2018年5月8日火曜日

氏の変更許可申立

家庭裁判所での手続に,氏または名の変更許可を得るというものがあります。

氏または名は,戸籍で管理されている情報ですが,これらを変更するためには,家庭裁判所に変更許可の審判を求めて申立を行わなければなりません。

根拠となるのは戸籍法107条(氏)および同107条の2(名)です。
どちらも家庭裁判所の許可が必要とされています。

戸籍法107条
1 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
2 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
3 前項の規定によつて氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から三箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
4 第一項の規定は、父又は母が外国人である者(戸籍の筆頭に記載した者又はその配偶者を除く。)でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとするものに準用する。

戸籍法107条の2
正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。


許可を得るひつような実質的要件として,次のように定められていますね。
氏  やむを得ない事由によって
名  正当な事由によって

変更にはそれ相応の理由が必要であり,自分の好き勝手に氏または名を変更しようと思っても,許可されない,ということになります。
やむを得ない事由と正当な事由の差はと言うと,氏を変更することの方が名を変更することよりも厳しいとされています。

裁判所のウェブサイトでの説明です
氏の変更に必要な「やむを得ない事由」・・・氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうとされています。
名の変更に必要な「正当な事由」・・・名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいいます

名の変更の場合は,たとえば
・ 過去の虐待の経験を思い起こさせる戸籍名の使用は耐えがたい
・ 同姓同名の犯罪者がいる
・ 婚姻や養子縁組で同姓同名になってしまう
・ いじめをうけるような珍奇な名前である
・ いわゆるキラキラネームを改めたい
とかいうような深刻な事情はもちろんのこと,
・ 出家する
・ 難読である
・ 異性とまぎらわしい
・ 本来使用したかった文字が人名用漢字に加えられた
というような(社会生活において支障を来すかどうかは疑問な)場合にも認められることがあります。

一方で,氏の変更の場合には,やはり深刻な場合にのみ認められるようです。


なお,離婚の際には,配偶者の氏を名乗っていた当事者は,当然に婚姻前の氏にもどることになります(離婚による復氏)。
婚姻時の氏を離婚後も継続的に名乗る場合には,届出をする必要がありますが,これには家庭裁判所の許可は必要ありません(婚氏続称)。

これとは別に離婚時にもう一つ出てくるのが「子の氏の変更許可審判」であり,こちらは家庭裁判所での審判手続が必要になります。
離婚による復氏をした人が,未成年の子を自分の戸籍に入れるには,子も同じ氏に変更しなければならないので,この手続が必要になるのです。
子が15歳未満のときは,親権者が子の法定代理人として申し立てます。
子が15歳以上のときは,子本人が申立を行います。
(離婚しても婚氏続称する場合には,未成年の子を自分の戸籍に入れる手続だけで足りるので,家庭裁判所の許可は必要ありません。)



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