2014年3月24日月曜日

破産手続にデメリットはありますか

破産手続(自己破産)というと,みなさんはどのようなイメージを受けるでしょうか。

破産したら人生が終わり,といったイメージを受けませんか?
私も,専門家になる前には,そのような印象を持っていました。
(正確には,倒産法についてロースクールで勉強し,初めて破産とは何なのかを知ったのです。)

破産手続は,もちろん,そのような手続ではありません。
個人の自己破産は,人生の再出発のために用意されたプログラムの一つである,と言えます。
(もちろん,破産手続だけでは,生活を立て直すことの出来ないケースもあります。)

しかし,破産手続においては,デメリットも存在します。
ここでは,それを紹介しましょう。




(1) 資産の処分

破産手続のために,家財道具一式まで全部が処分されてしまいゼロからのスタートを強いられる,ということはありませんが,やはり保持し続けることのできる資産には限度があります。
保持し続けることが出来るのは,自由財産と呼ばれる財産のみです。
(破産手続開始決定後に獲得した資産は,「新得財産」として破産手続とは無関係ですので,原則として保時可能です。)

例えば,持ち家は原則として維持し続けることは出来ません。
住宅ローンが残っていれば,住宅ローン債権者が抵当権を実行するでしょうし,そうでなくても,売却換価した上で,配当に充てられます。
そのため,持ち家のまま破産手続を行うことは出来ません。

また,自動車なども,一定程度の価値があると,処分しなければならないのが原則です。
(生活にどうしても自動車が必要な地域などで,少々基準値以上の価値がある車を維持したい場合,基準値を超えた金額相当について,新得財産から破産財団に現金を納めるなどといった方法で,維持できる場合もあります。)
解約返戻金のある生命保険なども同様です。
(持病の関係で,今後,生命保険加入が難しい事情があるなどの場合は,同様に価値相当額に対する手当てなどを条件に,維持が可能な場合もあります。)

以上に述べたとおり,例外が認められる場合(自由財産の拡張が認められる場合)もありますが,原則として大きな資産を維持することは出来ません。

破産手続は,資産を債権者に平等に配当する手続ですので,当たり前といえば当たり前ですが,手続選択に当たって一番ひっかかる部分であることは確かでしょう。

なお,個人再生手続であれば,持ち家を維持できる場合もあります(絶対ではありません)。
したがって,どうしても維持したい資産がある場合には,個人民事再生が手続の候補になります。


(2) 資格の制限

破産手続中に,資格が制限されるものがあります。

多くあるケースでは,警備員や保険外交員など。
弁護士も,制限される資格です。

破産手続と並行して行われる免責の手続により免責決定が確定することにより,資格の制限はなくなります。
したがって,通常は数か月の間だけ,資格が制限されることになります。

数か月とはいえ,その資格を生計の基礎としている方にとっては大問題でしょう。
そのため,資格制限が障害となる場合には,個人民事再生を選択肢として考えることもあります。


(3) 官報公告

破産手続をとると,開始決定時と免責許可決定時に官報公告されます。

官報を毎回チェックする人はあまりいないでしょうが,これを調べれば破産をした人の名前と住所を知ることができます。
官報公告を見て,ヤミ金などが接触を図ってくる可能性は,ゼロではありません。


(4) その他

市町村役場の破産者名簿に登録され,市町村発行の身分証明書に,破産者である旨が記載されます。
これも,破産手続中のみです。
そもそも,名簿は誰もが見ることのできるものではありませんし,市町村発行の身分証明書が求められることがほとんどないため,実質的不利益はないでしょう。

免責決定を受けた場合は,7年間は再度の免責が制限されます。
例外はありますが,一度破産して免責される以上,生活を再建できなければ意味はない,ということです。

消費者金融等からの借入れが出来なくなります。
これは,他の債務整理手続(任意整理・個人再生等)を取ったときでも同じですが,信用情報機関に登録されるため,再度の借入は,一定期間出来なくなります。
(なお,過払い回収だけを行った場合には,信用情報に傷は付きません。)
この期間は,業者ごとに対応が異なるようで,一般的には5年から7年程度と言われています。
普通の貸金業者からは貸付を受けることが出来なくなった者,ということでヤミ金などからはターゲットにされやすいため,破産後の生活には注意が必要です。

主債務者が破産手続をとって免責をうけても,保証人までが免責を受けることはありません。
通常は,主債務者の支払停止は期限の利益喪失を招きますので,保証人に対して一括請求されることになります。
保証人に支払い能力がない場合には,保証人自身も何らかの債務整理手続をとる必要が生じます。


(5) よくある誤解

資格制限等について
これらは,ずっと制限され続けると思っている人も多いですが,免責が確定するまでのことです。
したがって,通常の破産手続であれば,数か月程度のことになります。

戸籍等に破産歴が掲載されることはありません。

勤務先が債権者または債務者でない限り,勤務先に連絡が行くことはありません。

免責について
浪費やギャンブルと行った借入原因は,免責不許可事由とされていますが,これらがあったから免責されない,というわけではありません。
極端なものは免責不許可とされますが,そうでなければ,裁量免責といって,結局免責されるのが通常です。
(ただし,借入原因に免責不許可事由がある場合には,資産がなくとも,この調査のために,管財手続が選択される可能性はあります。)



以上の通り,破産手続にデメリットはない,とは言えませんが,予備知識なしに「破産」と聞いて思い浮かべる印象からはほど遠いのではないでしょうか。
したがって,合理的な判断の下,債務整理の一方法として破産手続を選択することは,その人の人生にとって大変なデメリットをもたらすと考えて,間違いありません。


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