2021年6月9日水曜日

検察審査会

当初は不起訴とした被疑者を一転して略式起訴にした、というニュースがありました。

東京地検特捜部が菅原前経産相を一転略式起訴したワケ

不起訴は検察官による終局処分の一つで、新たな証拠でも見つからない限り、略式起訴にしろ、通常の起訴にしろ、原則として同じ事件で起訴されることはないと考えて良いかと思います。
もちろん、身柄拘束(逮捕・勾留)が続いていた場合も、不起訴により釈放されることになります。

起訴・不起訴は検察官が独占する権限ですが、不起訴に対する不服申立の手段があります。
それが検察審査会の制度であり、検察官の権限に民意を反映させることを目的としています。

検察審査会は、無作為に選ばれた国民から構成されており、各地方裁判所の中(建物内)に設置されています。
検察官による不起訴処分に不服のある告訴者、告発者、犯罪被害者等は、検察審査会に不服を申し立てることができます。

検察審査会の審査により、「起訴相当」または「不起訴不当」と判断された場合には、検察官が再度、起訴するかどうかを判断することになります。
もっとも、検察官は、検察審査会の判断に拘束されることはありませんので、再び不起訴と判断することも、よくあります。

「起訴相当」とした事件が再び不起訴とされた場合、検察審査会は、弁護士を審査補助員に委嘱して、再び審査を行います。
この再審査の結果、再び「起訴相当」と判断した場合は、「起訴をすべき議決」(起訴議決)を行います。

起訴議決された事件は、裁判所が弁護士を検察官の職務を行う「指定弁護士」として、刑事裁判が開始されることになります。(強制起訴)

今回のニュースの記事では、「起訴相当」決議を受けて、検察官による再度の判断として、略式起訴が選択された、という事情があります。

「嫌疑不十分」といった理由で不起訴となった事件については、強制起訴しても有罪判決を得ることはなかなか容易ではありません。
もともと検察官が、裁判では有罪とするのは難しいだろうと考えていた事件であるからです。
しかし、今回のケースは、「起訴猶予」という理由で不起訴とされているものであるため、いったん起訴されてしまえば有罪が予想されるところでした。
そのため、強制起訴されてしまうと、検察官の判断は誤っていたと評価されることになってしまいます。
そのため、検察官は、略式起訴を決めたのであろうと思われます。
検察官は、起訴に際して、略式起訴と通常起訴の選択ができますが(略式起訴には被疑者の同意が必要です。)、強制起訴の場合は、通常の裁判手続となります。

なお、検察審査会に申立がされた場合に、審査会の判断を待たずに、検察官が再考して起訴に踏み切る事件が一定数あるとのことです。
その場合は、検察審査会の審査は打ち切りとなります。
いったん不起訴とされた被疑者の立場が不安定になるため、問題であろうと思われます。

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