について ◆
全て電話、メール、LINE、Skype等にて行わせて頂きます。



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2020年1月29日水曜日

相談時にお持ち頂きたいもの

大阪北摂法律事務所にて法律相談を受けられる場合にお持ち頂きたい物をお知らせします。

① 相談に関する資料
あまりに大量の資料を相談時にすべて確認することは困難ですが、お話をうかがったうえで、「このような資料はありませんか」とお聞きすることもあります。
できるだけご持参いただきたいと思います。
分量的に困難でしたら、これは重要だろうと思われるものだけでも結構です。

② 本人確認資料
運転免許証等ご本人確認のできるものをお持ち下さい。
なりすましによる代理相談等を避けるために確認させていただきます。
また、受任の際には本人確認資料のコピーを取らせていただきます。
個人情報保護の観点から頂いた資料内容について、目的外に使用することはありません。
参考:プライバシーポリシー

③ 印鑑
相談後、そのまま委任契約を締結する場合には印鑑が必要となってきます。
もちろん、相談時にお見積もりした上で、後日の契約とさせていただく事も可能です。
しかし、急ぎの相談の場合には、そのまま委任契約を締結し、委任状を頂くべき場合もありますので、お持ちになった方が良いでしょう。



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2020年1月1日水曜日

新年のご挨拶

2020年が幕を開けました。
大阪北摂法律事務所は7年目の春を迎えます。

今年は東京オリンピックということで世の中が盛り上がっていますが、法の世界においては改正民法の施行という大きな節目の年となります。
新しい時代に合わせ適切な法的サービスを提供できるよう、邁進して参ります。

今年もよろしくお願いいたします。

1月6日より通常営業を再開いたします。
休業期間中もメール対応はいたしますが、通常より遅くなる可能性がありますのでご了承下さい。

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2019年8月31日土曜日

2020年4月施行債権法改正について

2020年4月1日より民法の債権法と呼ばれる分野に、かなり大きな改正が加えられます。
このブログで、少しずつ解説を加えていくことにします。

債権は、物権(人の物に対する権利)と対になる概念で、契約関係や不法行為等の契約外の関係から生まれる、人の人に対する権利です。
(人には、場合によっては自然人以外の団体も含まれます。)
社会生活の基本とも言うべき債権に関する決まりですが、民法制定以来120年以上大きな改正が行われていませんでした。
その間、判例の積み重ねなどにより、大幅に解釈が変遷している規定もあります。

今回の債権法改正は、これまでの判例法理を明文化して分かりやすくすることに加え、さらに今の時代に適合するようにと発展される意図もあり、大改正と言えます。
そして、社会生活の基本に関することだけに、改正の内容を私たち弁護士だけが知っていれば良いというものでもありません。

以下、目次とします。

1 消滅時効について

2 法定利息について

3 保証について

4 約款について

5 意思能力、意思表示について

6 債権の譲渡について

7 賃貸借契約について

8 債務不履行による損害賠償請求の帰責事由の明確化

9 契約解除の要件に関する見直し

10 売主の瑕疵担保責任に関する見直し

11 原始的不能である場合の損害賠償請求規定の新設

12 債務者の責任財産保全のための制度(債権者代位権・詐害行為取消権)

13 連帯債務に関する見直し

14 債務引受に関する見直し

15 相殺禁止に関する見直し

16 第三者弁済に関する見直し

17 契約に関する基本原則の明記

18 隔地者・対話者に対する契約成立等の基準の明記

19 危険負担に関する見直し

20 消費貸借に関する見直し

21 請負に関する見直し

22 寄託の成立要件の見直し




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2019年8月25日日曜日

2018年7月相続法改正について

2018年7月に、相続に関する民法(及び家事手続法)の規定が改正されました。
約40年ぶりの大改正となります。

改正法の内容と、その施行について、順番に見ていきたいと思います。

改正の内容

1 配偶者の居住権を保護するための方策
(1) 配偶者短期居住権の新設
(2) 配偶者居住権の新設 条文 解説

2 遺産分割等に関する見直し
(1) 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定)
(2) 仮払い制度等の創設・要件明確化
(3) 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲

3 遺言制度に関する見直し
(1) 自筆証書遺言の方式緩和
(2) 遺言執行者の権限の明確化
(3) 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設

4 遺留分制度に関する見直し

5 相続の効力等に関する見直し

6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

施行の時期

自筆証書遺言の方式緩和については、2019年1月13日施行

配偶者短期居住権、配偶者居住権については、2020年4月1日施行

公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度については、2020年7月10日施行

その他は、2019年7月1日に施行されます。


まもなく改正の影響が出てきますので、この影響があるのか、ないのかも含めて、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

