2019年2月7日木曜日

配偶者居住権(1)

2018年7月相続法改正に関する記事です。

このたびの改正により、配偶者の居住権を保護するための方策が規定されました。
2020年4月1日の施行となっていますので、施行はもう少し先の話になります。

2018年7月相続法改正について

配偶者の居住権を保護するための方策として、配偶者居住権に関する規定が新たに設けられました。
まずは新設された条文を紹介します。


民法1028条(配偶者居住権)
1 被相続人の配偶者(以下「配偶者」という)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下「居住建物」という)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下「配偶者居住権」という)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 ① 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 ② 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

1029条(審判による配偶者居住権の取得)
遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
① 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき
② 配偶者が家庭裁判所に対して、配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(①の場合を除く)。

1030条(配偶者居住権の存続期間)
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

1031条(配偶者居住権の登記等)
1 居住建物の所有権は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る)に対し、配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負う。
2 第605条の規定は配偶者居住権について、第605条の4の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

1032条(配偶者による使用及び収益)
1 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第1項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がなされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって、配偶者居住権を消滅させることができる。

1033条(居住建物の修繕等)
1 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3 居住建物が修繕を要するとき(第1項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

1034条(居住建物の費用の負担)
1 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

1035条(居住建物の返還等)
1 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第599条第1項及び第2項並びに第621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させたものがある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。

1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第597条第1項及び第3項、第600条、第613条並びに第616条の2の規定は、配偶者居住権について準用する。



もともと1028条以下は遺留分に関する規定がありましたが、これらの規定も手を入れられることとなったため1041条以下に繰り下がっています。




摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,遺言・相続に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。