2018年7月相続法改正について
改正法の中でも一足はやく、2019年1月14日に、自筆証書遺言の方式緩和に関する規定が施行されました。
(改正前)
民法968条
1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
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(改正後)
民法968条
1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)の中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
自筆証書は、全てを自筆し、署名押印しなければならないのが原則でした。
この原則自体は変わりませんが、これが緩和され、自筆ではない相続財産目録をつけることが可能になりました。
自筆でない目録、ということはパソコンで作った目録を自筆証書遺言に添付することができるということになります。
(第三者による手書きの目録でも構いません。)
特にいろいろな種類の財産がある場合には、全てを手書きするのは大変ですし、後から見る人にとっても解読に労力を使わせる可能性があります。
事細かに相続先を決めておきたい場合はもちろんのこと、そうでなくても、相続人らが相続財産を見落としてしまうことを避けるためにも、遺産の目録を作っておくことは意味があるでしょう。
作った目録については、1ページごとに署名押印しなければならないという決まりがありますので、注意を要します。
この署名押印が欠けると、有効な遺言では無くなってしまいますので気をつけましょう。
読解に苦しむような遺言は、それが遺言なのかどうか、という所から争いになることがあります。
後から見る人にとってわかりやすい遺言を作成することも、重要なポイントです。
遺産目録をパソコンで作ることが出来るようになったことは、大きな進歩だと言えるでしょう。
もちろん、公正証書遺言の方法にした方がさらに確実かも知れませんが、さまざまな事情で自筆証書遺言にしておきたい、という場合もあります。
自筆証書遺言の場合であっても、後から解釈に争いが生じないように、遺言の内容について専門家からのチェックを受けることは重要です。
さて、この新法は、2019年1月14日から施行されると書きました。
対象となるのは、2019年1月14日以降に発生した相続、ということになります。
したがって、これ以前に亡くなった人の相続に際して、故人が自筆でない目録つきの遺言を残していたとしても、その遺言は有効にはなりません。
それでは、2019年1月14日より前に、自筆でない目録つきの遺言を残していた人が、同日以後に亡くなった場合はどうでしょうか。
法律は2018年7月に成立し公布されているのですから、そういった人がいるかも知れませんね。
しかし、もし早まって作ってしまった人がいれば、作り直してください。
残念ながら、このタイプの遺言が有効と判断されるのは、2019年1月14日以降に作成された場合だけですのでご注意ください。
(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 附則6条)
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