※それぞれの制度の内容について、順次記事を挙げてリンクしていく予定です。

(2019年8月25日追記)
新しい情報があれば、随時記事を追加していきたいと思いますが、一通りの解説記事を作成しました。


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公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設

2018年7月相続法改正に関する記事です。

2018年7月相続法改正について

今回は、「公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設」について見ていきましょう。

相続法改正の中では一番遅く、2020年7月10日に施行される改正です。




今回の改正のために、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定されました。
文字通り、法務局に遺言を保管する制度が新設することになりました。
この法律の施行が2020年7月10日ということになります。



1 制度の必要性

なぜ、このような制度が必要なのでしょうか。

自筆証書遺言は、法定の要件を満たす必要がありますが、公正証書遺言とは違い手軽に作成することのできる遺言であると言えます。
しかし、公正証書遺言については相続人が公証役場で検索すれば遺言の存否や、最新の遺言を確認することが出来るのに対し、自筆証書はそうはいきません。
信頼できる相続人等に自筆証書遺言の保管場所を伝え、あるいは保管を依頼する等しなければ、遺言の存在そのものが気付かれずに過ごされる可能性も出てきます。
遺言は遺言者の最終の意思を表現するものとして大変重要な意味を持つにもかかわらず、遺言が発見に至らなかったり、発見者によって不当に破棄されたりした場合には、その意思に反した遺産分割が行われてしまう可能性もあるのです。

せっかく自筆証書での遺言を作成したとしても、その意思が達成されなければ無意味になってしまうため、自筆証書遺言についても、公的な保管制度を作って、相続人が照会することで遺言の存否や内容が分かるようにするという制度が求められました。

そこで今回の相続法改正に併せて、このような保管制度が設けられることになりました。



2 対象となる遺言と保管制度の概要

対象となるのは、封をしていない自筆証書遺言だけあり、さらに、法務省令で定める様式を満たしていなければなりません。

保管の申請については、この法律および法務省令で定められた方法により、遺言者本人により、法務局の遺言書保管官に対して行われます(4条)。

保管される遺言書については、申請情報とあわせて遺言書保管ファイルとして、電子データでも保管されます(7条)。

申請を撤回することも可能で、この場合も遺言者自身が行います(8条)。
遺言書は本人に返還され、電子データも消去されます。
ただし、保管申請が撤回されたからといって遺言書が無効になるわけではなく、通常の自筆証書遺言となるだけですので、遺言としても撤回したい場合は、破棄するか、新たに有効な遺言書を作成する必要があります。

遺言者の存命中に遺言書を閲覧できるのは、その遺言者だけです(6条2項)。

誰かが亡くなった場合に、自分が法定相続人である人や、受遺者になっている可能性がある人など(関係相続人等)は、遺言書保管官に対し、保管された遺言が存在するかどうかという点について、遺言書保管事実証明書の交付を請求することが出来ます(10条)。

また、実際に保管されていることが判明した場合、関係相続人等は、保管された遺言書の原本を閲覧し(9条3項)、保管された情報を証明する書面(遺言書情報証明書)の交付を請求することが出来ます(9条1項)。
一部の関係相続人が遺言書の原本を閲覧し、または証明書面の交付を受けた場合、遺言書保管官は、その他の法定相続人、受遺者、遺言執行者に対し、通知を行います(9条5項)。
これらの情報は申請時の申請情報に含まれており、速やかに通知を行うことができます。
これにより、遺言に関係する人が等しく、遺言の存在を知り、遺言の内容を確認する機会を保証されることになります。


相続人本人であっても、遺言書原本が交付されることはありません。
遺言書の原本および情報データは、遺言者の死亡から一定期間(相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間)経過により廃棄、消去されることになります(6条5項、7条3項)。
そのため、自分に関係のある人が死亡して相続が開始された場合には、なるべく早く法務局に遺言書が保管されているかどうかを確認した方が良いでしょう。

保管制度を利用して保管された遺言は、通常の自筆証書遺言と異なり、家庭裁判所における検認が不要になります(11条)。

なお、これらの保管制度は、申請、撤回、閲覧、証明等に所定の手数料がかかります(12条)。



以上が、法務局における自筆証書遺言の保管制度の概要です。

まだこの法律に関する法務省令が明らかになっていないため、法律施行後に、利用を検討する場合には、再度確認する必要がありますのでご注意下さい。


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2019年8月17日土曜日

配偶者短期居住権の新設




2018年7月相続法改正に関する記事です。

2018年7月相続法改正について

今回は、「配偶者短期居住権の新設」について見ていきましょう。

2020年4月1日から施行となる改正です。


1 条文

(配偶者短期居住権)
第1037条
1 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合:遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合:第3項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

