2014年8月4日月曜日

任意後見契約を行っていた本人の判断能力が十分でなくなった場合,その契約はどうなるのですか

任意後見契約は,本人の判断能力が衰えたときに備え,本人任意後見受任者との間で結んでおく契約のことです。
任意後見契約については,以前の記事をごらんください。→こちら



よって,本人の判断能力が十分でなくなった場合こそ,この契約が効果を発揮すべきとき,ということになります。
具体的には,どのような手続をとることになるのでしょうか。

任意後見契約による後見を開始するには,家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てをする必要があります。

申立てをすることができる人は,次の通りです。
(1)本人
(2)任意後見受任者
(3)本人の配偶者
(4)本人の4親等内の親族

契約をした当事者(本人および任意後見受任者)に限られない,というのがポイントです。
これは,財産管理契約と任意後見契約をセットで締結した任意後見受任者が,本人の判断能力がなくなっても本人の財産を自由にできることを良いことに,任意後見監督人選任の申立てを行わないという事態を避けることに,一定の効果は期待できます。

管轄の裁判所は,本人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

任意後見監督人選任の申立ての際には,成年後見開始のときと同様,本人の診断書を資料として添付し,本人の判断能力が失われたことの疎明資料とします。


さて,申立てにより,任意後見受任者による後見を開始することが相当であるという判断がなされた場合,任意後見監督人が選任され,受任者は,任意後見人として職務を行うことになります。

任意後見人は,財産管理に関する法律行為や,身上監護に関する法律行為を,本人に替わって行うことになります(代理権)。
しかし,任意後見人が行えるのは,任意後見契約により授権された範囲内であり,その範囲外の行為を行うことはできません。
本人のために,授権範囲外の法律行為を行う必要があるものの,本人にはその法律行為を行う判断能力がない場合には,法定後見制度を使うしかないでしょう。
そのため,任意後見契約締結の際には,なるべく本人にとって必要なことを授権できるようにしておく必要があります。


任意後見人は,裁判所によって直接監督されることはありませんが,任意後見監督人による監督を受けることになります。
任意後見監督人は,任意後見人が適正に後見事務を行っているかをチェックし,定期的に家庭裁判所に報告します。
家庭裁判所が任意後見監督人をチェックすることにより,間接的に任意後見人がチェックされる,という仕組みになっており,これは法定後見制度とは異なる部分です。

任意後見人は,後見事務を行うに当たっては,本人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない,とされています。
委任契約ですので,善良なる管理者の注意義務が課されるのは当然ですが,後見事務の始まるころには,本人の意思表示等が難しいことが多分に予想されるため,特に法律で強調されています。


任意後見契約が終了するのは次の場合です。
(1)任意後見契約の解除
(2)任意後見人の解任
(3)法定後見の開始
(4)当事者の死亡,破産等

(1)の解除は,任意後見監督人選任前であれば,公証人の認証を受けた書面での契約解除,選任後であれば,家庭裁判所の許可が要件となります。
(2)解任は,任意後見監督人の監督を通じて任意後見人の不正な行為等が判明した場合,任意後見監督人等の請求により,家庭裁判所が行うことになります。


なお,任意後見契約を締結したものの,本人が判断能力等に減退を来すことなく健康なまま一生を終えた場合には,任意後見監督人を選任することなく終わることになります。
そういった観点から見ると,任意後見契約は,保険に似たところもありますね。




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