2018年7月相続法改正に関する記事です。
2018年7月相続法改正について
今回は、「公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設」について見ていきましょう。
相続法改正の中では一番遅く、2020年7月10日に施行される改正です。
今回の改正のために、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定されました。
文字通り、法務局に遺言を保管する制度が新設することになりました。
この法律の施行が2020年7月10日ということになります。
1 制度の必要性
なぜ、このような制度が必要なのでしょうか。
自筆証書遺言は、法定の要件を満たす必要がありますが、公正証書遺言とは違い手軽に作成することのできる遺言であると言えます。
しかし、公正証書遺言については相続人が公証役場で検索すれば遺言の存否や、最新の遺言を確認することが出来るのに対し、自筆証書はそうはいきません。
信頼できる相続人等に自筆証書遺言の保管場所を伝え、あるいは保管を依頼する等しなければ、遺言の存在そのものが気付かれずに過ごされる可能性も出てきます。
遺言は遺言者の最終の意思を表現するものとして大変重要な意味を持つにもかかわらず、遺言が発見に至らなかったり、発見者によって不当に破棄されたりした場合には、その意思に反した遺産分割が行われてしまう可能性もあるのです。
せっかく自筆証書での遺言を作成したとしても、その意思が達成されなければ無意味になってしまうため、自筆証書遺言についても、公的な保管制度を作って、相続人が照会することで遺言の存否や内容が分かるようにするという制度が求められました。
そこで今回の相続法改正に併せて、このような保管制度が設けられることになりました。
2 対象となる遺言と保管制度の概要
対象となるのは、封をしていない自筆証書遺言だけあり、さらに、法務省令で定める様式を満たしていなければなりません。
保管の申請については、この法律および法務省令で定められた方法により、遺言者本人により、法務局の遺言書保管官に対して行われます(4条)。
保管される遺言書については、申請情報とあわせて遺言書保管ファイルとして、電子データでも保管されます(7条)。
申請を撤回することも可能で、この場合も遺言者自身が行います(8条)。
遺言書は本人に返還され、電子データも消去されます。
ただし、保管申請が撤回されたからといって遺言書が無効になるわけではなく、通常の自筆証書遺言となるだけですので、遺言としても撤回したい場合は、破棄するか、新たに有効な遺言書を作成する必要があります。
遺言者の存命中に遺言書を閲覧できるのは、その遺言者だけです(6条2項)。
誰かが亡くなった場合に、自分が法定相続人である人や、受遺者になっている可能性がある人など(関係相続人等)は、遺言書保管官に対し、保管された遺言が存在するかどうかという点について、遺言書保管事実証明書の交付を請求することが出来ます(10条)。
また、実際に保管されていることが判明した場合、関係相続人等は、保管された遺言書の原本を閲覧し(9条3項)、保管された情報を証明する書面(遺言書情報証明書)の交付を請求することが出来ます(9条1項)。
一部の関係相続人が遺言書の原本を閲覧し、または証明書面の交付を受けた場合、遺言書保管官は、その他の法定相続人、受遺者、遺言執行者に対し、通知を行います(9条5項)。
これらの情報は申請時の申請情報に含まれており、速やかに通知を行うことができます。
これにより、遺言に関係する人が等しく、遺言の存在を知り、遺言の内容を確認する機会を保証されることになります。
相続人本人であっても、遺言書原本が交付されることはありません。
遺言書の原本および情報データは、遺言者の死亡から一定期間(相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間)経過により廃棄、消去されることになります(6条5項、7条3項)。
そのため、自分に関係のある人が死亡して相続が開始された場合には、なるべく早く法務局に遺言書が保管されているかどうかを確認した方が良いでしょう。
保管制度を利用して保管された遺言は、通常の自筆証書遺言と異なり、家庭裁判所における検認が不要になります(11条)。
なお、これらの保管制度は、申請、撤回、閲覧、証明等に所定の手数料がかかります(12条)。
以上が、法務局における自筆証書遺言の保管制度の概要です。
まだこの法律に関する法務省令が明らかになっていないため、法律施行後に、利用を検討する場合には、再度確認する必要がありますのでご注意下さい。
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