2014年8月6日水曜日

個人事業主の破産で問題となる点を教えてください。

破産手続(自己破産)は,自然人にのみ用意された手続ではなく,法人についても利用することができます。

法人の場合には「免責」という制度がなく,破産手続が終了すると,原則として法人は,その法人格が消滅し,登記簿は閉鎖される,というのが自然人とは大きくことなる点です。
また,法人は存続を考える必要がないため,「自由財産」というものはなく,すべてが破産手続の中で手続費用や配当にまわることになります。



それでは,個人事業主が破産しようとした場合には,どのような問題があるでしょうか。

まず,個人が事業を行っていたとしても,自然人であることには変わりませんから,当然,「免責」の制度もありますし,「自由財産」も認められます。

しかし,個人事業主が主体となって経済活動を行っていることから,事業を行っていない個人の破産と比べると,様々な点が変わってきます。
もちろん,そういった場合に適用されるのは破産法であり,その意味で個人事業主が特別扱いされるわけではないのですが,事業主としての特性を把握していなければ,その処理を誤ることにもなりかねません。

そこで,個人事業主の破産について,非事業主の個人破産と比べてどのような点で問題となることが多いかを見ていくことにしましょう。

事業を継続するかどうか

個人事業主の場合,破産しても人生は続きますから,破産後の仕事のことも考えなければなりません。
そこで,従前と同じ仕事を続けることができるのではないか,と考える方もいます。
確かに,従前と同じ仕事を続けることができる場合もあるのですが,現実的には,次のような観点から難しいことが多いのです。

① 取引先との関係

個人事業者の場合には,取引先が破産債権者となることも多くあります。
取引先からお金を借りているわけでもないのに,と思うかも知れませんが,多くの事業者間では,掛取引が行われています。
すなわち,一定期間の仕事に対する報酬請求は,締め日と支払い期限を設けて,支払期限に決済することにする,というものです。

そして,破産手続開始決定時の買掛先は,破産債権者となってしまいます。
すると,この破産債権は破産手続の中でしか配当を受けられませんので当然支払いが遅れますし,配当が受けられなかった部分は通常は免責されてしまいます。

破産で債権を”飛ばしてしまう”ような取引相手と,以前と同様に取引を続ける気になるでしょうか。

このため,なるべく買掛債権者が少ないタイミングを見計らって破産申立をするようなこともあります。
いずれにしても取引先にとっては,たまたま開始決定次に売掛金を持っていたことにより,ババを引いた,感じになってしまいます。

取引先との関係を継続することができないため,破産すると,同じ仕事を続けていくことができないことが多いです。

また,売掛金についても問題が起きます。
これらは,破産者の持つ資産であり,破産手続においては破産財団を構成します。
すなわち,破産管財人による管理のもと,換価されて配当されるのが原則です。
これがどういうことかというと,破産者は破産手続き中に売掛金を回収して,次の運転資金とすることができない,ということになります。
そのため,売掛金が,破産手続のネックとなることも多くあります。

② 事業用の不動産

工場など,不動産を借りている場合には,その敷金・保証金が資産となります。

居住用不動産の場合には,敷金等はよほど高価でなければ換価の対象とはなりません。
しかし,事業用不動産の場合には,敷金は資産となるのです。

そのため,明け渡しのうえ敷金を回収する,というのが原則的な処理方法となります。
すなわち,従前借りていた事業所での事業を継続することができない可能性が高まるのです。


事業を継続しない場合には,これらの問題は起こりません。
もちろん,非事業者の破産と違って,取引先債権者などが多くなるため,手間が多くなるという点はありますが,淡々と処理を進めていけば問題ないでしょう。



結局,破産をするとその事業を続けることはできないのが原則である,と考えた方が良いでしょう。




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