2 内容

 条文は一見複雑な構造をしているようですが、「配偶者短期居住権」は、配偶者に先立たれた相続人を保護する制度の一つです。
 その名のとおり、被相続人の配偶者が、ある時点まで、被相続人の所有していた建物に居住し続けることができる権利ということになります。


(1)配偶者短期居住権の認められる条件

① 被相続人の配偶者であること(ただし書きの場合を除く)
② 相続開始の時点で被相続人の財産に属した建物に無償で居住していたこと

 権利を認められるのは、あくまでも法律婚による配偶者ですので、内縁関係の夫婦の場合には、認められません。
 また、相続開始の時点で、実際にその建物に居住している必要があります。
 一方、相続開始まで被相続人と同居していたことは、要件にはなっていません。

 なお、建物の一部に居住していた場合にも、その一部について認められます。


(2)配偶者短期居住権の内容

 以上の条件を満たした被相続人の配偶者には、次のような範囲で、引き続きその建物を無償で使用し続けることができる権利が認められます。

 また、配偶者短期居住権が認められる期間は、当該建物を相続する人(居住建物取得者)が決まった場合でも、居住建物取得者は、その配偶者の無償での使用を妨
げることはできません。
 さらには、配偶者短期居住権を知らない第三者に譲渡されてしまった場合でも、配偶者短期居住権は保護されることになります。


① 遺産分割を行うべき場合

 次のアまたはイのいずれかのうち、遅い日まで

ア 遺産分割が整い配偶者以外の相続人が当該建物を相続することが決まったとき
イ 相続の開始から6か月を経過したとき

 すなわち、相続開始から最低6か月は、配偶者短期居住権が認められますし、遺産分割が整わない間はいつまでも配偶者短期居住権が認められ、無償での使用を続けることができる、ということになります。


改正前の民法でも、最高裁判例(最判平成8年12月17日)により、相続人である配偶者が被相続人の許諾を得て被相続人所有の建物に同居していた場合には、被相続人と相続人である配偶者との間で、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される、と解されてきました。
これにより、この要件に該当する限り、相続人である配偶者は、遺産分割が終了するまでの間の短期的な居住権が確保されることとなりましたが、あくまでも意思の推定であるため、被相続人がそれとは違う意思を示しているときには、認められる余地はありませんでした。
今回の改正は、これまでの解釈を拡張したものと言えます。



② 遺産分割以外の場合

 例えば、当該建物について、被相続人の配偶者以外の者に相続させる、あるいは遺贈するという遺言があった場合などです。

 当該建物を所有することになった居住建物取得者が申入れ(配偶者短期居住権の消滅の申入れ)をしてから6か月間は、配偶者居住権が継続します。

これは、前述のこれまでの解釈では認められなかった、被相続人の意思に反する場合にも、配偶者の保護を拡大したものと言えます。

3 配偶者「短期」居住権

 配偶者短期居住権は、あくまでも一時的な権利です。
 配偶者であるからと言って、無条件に被相続人名義の建物に住み続けることが認められる権利ではありません。

 配偶者がその建物に住み続けるためには、
■ 被相続人が、配偶者の所有権または配偶者居住権を認める遺言を残すこと
または
■ 遺産分割により、配偶者が所有権または配偶者居住権を取得すること
が必要となってきます。





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2019年8月11日日曜日

相続の効力等に関する見直し


2018年7月相続法改正に関する記事です。


2018年7月相続法改正について

今回は、「相続の効力等に関する見直し」について見ていきましょう。

2019年7月1日から施行となった改正です。





1 条文

民法899条の21 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

民法1014条
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金の契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。



2 内容

(1)これまでの考え方

これまでの民法では、遺言や遺産分割による権利の承継は絶対的な効力を持つため、第三者にその効力を主張するのに、あらかじめ特別な対策をしておく必要はないとされていました。

例えば、不動産の相続について次のような例を考えます。
Aが亡くなり、法定相続人は配偶者Pが50%、子Qが25%、子Yが25%です。
P、QおよびYの3人で遺産分割の協議を行った結果、この不動産はPが単独で相続することになりました。
しかし、その相続の登記は行っていませんでした。

さて、子Yに対して貸金債権を持つ債権者Xが居ます。
Xは、Aが亡くなったことを知り、Aの不動産のうち25%の持分をYが相続したものと考え、その持分を差押えようとしました。

ところが、Pはこの不動産は自分が単独で相続したものであるから、Xの差押えは認められない、と主張します。

民法の建前上は、Pの主張の方が正しいということになります。
なお、Aが「不動産をPに相続させる」という遺言を残した場合でも同様です。


不動産の場合、第三者に対して自分の権利を公示する機能(対抗要件)は、不動産登記を備えることとされています。
しかし、相続の場合、本来は、対抗要件の問題にはなりません。
相続は、被相続人の権利義務を包括的に承継する手続であるから、被相続人の登記があること=相続した人が対抗要件を備えていること、と考えられたからです。


