経営承継円滑化法によって定められたのは,
① 遺留分に関する民法の特例
② 事業承継時の金融支援措置
です。
このうち,①については,前回の記事で紹介しました。
前回の記事はこちら。
今回は,②について紹介したいと思います。
事業承継時の金融支援措置については,同法の第3章に記載があります。
代替わり時に,後継者に事業経営権をスムーズに承継するためには,相続前からいろいろな対策を取りうることは,前回までの記事でもいくつか紹介してきました。
しかし,これらの対策が出来なかったとき,あるいは,これらの対策ではスムーズな承継が出来ない場合はどうでしょうか。
たとえば,経営承継円滑化法による①遺留分に関する民法の特例は,推定相続人間の同意が必要でした。
必ずしも,相続人全員の同意が得られるとは限りませんので,特例が使えるとは限らないのです。
また,親族以外に承継する場合には,もっと問題となりえます。
経営承継時には,相続で分散した事業用資産の買取りや,相続税納税等で多額の資金が必要となることがあります。
親族以外への承継の場合には,新経営者は先代から事業を買い取るのに,多額の資金が必要となることもあります。
また,代替わりによる信用低下により,銀行の借り入れ条件や取引先の支払い条件が厳しくなることもあります。
これらの問題点に対する対策がなければ,スムーズな経営承継は期待できません。
そのために用意されているのが,事業承継時の金融支援措置です。
(1)経済産業大臣の認定(第12条)
金融支援措置を受けるには,経済産業大臣により,事業活動の継続に支障が生じている中小企業者として認定を受ける必要があります。
なお,平成25年4月1日以降,経済産業大臣による事前認定は必要でなくなりました。
(2)支援措置
支援措置の内容は,第13条,14条に書かれています。
① 中小企業保険法の特例(第13条)
信用保証協会が通常引き受ける限度額は,普通保険2億円,無担保保険8000万円,特別小口保険1250万円です。
金融支援措置により,事業承継時の資金需要にあてるために,これとは別枠で信用保証を受けることができる上限金額として,普通保険2億円,無担保保険8000万円,特別小口保険1250万円が認められます。
② 株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例(第14条)
日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫は,法律により業務の範囲が制限されていますが,これに制限されずに,事業承継時の資金需要に用いるため,代表者個人に対する融資を可能とするものです。
これにより,新代表者は,株式や事業用資産の買取り,相続税,遺留分減殺請求への対等等の資金を調達することができます。
なお,これらの特例は,経産大臣の認定があれば必ず受けられる,という訳ではありません。
政策金融公庫等の審査が必要となります。
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