後見人に選任されたものの、本人のために何をすればよいのでしょうか。
家族が後見人に就任する割合は、減ってはきましたがまだ多くあります。
そのきっかけは、本人の銀行預金を自由に下ろせなくて困って、というようなことも多いようです。
後見開始により、本人(被後見人)の財産管理を後見人が行えるようになるのは事実ですが、後見制度が、後見人は、これで本人の財産を自由にできる、と喜んでいるわけにはいかないことはいうまでもありません。
後見人の役割は、本人の身上監護と財産管理です。
適切な本人の身上監護を行うために、本人にとって最適な介護・福祉サービスの利用を行ったり、場合によっては、本人の居所の変更を決める必要も出てきます。
また、財産管理権があるというのは、後見人が自分のために自由にお金を使ってよいというわけではありません。
あくまでも、本人のために、本人の財産を管理するのです。
これらの後見人の業務について、裁判所は、監督します。
後見人に就任した際には、本人の財産について速やかに調査を行い、1か月以内に財産目録を提出することが求められます。
そのほか、本人が相続人となる相続があり、財産を承継したときなどにも報告の義務があります。
療養看護や、年間収支計画などを作成する必要もあります。
また、後見人の業務について、裁判所は、一定の期間ごとに報告することが義務付けられています。
場合によっては、適切に取消権を行使する必要もあります。
これらの業務は、あくまでも本人のためであり、可能な限り本人の意思に沿って行うべきであると考えられています。
専門職でない家族には荷が重く、また十分に行うこともなかなか期待できないため、家族が後見人の場合には、専門職の後見監督人を選任するというような運用が多くされるようになっています。
もちろん、近年、専門職後見人による横領等の不正行為が取りざたされており、同じ専門職である私としても、心が痛みますが、親族後見人による不正行為もそれ以上に多い、というのが現状です。
その点をふまえ、成年後見を検討するときは、何がなんでも自分が後見人になりたい、と考えるのではなく、本人の利益と、後見業務の負担を考えて、最適な選択肢として最初から専門職を後見人候補者とする選択肢も考えるべきでしょう。
もちろん、親族間に本人の財産や身上監護をめぐって争いがある場合は、申立人がそのまま後見人に選任されることはありませんし、申立代理人である専門職弁護士を候補者としても、後見人に選任されることはありません。
後見人は、本人のために職務を行う、中立の立場の人間であることが要求されるからです。
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