2014年3月7日金曜日

民事再生手続について

民事再生手続に関するページです。
ここでは個人の民事再生を扱い,法人の民事再生については,対象外とさせていただきます。
※ 2020年7月1日より、民事再生手続の受任を控えさせていただきます。現在お引き受け中の民事再生手続については、もちろん責任をもって対応させていただきます。




1 民事再生手続とは

負債の状況から考えて,そのまま支払って行くことが困難な債務者が,その支払い金額や方法の変更を行うための裁判手続です。
例えば,1000万円の借金があって,現在の収入状況からすればとても支払えないけれども,200万円なら支払っていける,という場合には,民事再生手続が使えるかも知れません。

破産手続は,手続開始決定時の資産以上のものを配当する必要がないのに対し,民事再生手続においては,手続開始決定時より後に得た財産からも支払いをする可能性が高いことが大きな違いです。
一方,破産手続においては持ち家などの重要な資産を守ることは出来ないのが原則ですが,民事再生手続においては,重要な財産を保持できる可能性もあります。

2 個人の民事再生手続の種類

個人用に用意された民事再生手続には,小規模個人再生と,給与所得者再生手続があります。
いずれも,負債総額が5000万円以下※1の場合に利用できる手続です。
負債総額が5000万円を超えた場合には,個人向けに用意されたこれらの再生手続ではない,通常再生手続となり,費用なども大きく変わってきます。

ここでは,小規模個人再生と給与所得者再生について紹介します。

(1)共通した手続の流れ

 申立てに向けた準備
 ↓
 申立て(個人再生委員の選任※2)・開始決定
 ↓
 債権確定の為の手続・財産確定のための手続
 ↓
 再生計画案の提出
 ↓
 再生計画案の認可決定
 ↓
 再生計画案に従った弁済

(2)小規模個人再生手続と給与所得者再生の違い

どちらも,将来的に安定した収入が見込まれなければ,再生計画案を作ることが出来ません。
給与所得者再生の場合には,その要件は厳しめで,給与またはこれに準ずるような安定した収入が必要となります。

小規模個人再生手続の認可の要件として,債権者の一定割合の消極的賛成(反対しないということ)が必要となります。※3
それに対し,給与所得者再生の場合には,債権者の賛成等は必要ありません。極端な話,すべての債権者が反対していても,認可される可能性もあります。
一方,給与所得者再生を使った場合は,破産手続において免責決定を受けたのと同様,計画認可決定時から7年間は,免責を受けられなくなるという不利益があります。
また,給与所得者再生の場合は,計画による弁済額について,収入や家族構成などから計算される可処分所得2年分以上が要求されます(後述の最低弁済額及び清算価値との比較で,一番高い金額を支払うことになります)。

3 民事再生手続の注意点と住宅資金特別条項


(1)最低弁済額

再生債権額により最低弁済額が決まっおり,この最低弁済額を下回る再生計画案は認可されません。

再生債権額(A)
最低弁済額(B)
100万円以下
(A)全額
100万円~500万円
100万円
500万円~1500万円
(A)×20%
1500万円~3000万円
300万円
3000万円~5000万円
(A)×10%


(2)清算価値保障の原則

清算価値というのは,破産したときに配当に回されるべき資産の価値というイメージです。
民事再生手続では,破産した時に配当する金額以上の弁済をする計画を立てなければ,認可されることはありません。

したがって,たとえ前述の最低弁済額を上回っていても,清算価値を下回る計画案は認可されません。

(3)住宅資金特別条項

住宅ローンの支払いを続けている場合には,住宅資金特別条項を使うことが出来る場合があり,これを使えば,持ち家を維持することが出来る可能性があります。※4,※5
ただし,維持したい不動産が居住用であること,住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと,などが要件となります。

住宅資金特別条項を使うことによって,住宅ローンは今までどおり支払いを続ける一方,住宅ローン債権は,再生計画によって権利変更を受けることが無くなります。

住宅ローンの残高が不動産の価値を上回る場合には,あまり問題がありませんが,住宅ローン残高が不動産の価値を下回る場合には,清算価値保障の原則との関係で,問題となることがあります。※6

4 民事再生手続の費用

(1)弁護士報酬(基本料金)

弁護士報酬
発生時
着手金
22万円
受任により発生
申立報酬金
11万円
申立により発生
計画認可報酬金
11万円
計画認可決定により発生

住宅資金特別条項を利用する場合,申立報酬金に5万円を加えさせて頂きます。

過払回収報酬 回収額の15%

これらは,小規模個人再生,給与所得者再生の場合の,基本の料金で,難事件の場合には基本料金以上の料金を提案させていただきます。
また,債務総額が5000万円を超える場合の,通常再生手続についても相談をお受けしますが,弁護士報酬額は大きく異なりますのでご了承下さい。

いずれも消費税を別途頂きます。

(2)実費

個人再生委員が選任されるか否かで,変わってきます。
個人再生委員が選任されない場合は,通常数万円です。


5 過払い回収との関係

民事再生手続開始の申立に際しては,高利の債権者について,利息制限法の制限利率への引き直し計算を行った上で,債権額を予め調査することが求められます。
そのため,高利の債権者の取引履歴を取り寄せ,必ず引き直し計算を行うことになります。

引き直し計算を行った際に,過払い状態になっていた場合には,過払い回収を試みます。

過払金が返ってくると,費用や,計画弁済額に充てることが可能になりますので,出来る限り回収をした上で,申し立てることになります。


(注記)

※1
住宅資金特別条項を使う場合の,住宅ローン残高は負債総額に含みません。
したがって,住宅ローンが4000万残っていて,その他の負債が1200万円ある,といった場合でも,住宅資金特別条項を使う条件が整っており,その他の要件も満たす場合には,小規模個人再生,あるいは給与所得者再生の手続が利用できる可能性があります。

※2
個人再生委員が裁判所により選任されるかどうかは,地方裁判所ごとに異なるようです。
大阪地方裁判所の場合には,個人再生委員が選任される場合はそれほど多くないのですが,一定の場合には選任され,その場合には費用が30万円ほど多くかかってしまいます。
東京地方裁判所では,全ての申立てに対し,個人再生委員が選任されます。

※3
頭数で,半数の債権者が反対すると,再生計画は認可されません。
債権に応じた議決権の数で,半数を超える反対があると,再生計画は認可されません。
例えば,10人の債権者のうち,4人までは反対があっても大丈夫ですが,5人の反対者がいると認可されません。
総額1000万の議決権(再生債権総額1000万円)のうち,500万0001(円)以上の反対があると,認可されません。

※4
住宅資金特別条項を使わなければ,抵当権の付いた不動産は債権者により抵当権が実行されて競売にかけられてしまうでしょう。

※5
住宅ローン等抵当権の付いていない不動産の場合には,清算価値保障の原則さえ満たせば,特別条項を使わなくても不動産を維持できるはずですが,実際には清算価値が高すぎて再生計画案が立てられないという場合が多いと思います。
任意整理で支払えるなら任意整理をし,無理ならば不動産を処分した残金で,残りの債権者への支払いをする,という方法しかないでしょう。

※6
住宅ローンが500万円しか残っていないのに,土地建物の価値が2500万円はある,という場合には,住宅ローン残高を超える2000万円の部分は,清算価値としてカウントされてしまいます。
そのため,2000万円を超える弁済計画を立てなければならず,※5と同じような状況になります。

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