2014年6月4日水曜日

親権について教えてください

未成年の子の親権は,離婚に際して取り決めておかなければならない事項です。

親権とは,未成年の子を監護・養育し,財産管理を行い,必要な場合には法定代理人として法律行為を行う権利であり,またこれらは親権者の義務でもあります。



もっとも,親権者と身上監護を行う監護権者が別々になる場合もあります。
財産管理については父親が行うけれども,子の養育については母親が面倒を見た方がよい,という場合には,親権者は父親,監護権者は母親,と定めることもできます。
また,監護者が親戚など,父母以外になるようなケースもあります。
児童福祉施設が監護者となる場合もあります。

婚姻中の夫婦は,未成年の子に対して共同で親権を行いますが,離婚する場合は,どちらかを親権者と定めなければなりません。

協議離婚の場合にも,親権者を取り決めていなければ,離婚届そのものが受け付けられません。
すなわち,離婚することについて夫婦で合意ができていたとしても,未成年の子の親権者をどちらにするかについて,折り合いが付かない場合には,協議離婚をすることはできません。

したがって,親権について争いがある場合には,おのずと裁判上の手続を利用することになります。

一般的には離婚調停の申立をして,その調停中で親権の話し合いをすることになります。
調停における合意ができなかった場合には,離婚訴訟の中で,あわせて,親権をどちらにするか判断して貰うことができます。

なお,子どもが生まれる前に離婚が成立した場合には,親権者になるのは母です。
この場合,親権者を父親に変更することも可能です。
協議によりまとまらない場合には,親権者指定の調停,調停でもまとまらなければ親権者指定の審判を申し立てることになります。

裁判所が離婚訴訟の中で,あるいは親権者指定の審判の中で親権者を決定する判断基準は,次のような事項です。
これらを総合考慮して,未成年の子にとって相応しい親権者を定めることになります。

・ 現に子どもを監護養育しているのはどちらか
・ 父母の状況
  心身の状態
  生活状況
  監護能力
  経済状況
  住居
  教育環境
  子に対する考え
  従来の監護 など
・ 子の状況
  年齢・・・乳幼児であれば,母親が親権者となりやすい
意向・・・ある程度の判断能力のある子の意向は尊重されます
  性格
  発育状況
  現在の環境
  環境の変化への適応能力
  これまでの父母との関わり など
・ その他の事情
  祖父母 など

最終的には,子の福祉にとって最適なのは,親権者をどちらにすべきかという観点から,これらの事情を総合的に考慮して判断することになります。

なお,父母の経済力は決定的な要素とはなりません。
養育費によって,経済的不均衡は解消できるからです。

また,有責配偶者であるから親権者となれない,というわけではありません。

親権は,子のその後の人生に大きく影響しますので,慎重に決めるべきでしょう。

なお,一度決めた親権者を変更することも可能です。
親権を決めた時の事情が変わり,親権者の定めを維持することが不合理である場合には,親権者変更の調停を申し立てることになります。

ちなみに,親権者が死亡したからといって,当然にもう一方の親に親権者変更が認められるわけではありません。
事情を考慮すると,実際に元親権者の近くで子の面倒を見ていた人を,未成年後見人に選任した方が子の福祉に資する場合も多いため,簡単に遺伝上の親であるという事情だけで,親権者変更が認められる訳ではありません。




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