2014年6月30日月曜日

不貞行為慰謝料の相場

不貞行為を行った場合,不貞の相手の配偶者から,損害賠償請求を受ける可能性があります。

不貞行為による配偶者の損害というのは,通常,精神的損害ということになりますので,慰謝料請求,という形をとることになります。

AとYが不倫関係にあり,Aと夫婦関係にあったXが,Yに対して慰謝料請求をしたい,という場合を考えてみましょう。




(1) 慰謝料請求が認められる不貞行為

AとYの不貞行為による慰謝料請求が認められるのはどのような場合でしょうか。

人によって,不貞行為だと考える範囲は違うと思います。
極端な話をすれば,配偶者が異性と話すだけでも許せない,というような人もいるかも知れません。
しかし,社会通念上,このような感情までも法律は保護しないことは確かです。

不貞行為による慰謝料が認められるのは,通常,性行為を伴ったとき,であると考えられています。
したがって,メールで異性と仲良そうにやりとりしていた,とか,2人で飲みに行った,というだけでは慰謝料請求の認められる不貞行為があった,とは言えません。
設例の場合であれば,AとYが性行為を行った,という事実が必要になります。

不貞行為があったことは,損害賠償請求を行う側が立証する必要があります。
もっとも,相手が性行為を行ったという事実を示す直接証拠を,都合良く入手することは現実には困難です。

そこで,ホテルなど2人きりになれる場所への出入りの事実や,性交渉があったことをうかがわせるような内容のメール,といった間接的な証拠により,不貞行為の事実を立証していくことになります。


(2) 慰謝料請求が認められるだけの保護される関係

原則として,婚姻関係やそれに相当する程度の内縁関係が必要です。

夫婦には貞操義務がありますので,それを侵害することを知ってした不貞行為の当事者は,夫婦関係を侵害したとして,慰謝料請求の対象とすることが出来るでしょう。

一方,単なる恋人どおしという関係では,慰謝料請求が認めれられる可能性は低いでしょう。
設例では,AとXは夫婦関係にあった,というので,原則として慰謝料請求可能,ということになります。

しかし,不貞行為以前に,婚姻関係が破綻していた,というような場合には,請求は認められません。
あくまでも,AとYの不貞行為により,Xが損害を受けたことが必要ですので,そもそもAX間の関係が破綻していたのであれば,不貞行為によりXは特段損害を受けたわけではない,と評価されることになります。

もちろん,不貞行為によりAX間が破綻してしまった,というような場合には請求が認められるでしょう。
また,婚姻関係が破綻しかかっていたところ,不貞行為により決定的に破綻してしまった,という場合にも,認められる金額は減る可能性がありますが,請求が認められない,ということにはなりません。


(3) 相手の故意・過失

客観的に不貞行為があったからといって,Yが,不貞行為に該当することを知らなかった場合にまで損害賠償請求が認められることはありません。

Yは,Aに配偶者がいることなど知らなかった,と主張するかも知れません。

この場合は,知っていたこと(故意),知り得たはずなのに過失により知らなかったこと(過失)を,請求するXが,立証しなければなりません。

一般的には,一度きりの不貞行為であれば,「知らなかった」という主張が通ることもあり得ますが,継続的な不貞関係にあった場合には,「知らなかったことにつき,過失もなかった」というわけにはいかないでしょう。
(Yが,配偶者Xの存在に全く気付かないほどAの態度は自然だったというのであれば,そもそもAXの関係は破綻していたのかも知れません。)


(4) 慰謝料の相場

慰謝料は,不貞行為をされたXが,どれだけ損害を受けたか,という点で変わってきます。

そのため,不貞行為を原因としてAと離婚をする場合と,別れずに不貞相手Yに対して請求する場合では,認められる慰謝料の金額が変わって来ます。

諸般の事情により,慰謝料の金額は上下しますので,一概には言えませんが,

不貞行為を原因としてXとAが離婚した(しようとしている)場合には100~300万円程度

離婚の選択はしなかった場合には,150万円以下

というのが,一般的な金額です。

弁護士を代理人として慰謝料請求を行った場合,不法行為に基づく損害賠償請求,という権利の性質上,判決では,弁護士費用(の一部)も認められる傾向にあります。


(5) 求償

不貞行為は,YとAの2人の行為によってなされます。
したがって,Xとの関係では,YとAの共同不法行為ということになります。

共同不法行為の場合,YおよびAのXに対する損害賠償債務は,不真正連対債務といい,Xは,AまたはY,いずれに対しても,損害の全額を請求できる,という関係になります。

そのため,Xとしては,AまたはY,いずれに対しても請求して良い,ということになります。
そして,AまたはYとしては,半額は相手の責任だから,と主張することはできません。
あくまでも,請求されれば,認められたXの損害の全額を賠償しなければならないのです。

そのかわり,先に賠償した方は,もう一方に対して,賠償の負担を求めて請求することができます。
これを求償といいます。

求償(負担)の割合は,通常1:1で考えれば良いでしょうが,不貞関係における責任の程度によっては,負担割合も変化します。

Xが婚姻の継続を選択した場合,Aに対しては請求せず,Yに対してのみ請求すれば良い,と考えるかも知れません。

もちろん,Xとしては,Yに対して損害の全額を請求すれば良いのですが,請求が認められて賠償金の支払いを受けた場合,その後に,YはAに対して求償請求をしてくる可能性がある,ということは心に留めておくべきでしょう。


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