2018年3月13日火曜日

使用貸借の終了原因

使用貸借とは,ただでものを貸すことです。
ものには,不動産(土地・建物)も含まれます。

ただでものを貸すということは,特に親族関係などで一般的に行われています。
たとえば,親子の関係だからということで,親が自分名義のマンションに子を家賃無料で一人暮らしさせている,などということは,それほど珍しいことではありません。
また,このような場合には,使用貸借について契約書が交わされていることも,それほど多くはありません。

このように,使用貸借契約が存在することが明らかであっても,具体的な契約内容(いつまで?何の目的で?)といった内容が明らかでない場合も多いため,使用貸借はどのような場合に終了させることが出来るのかは,しばしば問題になります。

法律はどう定めているのでしょうか。

民法第597条
1 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

期間の定めがある場合には,その期限で使用貸借契約は終了です。
期限の定めがなく,使用・収益の目的が定められている場合には,その目的に従って使用及び収益を終わった時で契約終了となります。
ただし,借り主が目的に従った使用収益をいつまでたっても終わらない場合に,契約がいつまでも終わらないのは不都合であるため,使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときには,貸し主が返還請求をすることで,契約終了とすることが出来ます。
期間も使用・収益の目的も定められていない場合には,貸し主が,いつでも返還請求をすることで,契約終了とすることが出来ます。

もっとも,明確に契約書が交わされることが少ない使用貸借だけに,「使用・収益の目的が定められているかどうか」「定められている場合には使用及び収益をするのに足りる時間を経過したといえるか」という問題が,常につきまといます。

先ほどの親が子に自分の所有するマンションに住まわせた目的は,子がそのマンションの大学に通うためだったという場合も考えられます。
また,土地を貸した理由は,借り主が土地の上に家を建てて住むためだったという場合もあります。
これらの契約で,契約書が作られていなかったからといって,目的が定められていない,ということにはなりません。

それでは,使用及び収益をするのに足りる時間を経過したと言えるのは,どんなタイミングでしょうか。
これは,個別具体的な事情により,さまざまな判断がなされています。
「大学に通うために」という目的はわかりやすいですが,「家を建てて住むために」という目的の場合には,使用収益に足りる期間といっても,わかりにくいですね。
そのため,裁判官によって判断にかなりのブレがある部分です。

不動産の賃貸借と違って,使用貸借は無償であることから,借り主は特別な保護を与えられません。

※なお,民法の改正に伴い,次のように条文は変わります。
(1) 当事者が使用貸借の期間を定めたときは,使用貸借は,その期間が満了した時に終了する。
(2) 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合■において,使用及び収益の目的を定めたときは,使用貸借は,借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
(3)使用貸借は,借主の死亡によって終了する。 

従前の2項但し書きや,3項に当たる規定は,別の条文となります。
以下の(1)は新設条項ですね。
自然に終了する場合以外の終了は,「解除」によることとされました。
(1) 貸主は,借主が借用物を受け取るまで,契約を解除することができる。ただし,書面による使用貸借については,この限りでない。
(2)貸主は,■に規定する場合において,■の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは,契約の解除をすることができる。
(3)当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは,貸主は,いつでも契約の解除をすることができる。
(4) 借主は,いつでも契約の解除をすることができる。


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2018年3月6日火曜日

共同不法行為者に対する請求と時効中断

複数の行為者により被害者に損害を与えた場合には,加害者には共同不法行為が成立します。

被害者が損害賠償を得るためには,加害者へ請求しなければなりません。
損害賠償債権にも消滅時効があるため,放っておくと時効を援用されて,賠償を受けることが出来なくなってしまうのです。

それでは,共同不法行為者の一人に対して行った請求は,他の共同不法行為者に対しても,時効中断の効力を生じるでしょうか。

(事例)
Xは,YとZの行為により損害を受けた。
Xは,時効期間が経過する前に,Yに対して損害賠償請求(催告)を行った。
その後時効期間が経過した。
いまだ賠償を受けられないXは,催告から6か月以内に,YとZを相手として損害賠償請求訴訟を提起した。

催告をしておくと,時効期間が過ぎた後も,催告から6か月以内に提訴すれば,時効中断が認められます。

この事例では,Yに対しては時効中断の効力が認められることは間違いないですね。
一方で,Zに対してはどうでしょうか。
共同不法行為者間で請求の絶対効が認められるのか,という問題になります。

結論
残念ながら,この場合には,絶対効は認められない,ということになります。
Xとしては,Yだけでなく,Zに対しても損害賠償の催告を行っておくべきでした。

これは,一般的な連帯債務者間において,請求の絶対効が認められるのとは対照的です。
※ただし,連帯債務者間における請求の絶対効については,民法改正により削除されることが決まっています。


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