残業代(時間外労働賃金)の請求に際して参考になる重要な証拠は,使用者が記録・保存しているタイムカードでしょう。
しかし,使用者が労務時間をきちんと管理していながら残業代は一切払わない,というのもそれほど一般的ではないでしょう。
労務時間の管理はあるものの,退勤処理をした後の時間にサービス残業を行っているため,実際の労働時間は客観的証拠として残っていない,ということも珍しくありません。
それでは,個人で記録する必要があるのでしょうか。
しかし,いざ残業代を求めたい,と思っても,自分の勤務時間を,個人的に日々記録している人というのは少数派だと思います。
そもそも,個人で付けていた記録に,どこまでの信用性が認められるのか,心許ない面もあります。
もちろん,個人で日々付けていた日記に,出退勤の時間を記録することで,有る程度の信用性が認められることもあります。
これが,1週間に1度,まとめて書く備忘録だったらどうでしょうか。
また,インターネット上で公開するブログなどでの日記だったらどうでしょうか。
これらでも,無いよりは良いでしょう。
業務で送ったメールなどの記録により,仕事をしていた時間が所定労働時間外であったことを証明することが出来る場合もあります。
この場合には,より客観的な証拠となりますので,残業代請求は認められやすくなるといえるでしょう。
もっとも,全ての勤務日に,都合良く時間外の仕事の記録が残っているとも限りません。
したがって,有る程度は客観的証拠の範囲を超えて請求しなければならない場合もあります。
客観的証拠が何もないからといって,残業代請求をはなから諦めてしまうことはないでしょう。
しかし,客観的証拠がある場合に比べて,労働者の言い分だけではなかなか認めてもらえないものですので,働いている間に,なるべくたくさんの資料を集めておくことが重要になってきます。
仕事を辞めてから残業代請求をしたい,と考える労働者はたくさんいると思いますが,一般的に証拠集めは仕事を辞める前の方が簡単にできることが多いです。
なにも記録等の証拠が残っていない場合,労働者本人の言い分だけで残業代請求を認めさせることは,困難です。
しかし,この場合も周りの労働者の証言などから,残業の事実を立証できる場合もありますので,まずはご相談下さい。
出退勤の管理は会社の責任であるため,これをタイムカードで記録していなかったのは会社の責任であるとして,残業代の請求を一部認めた判決もあります。
使用者は,労働者の労働時間を管理する義務があります。
使用者としては,後から時間外労働賃金を請求されないように,きちんと労働者の労働時間を管理するようにしましょう。
もちろん,経費節減のためには,時間外労働をなくす努力をすべきでしょう。
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