これまでに,事業承継において利用可能な法律上の制度を紹介してきました。
遺留分に関する民法の特例
種類株式の利用
相続人からの強制的な株式買取
実際には,その企業にとって,最適な方法がどのような手続であるかを検討しながら,進めていくことになります。
例えば,専ら代表者の世代交代が問題となるケースで,相続人間に事業承継に対する理解がある場合には,遺留分に関する民法の特例を使いながら,最終的には遺言により事業承継を実現することになります。
もっとも,そのような方法が使えるとは限りませんので,強制的な金銭的解決の方法をとることになります。
すなわち,用意されている手続は,通常であれば株主として認められてしまう人から,会社の経営権を守るための方法ですが,その地位を取り上げてしまうためには,代償を払わなければならないのです。
そのような場合にネックになるのは,株価です。
また,経営権争いについては問題が無くても,事業承継時に起きるもう一つの問題,相続税の問題もあります。
相続税の場面でも,株式の評価は大きく影響してくることになります。
単純に言えば,代表者が営業の努力により事業を成長させるほど,株価は上昇します。
そのため,経営権を与えたくない人から株式を買い取る,といっても,会社(新経営者)にとっては大変な費用負担になる可能性もあるのです。
また,相続税の額は,相続財産の価値に依拠しますので,やはり株価は抑えられた方が会社(新経営者)への負担は少ないことになります。
(1)税務上の株式評価
相続税および贈与税の場面では,非上場株式の評価は時価によります。
また,その時価の評価方法については,財産評価基本通達により定められています。
その評価方法については,会社の規模,業種,株主区分に応じて分類されています。
ア 会社の規模による分類
大会社の場合
原則として類似業種比準方式
選択により純資産価額方式※
※純資産価額において80%評価はできない
中会社の場合
純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式
選択により,同型算式の類似業種比準価額を,純資産価額に置き換えることができる。※)
※置き換えた純資産価額において80%評価はできない
小会社の場合
純資産価額方式
選択により中会社と同様の併方式を用いることができる
イ 株主区分による例外
一定の零細株主においては,配当還元方式で評価を行うことが認められています。
通常,配当還元方式では,類似業種比準方式,純資産価額方式,併用方式に比べて価格が大幅に下がります。
(2)税務以外の場面における株式評価
事業承継時に限らず,株式を評価しなければならない場合の評価方法には,いろいろありますが,税務上の評価は,適切ではないことが通常です。
経営承継法における非上場株式等評価ガイドラインでは,次のような評価方法が用いられています。
ア 収益方式
収益還元法
DCF方式
配当還元方式
イ 純資産方式
簿価純資産方式
時価純資産方式
国税庁方式(純資産価額方式)
ウ 比準方式
類似会社比準方式
類似業種比準方式
取引事例方式
エ 国税庁方式
オ 併用方式
実際には,どのような方法により評価を行うべきかを,検討していくことになります。
その際には,税理士や会計士といった税務の専門家の助けが必要になるでしょう。
摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,事業承継に関するご相談は,
大阪北摂法律事務所まで。
もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。
お気軽にどうぞ。