2019年8月3日土曜日

遺言執行者の権限の明確化

2018年7月相続法改正に関する記事です。

2018年7月相続法改正について

今回は、「遺言執行者の権限の明確化」について見ていきましょう。

2019年7月1日から施行となった改正です。

1 条文


(遺言執行者の任務の開始)
第1007条
1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
※従来の1007条のとおり
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第1012条
1 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。※従来の1012条2項のとおり
(遺言執行者の行為の効果)
第1015条
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

2 内容

(1)第1007条第2項について

 遺言があり、遺言執行者がいれば、遺言に従った遺贈等が可能になります。
 しかしこれでは、遺産の処分について重大な利害関係をもつ相続人が、遺言の内容を知らされないまま遺産が処分されてしまうということも起こりえます。
 そこで、遺言執行者は、まず遺言の内容を相続人に知らせなければならないという規定が加えられました。
 実務的には、多くのケースで従来も行われていたものと思われますが、今回明文化されたことにより、遺言執行者の義務となりました。

(2)第1012条について、第1015条について

 遺言執行者の立場について、従来の1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」とされていました。
 遺言執行者は、遺言者(被相続人)の代理人なのか、相続人の代理人なのか、代理人ではなく遺言執行者という本人として職務を行う立場なのか、いろいろな考えがあり得ますが、条文上は相続人の代理人とされていたのです。
 しかし、被相続人の遺言に従っておこなうべき遺言執行者の職務内容が、相続人の意思に合致するとも限りません。
 遺言執行者の立場は、多面的な側面を持つため、従来の1015条は廃止されることになりました。

 まず、1012条1項にて、「遺言の内容を実現するため」という文言が加えられました。
 また、同2項において、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことが出来ることが明確化されました。

 そして、このように、遺言の内容を実現するために遺言執行者として行った行為の効果は、相続人に帰属することが改正された1015条で明らかにされました。


3 改正の影響

 1007条2項により義務が明確化されたほかは、従来の遺言執行者の職務内容についての解釈を整理して明確化したものと言えます。
 上述のとおり1007条2項の義務についても、従来多くの遺言執行者は行ってきたことです。
 したがって、改正の影響が大きく現れるということはないでしょう。


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