2014年6月26日木曜日

未払い賃金の付加金請求について教えて下さい

未払いの残業代等賃金の請求には,付加金というものがあります。

付加金は,労働基準法114条に定められています。



第114条
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第37条第7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。

付加金が認められる未払い
・ 解雇予告手当(20条)
・ 使用者の責に帰すべき休業の場合の休業手当(26条)
・ 残業代(37条)
・ 休日手当(37条)
・ 深夜手当(37条)
・ 有給休暇中の賃金(39条7項)


付加金として認められるのは,未払い賃金と同額です。
したがって,会社が未払でいた賃金は,遅延損害金とともに,付加金までもつくので,2倍以上になるということになります。

労働基準法は,賃金の未払いに対して,厳しい姿勢であることが分かりますね。

もっとも,付加金の支払いを命じるかどうかは,裁判所の裁量になります。
したがって,付加金が認められる場合もあれば,ゼロとされる場合もあり,認められる場合でも一部だけ,ということもあります。
実際には,かなり悪質なケースにおいて,付加金の支払いが認められています。


付加金が認められるのは,裁判所が命じた時,ということになります。
したがって,裁判手続を利用せずに未払い賃金を請求する場合には,付加金を請求しても認められることはありません。
もちろん,使用者も,求められても支払う必要はありません。


訴訟手続にて判決に至った場合には,付加金の支払いが命じられる可能性があります。


それでは,労働審判の場合はどうでしょうか。
労働審判で判断をするのは,労働審判委員会であり,裁判所ではありません。
労働審判委員会は,労働審判官1名と労働審判員2名からなり,労働審判官は地方裁判所の裁判官のなかから指定されます。
また審判の場所も地方裁判所です。
しかし,審判を行うのはあくまでも労働審判委員会であるため,付加金の支払いを命ずることはできない,と考えられています。


ここで問題になるのが,「ただし書き」の部分です。
付加金の請求は,違反のあった時から2年以内に請求しなければならない,とされていますが,これは,消滅時効期間ではなく除斥期間とされ,時効の中断が認められません。


そのため,訴訟を提起するまでに時間をかけていたのでは,認められる付加金がどんどん減ってしまうことになります。
したがって,過去の部分の未払い賃金を請求したい場合には,労働審判を飛ばして訴訟を提起した方が良い場合もあります。


なお,未払い賃金の請求権の時効は,未払いの時から2年間です。
そして,請求を行った時から半年以内に訴訟を提起すれば時効中断が認められます。
また,労働審判に対して適法な異議の申し立てがあった場合には,審判申立ての時点で訴訟提起があったものとみなされることにより,時効中断が認められます。
そのため,付加金の請求できる範囲と,未払い賃金の認められる範囲は,ずれることになります。


上述の理由から,労働審判にて付加金が認められることはありませんが,訴訟を見据えているのであれば,労働審判を挟む場合であっても,審判申立て段階で付加金の請求はしておきます。
審判への異議申立により,審判申立て段階で,付加金の請求がなされたことになり,そこから遡る2年分の付加金請求が認められる可能性が出ます。



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