2014年8月14日木曜日

控訴審の手続

検察官により公訴提起され,第1審の判決が出たものの,裁判所の判断には納得ができない場合はどうしたらよいでしょうか。
日本では三審制が保証されていますので,控訴を申し立てれば良いということになります。
また,検察官が第1審の判断に不服がある場合にも,控訴を申し立てることができます。



控訴審の裁判所は,かならず高等裁判所で行います。
これは,第1審が地方裁判所であっても,簡易裁判所であっても代わりません。

控訴の申立は,第1審の判決言い渡しの日から14日以内(判決日の翌日が1日目となります)に,高等裁判所宛の控訴状を,第1審の裁判所に提出することで行います。
控訴状には,第1審の判断に不服がある,という以上の控訴の理由を書く必要はありません。

控訴の申立が行われた場合には,裁判記録が原審から,担当の高等裁判所に送られます。

そして,裁判所により,控訴趣意書の提出期限が決められます。

(1)控訴趣意書

控訴趣意書というのは,控訴の理由を述べる書面です。
当然控訴した側(被告人または検察官)が用意することになります。

どのような理由で控訴ができるかは,法律により決まっています。

ア 絶対的控訴理由・・・これらの違反がある場合,それだけで第1審判決は破棄されます

・ 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと
・ 法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと
・ 審判の公開に関する規定に違反したこと
・ 不法に管轄または管轄違いを認めたこと
・ 審判の請求を受けた事件について判決をせず,または審判の請求を受けない事件について判決をしたこと
・ 判決に理由を附せず,または理由に食い違いがあること

イ 相対的控訴理由・・・これらの違反があり,かつ第1審判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に,破棄されます。

・ 訴訟手続の法令違反
・ 事実誤認
・ 法令適用の誤り
・ 量刑不当
・ 再審事由等

実際の事件で,絶対的控訴理由があることはまれです。
そして,相対的控訴理由の中でも事実誤認や量刑不当がわかりやすいと思いますが,やはりこれらの理由での控訴が多くなります。

控訴趣意書は,控訴趣意書提出期限までに提出しなければなりません。
期限後になされた主張は,裁判所の職権発動を促す参考程度にしかなりませんので,期限を守ることが重要になります。


(2)公判期日

多くの事件では控訴趣意書が提出されたあと,公判期日の指定があります。
(控訴趣意書の提出期限より前から,公判期日が指定されている事件もあります。)

公判期日までに,控訴趣意書にのっとって,立証の準備を行います。
また,場合によっては,相手方からの反論である控訴答弁書が出されることもあります。

控訴審の証拠調べでは,1審判決前にあった証拠で1審に提出されなかったものについては,取り調べ請求を1審でしなかったことにやむを得ない事情がある場合しか,提出できないことになっています。

そのため,取り調べの対象となるのは,一審の証拠調べに新たに出てきた事情,ということになります。
例えば,1審の証拠調べ後に,新たに示談が成立した,というような事情があれば,示談成立の証拠は取り調べの対象となるでしょう。
(1審の量刑判断を訂正させうる事情がとなりうるからです。)
逆に,1審で証人として出て貰ったけれど,信用できないので,もう一度読んで話を聞きたい,というようなことは,できません。

控訴審の期日においてできることは,このように限られているため,これを前提に控訴趣意書をはじめとする準備をしなければなりません。

事実誤認を主張する場合,新たな証拠がないのであれば,すでに一審で提出された証拠の評価の誤りを主張することになり,控訴審では立証は無し,ということも考えられます。
(通常は,被告人質問ぐらいは請求して,少しだけ被告人の現在の心境を聞くぐらいのことは,認めてもらえますが。)

このように,控訴審はドライな手続ですので,なるべく第1審の段階で事情を出し切った上で,適切な判断になるように準備することが,望ましいでしょう。
しかし,裁判官が被告人にとって望ましい判決をしてくれるとは限らず,特に事実認定の場面では,裁判所の判断に疑問がある場合もよくあります。

その場合は,入念に準備をして,控訴審に臨まざるを得ません。




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