労働者にとって,適正な賃金の支払いを受けることが出来ないことは,日常生活の危機に直結する切実な事態であるといえます。
ところが,時間外労働に対する手当ての支払いを受けることができなくても,労働者は「がまん」してしまうことも往々にしてあります。
基本給については一応受け取っているからでしょうか。
そのため,残業をしているにもかかわらず,残業代が支払われない,残業代は支払われることになっているが,事実上「サービス残業」が求められている,という事態が発生することもあります。
適正な残業代が支払われていないケースの中には,労働時間の管理が適正に行われていないケースも多く存在します。
タイムカード等で,会社が労働者の労働時間を把握している場合は,一応,労働者がどれだけの時間外労働をしかたを計算することができます(この場合も,サービス残業の問題は解消されませんが)。
しかし,そのような管理が行われていない会社も多く存在します。
会社が労働時間を把握できない場合には,適正に支払われなかった時間外労働賃金の請求をすることは出来ないのでしょうか。
いいえ,そんなことはありません。
時間外労働賃金を請求するにあたって,会社が把握している労働時間だけが,証拠としての価値を認められるわけではありません。
本当の労働時間が分かる証拠を,労働者の側で残しておくと,残業代の請求の際には有効な証拠となり得ます。
たとえば,日記や手帳などに出退勤の時間を記録しておいたり,メールで必ず出退勤を報告するような形式になっていれば,労働時間を把握することはできます。
(もちろん,信用性の問題はありますが。)
このような記録が一切なく,記憶のみで残業代を請求することはできるでしょうか。
例えば,定時の退社時刻は午後5時だけれど,平均すると実際の退社は8時くらいにはなっていたはず。
などという記憶はあるけれども,証拠は何も残っていない,という場合などがあると思います。
証拠がない場合に,残業代を請求することは,困難ではあります。
使用者側には,労働者の労働時間を把握する義務がありますが,その義務を果たしていなかったからといって,労働者のいいなりの労働時間が認められるわけではありません。
もちろん,同僚の証言などにより,慢性的に残業を行っていたことなどが明らかになれば,一定程度の残業代が認められる余地もありますが,後からの記憶では,なかなか請求は認められにくいのです。
したがって,労働者は,日頃から自分の労働時間を把握するようにすべきでしょう。
会社にタイムカードがあり,サービス残業の実態がないのであれば,それでも良いかも知れませんが,いざというときに,会社がその労働時間を開示してくれなかったり,改ざんされてしまったりする可能性もゼロではありません。
よって,自分でも日頃から労働時間を把握すべきであるといえます。
また,使用者は,タイムカードの導入などによって,労働者の労働時間を把握するようにしておく必要があります。
もちろん,賃金の未払いなどといった問題を,そもそも起こすべきではないでしょう。
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