2021年6月8日火曜日

保釈制度

保釈のニュースを元に

秋元司衆議院議員 保釈され東京拘置所出る

刑事手続における身柄拘束には、逮捕、勾留といったものがあります。
さらに勾留は、起訴前の勾留、起訴後の勾留といったものがあります。

逮捕と起訴前の勾留には期間制限がありますが、起訴後の勾留は容易に更新されるため、ずっと身柄拘束されているということも珍しくありません。

なお、起訴前の段階で犯人であると疑われている人を「被疑者」と呼びますが、起訴後の段階では「被告人」という呼び方に変わります。
マスコミなどは、それぞれ「容疑者」「被告」という呼び方を使うことも多いですね。

さて、本題の保釈ですが、これは起訴後の勾留に対して、被告人側で請求できる制度となります。
保釈には、権利保釈と裁量保釈という2種類がありますが、権利保釈は要件さえ整っていれば保釈を認めなければならないという場合の保釈、裁量保釈は要件は満たさないものの裁判所の判断で保釈しても良いと判断される場合の保釈を言います。

権利保釈でも裁量保釈でも、保釈保証金が設定され、これを収めることで身柄拘束が解かれるというのが通常です。
保釈保証金は、被告人が逃走等をせずに公判(刑事裁判)へ確実に出席すること等を担保するために必要なもので、約束事項を守らなければ没収(法律用語では「没取」)されてしまいます。


以下の6つの要件に当てはまらなければ、権利保釈が認められることになります。
①被告人が重大犯罪(死刑・無期・短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪)を犯した
②被告人が前に死刑・無期・長期10年を超える懲役・禁錮にあたる罪で有罪の宣告を受けた
③被告人が常習として長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した
④被告人が証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
⑤被告人が被害者や証人となり得る者またはその親族の身体や財産に害を加え、またはこれらの者を怖がらせる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある
⑥被告人の氏名または住居がわからない

軽い犯罪行為であれば、証拠隠滅等のおそれがなければ権利保釈が認められそうです。
もっとも、否認をしていると、④罪証隠滅のおそれや、⑤被害者証人等への危害のおそれ、などといった理由が認められやすく、権利保釈は認められない、という結論になるのが通常です。

裁量保釈は、前述のとおり権利保釈が認められない場合に認められる可能性のある保釈です。

否認していれば裁量保釈も認められないことが多いことは事実ですが、必ずしもそうとも限りません。
近年は、「人質司法」と批判される日本の刑事捜査・裁判制度への批判への反省からか、保釈が認められる可能性は高まってきていると思われます。

冒頭で引用したニュースでも、被告人は無罪を主張していますが、保釈保証金8000万円という条件で保釈が認められたようです。

保釈保証金8000万円というのは、相当に高額な金額ですね。
これは、保釈保証金の目的から考えて、逃走や罪証隠滅の可能性などと、本人の財産状況を踏まえて没取されては困る金額などを考慮して決定される金額となります。
一般的な事件であれば、このような高額になることはほとんどありません。

被疑者の段階では、準抗告等で身柄解放を目指し、それがかなわなかった場合にも、起訴後には速やかに保釈制度による身柄解放を目指す、これが初期の弁護人の重要な活動の一つとなっています。

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こちらの事件は、起訴後も保釈がなかなか認められない(身柄拘束が1年8か月に及んだ)事件でした。
判決が確定するまでは無罪推定が働くわけですから、このように起訴後勾留を続けることは重要な人権侵害であると主張する必要があります。
有罪か無罪かを決めるのは弁護人の役割ではありませんが、判決確定前の身柄拘束が、事実上の刑罰の執行であってはならないということは言うまでもありません。


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