2019年7月6日土曜日

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

2018年7月相続法改正に関する記事です。

2018年7月相続法改正について

今回は、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策「特別の寄与」について見ていきましょう。

2019年7月1日から施行となった改正です。


1 条文

特別の寄与に関する条文は民法1050条です。


第1050条
1.被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる
2.前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない
3.前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める
4.特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない
5.相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する


2 特別寄与者の範囲

特別寄与者の条件は、次のとおりです。

① 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

② 被相続人の親族であり、相続人でなく、相続放棄をした者でもないこと


①の条件は、従来相続人に認められていた「寄与分」の規定(民法904条の2)に対応しています。
ただし、民法904条の2と違い、寄与の対価が無償であることが求められます
すなわち、相続人にしか認められなかった被相続人に対する寄与について、無償の寄与のに限り、相続人以外にもついても考慮できるようにした規定と言えます。

②の条件により、特別寄与者の範囲は、相続人および相続放棄をした者以外の「親族」と定められました。
親族については、民法725条により、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族とされています。
すなわち、この範囲の人でなければ特別寄与者とは認められません。
逆に言えば、この範囲以外の人が、いくら被相続人の生前に貢献していたとしても、遺贈または死因贈与などがなければ、被相続人の相続財産から分配を受けることは出来ないことになります。

内縁関係にあったとしても、条件を満たさない限り特別寄与者とは認められません。
したがって、内縁配偶者に対して財産を残したい場合には、遺言や生前贈与の方法をとる必要があることには変わりありません。



3 特別寄与料の請求方法と請求の時間的制限

特別寄与者は、特別の寄与に応じた金銭を、相続人に対して請求することができます。

相続人(ら)との協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることができます。
ただし、この申立ての期限は、特別寄与者が相続が開始したことと相続人を知ってから半年以内かつ、相続開始から1年以内とされています。

裁判外の協議には時間制限はありませんが、裁判上の請求の期限を過ぎてしまってからは特別寄与料は受け取れないと考えておいた方が良いでしょう。


4 特別寄与料の金額

特別寄与料よりも遺贈の方が優先されます。
すなわち、あくまでも被相続人の意思が優先されるということになります。

また、当然ながら相続財産の範囲内でのみ認められます。

これを前提として、相続人(ら)と特別寄与者の間で協議を行うことになります。

協議が整わない場合の裁判所の審判では、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情が考慮されて特別寄与料が決定されることになります。


5 特別寄与料の負担

特別寄与料は相続人が負担することとなります。

相続人が複数いる場合、法定相続分の割合で各相続人がそれぞれ負担することになります。


以上が、このたび改正・施行となった相続法の相続人以外の者の貢献を考慮するための方策に関する解説となります。


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