(1) 税務争訟事件の流れ
① 税務申告
主に個人事後業者や,法人は,税務申告を行います。
個人事業者の場合には,毎年3月15日まで,法人は決算期から原則2か月以内が申告期限となります。
② 税務調査手続 と 修正慫慂,修正申告
税務署が申告内容に対して調査が必要であると判断した場合,税務調査が入ることになります。
税務調査は,強制の手続ではありませんが,正当な理由がなく忌避した場合には罰則もありますので,完全な任意調査というわけでもありません。
その中で,申告が妥当ではないと判断された場合には,まず自発的な修正が促されます(修正慫慂)。
修正慫慂に従って,修正申告をした場合には,問題は起こりません。
申告者本人に対する調査のほか,取引先等に対する反面調査も方法としてありますので,税務調査が入ることは,申告者本人にとっては相当なプレッシャーとなります。
そのため,修正申告に応じてしまう,また不服申立をあきらめる,というケースも多くなります。
③ 更正処分(課税処分)
修正慫慂に従わない場合には,税務署による更正処分が行われます。
これは,行政による不利益処分にあたり,今後税務争訟事件として当否の争われる「原処分」ということになります。
更正処分自体には,処分の理由は具体的には示されません。
④ 異議申立
原処分に納得ができない場合には,原処分庁に対する異議申立を行うのが原則です。
更正処分に対する異議申立は,税務署長宛に行います。
異議申立は,原処分から2か月以内に行わなければなりません。
異議申立に対する棄却の異議決定で,初めて処分理由が具体的に明らかになるのが原則です。
次の審査請求に進むに当たっては,処分理由の検討が必要となるでしょう。
⑤ 審査請求
異議申立によっても納得のいく結果が得られなかった場合には,国税不服審判所長宛の審査請求を行います。
異議申立に対する異議決定から1か月以内に申し立てなければなりません。
異議申立から3か月たっても異議決定が出ない場合にも,審査請求を申し立てることができます。
国税不服審判所は,全国に支部・支所がありますので,そちらに申し立てすることになります。
審査請求は,原処分の当否を第三者の立場から判断することになり,しかも,納税者にとって原処分より不利益となる判断はできません。
このことから,納税者の権利救済機関であるとされていますが,実際には,厳密に第三者であるとは言いがたいことや,対審構造をとっていないことから,事実認定が課税庁寄りになってしまう傾向にあります。
⑥ 訴訟
審査請求に対する裁決を受け取った日から6か月以内に裁判所に対して,訴訟を提起する必要があります。
審査請求を申し立ててから,3か月以内に裁決がなかった場合には,棄却の裁決があったものとして,訴訟を提起することができます。
訴訟で争うのは,原処分であり,審査請求の裁決ではありません。
相手(被告)は,国ということになります。
裁判管轄は,行政事件訴訟法12条に定めるとおりで,被告国の住所地を管轄する東京地裁,原告である納税者の住所地を管轄する地裁,原処分庁の住所地を管轄する地裁,原告の住所地を管轄する高裁所在地を管轄する地裁に認められます。
ただし,かならず本庁での扱いとなり,地裁支部に申し立てることはできません。
原告である納税者はが処分の違法性を主張立証する必要はなく,被告である国が,処分の適法性の主張・立証責任を負います。
ただし,それでも税務訴訟の納税者勝訴率は,1割程度にとどまっており,手続に時間がかかることからも,相当にハードルが高い,と言わざるを得ないでしょう。
(2) 根拠となる法律
手続の根拠となる法律のほとんどは,国税通則法です。
これは,行政不服審査法の特別法としての位置づけではありますが,一般法である行政不服審査法が適用される場面は,ほとんどありません。
(3) 厳密な期間制限と不服申立前置の原則
上に書いたとおり,それぞれの手続には期間制限が定められています。
この期間を徒過した場合,門前払いを受けることになります。
また,① 訴訟を提起するためには,かならず審査請求を申し立てている必要があり,② 審査請求を申し立てるためには原則として異議申立を行っている必要があります。
(ただし,②には例外あり,青色申告書に係る更正等の場合には,2か月以内に,直接審査請求を申し立てることができます。)
(4) 今後予定されている手続の流れの変更
平成26年6月に国税通則法等を改正するための法律が成立しました。
これによれば,改正行政不服審査法施行の日から2年以内に,新たな手続が適用されることになります。
まず,処分庁に対する異議申立は,再調査の請求と名前を変え,期間制限は3か月となります。
また,この再調査請求を経ることなく,直接審査請求を申し立てることが可能になりました。
すなわち,更正決定を受けたあと,3か月以内に再調査請求をするか,審査請求をするかを,選ぶことができるのです。
(なお,再審査請求に対する決定のあと1か月以内に,審査請求にて不服申立ができることは同様です。)
(5) 弁護士が関与する場面
税務調査の場面において,助けを求めるとすれば税理士ということが多いと思います。
調査の場面において,弁護士が関与するには,通知税理士の登録が必要となります。
(通知税理士・・・弁護士は,登録すれば税理士の仕事もできますが,かならずしも税務に詳しいわけではありません。税理士法3条1項3号)
その後の,異議申立,審査請求,訴訟の各段階においては,弁護士が代理人として関与していくことができます。
もっとも,これらの手続においても,税務に詳しい専門家である税理士との協働関係は不可欠と言えるでしょう。
税務訴訟においては,税理士が補佐人として,訴訟代理人弁護士とともに訴訟活動を行うことができます(税理士法2条の2第1項)。
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