これでは、上記の例における債権者Xのように、登記の内容を前提にして取引に入った第三者の安全を害する事になりかねません。
手続的に、迅速かつ秘密裏に行わなければならないような保全の手続などと、被相続人のままとなっている遺産の相続関係を調査することは両立しないでしょう。


このような観点から、これまで判例により以下のような修正が加えられて来ましたが、不十分なものでした。

判例により、法定相続分と異なる遺産分割をした場合、また遺贈を受けた場合は、第三者との関係では、対抗要件を備えなければ対抗できないとされました。
一方で、遺言による相続分の指定については、包括承継であるから対抗要件を備えていなくても、第三者に対抗できるとされました。
前者は、売買や贈与などと同じ特定承継としての性質が強く、後者は、まぎれもない包括承継であるという考えが、違いに反映されたのでしょう。


このように扱いに違いが生じてしまうため、登記等による公示を信じて取引に入った第三者の利益を、ますます害する状態になっていたとも言えます。



(2)改正法

以上のような観点から、今回の改正では、対抗要件の効果を相続という包括承継の場面まで拡張することになりました。

これまでの判例による修正に加え、「遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、」とすることで、遺言による相続の場合でも、遺言に従って登記等の対抗要件を具備していなければ、第三者に対抗することはできないとされたのです(899条の2第1項)。


また、債権については、法定相続分を超えて承継した相続人が、債務者に対して通知したときに、相続人の全員から通知があったものとして、第三者にも対抗要件を備えるものとされました。

債権譲渡における対抗要件は、譲渡債権者から債務者への通知とされています。
(債務者に通知することで、債務者だけでなく第三者に対しても対抗することができるのです。)
債権譲渡の場合と同じであるとすれば、本来は、被相続人の立場を承継する相続人全員からの通知が必要なはずですが、改正法では、法定相続分を超えて承継した相続人単独による通知で足りるとされています。
法定相続分を承継しなかった相続人が、これらの通知に協力しない場合が考えられることから、修正が加えられています(899条の2第2項)。



なお、遺言執行者は、これらの対抗要件具備の手続を行うことができます(1014条2項)。

不動産の相続の場面において、「相続させる」遺言の場合、遺言執行者は相続登記の申請ができないとされていました。
(遺贈の場合には、登記申請ができました。)
今回の改正では、遺言執行者の権限が強化され、これらの登記申請ができるようになりました。



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2019年8月3日土曜日

遺言執行者の権限の明確化

2018年7月相続法改正に関する記事です。

2018年7月相続法改正について

今回は、「遺言執行者の権限の明確化」について見ていきましょう。

2019年7月1日から施行となった改正です。

1 条文


(遺言執行者の任務の開始)
第1007条
1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
※従来の1007条のとおり
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第1012条
1 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。※従来の1012条2項のとおり
(遺言執行者の行為の効果)
第1015条
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

2 内容

(1)第1007条第2項について

 遺言があり、遺言執行者がいれば、遺言に従った遺贈等が可能になります。
 しかしこれでは、遺産の処分について重大な利害関係をもつ相続人が、遺言の内容を知らされないまま遺産が処分されてしまうということも起こりえます。
 そこで、遺言執行者は、まず遺言の内容を相続人に知らせなければならないという規定が加えられました。
 実務的には、多くのケースで従来も行われていたものと思われますが、今回明文化されたことにより、遺言執行者の義務となりました。

(2)第1012条について、第1015条について

 遺言執行者の立場について、従来の1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」とされていました。
 遺言執行者は、遺言者(被相続人)の代理人なのか、相続人の代理人なのか、代理人ではなく遺言執行者という本人として職務を行う立場なのか、いろいろな考えがあり得ますが、条文上は相続人の代理人とされていたのです。
 しかし、被相続人の遺言に従っておこなうべき遺言執行者の職務内容が、相続人の意思に合致するとも限りません。
 遺言執行者の立場は、多面的な側面を持つため、従来の1015条は廃止されることになりました。

 まず、1012条1項にて、「遺言の内容を実現するため」という文言が加えられました。
 また、同2項において、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことが出来ることが明確化されました。

 そして、このように、遺言の内容を実現するために遺言執行者として行った行為の効果は、相続人に帰属することが改正された1015条で明らかにされました。


3 改正の影響

 1007条2項により義務が明確化されたほかは、従来の遺言執行者の職務内容についての解釈を整理して明確化したものと言えます。
 上述のとおり1007条2項の義務についても、従来多くの遺言執行者は行ってきたことです。
 したがって、改正の影響が大きく現れるということはないでしょう。


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