2014年7月3日木曜日

養育費はどうやって決まるのですか

養育費とは,子どもが社会的に成熟するまでに必要となる費用であり,離婚した夫婦の間の子の場合には,子を養育しない方の親が,子を養育する方の親に対し,支払うことになる費用です。



1 養育費の金額

養育費の金額については,話し合いさえつけば,自由に決定することも出来ます。

養育費は,離婚調停の際に一緒に決めることも出来ます。
離婚訴訟の付帯請求としても,求めることも出来ます。

養育費についてのみ,調停を求めることも出来ます。
調停が成立しなかった場合には,審判で決まることになります。

養育費の計算については,裁判所による養育費の算定表が参考になります。
外部リンク 養育費算定表

基本的には,子を養育する側の親の年収,もう一方の親の年収と,子の年齢によって,一月あたりの養育費が決まってきます。
したがって,特別な事情がなければ,裁判所の判断となる場合には,この算定表の範囲で,養育費は決まってくると思った方が良いでしょう。


2 取り決めた養育費が支払われない場合は

協議離婚の際の取り決めであれば,強制執行認諾条項つきの公正証書にしていない限り,いきなり強制執行はできませんので,裁判手続を行う必要があります。

調停・審判・訴訟の結果は,債務名義となるので,養育費の取立てを,強制執行の方法で行うことが出来ます。

養育費請求の強制執行の場合,将来分にわたる差押えが許されており,また給与差押えの場合には,2分の1相当額までもが差押えできるということになっています。
(通常の給与差押えの場合には,4分の1)

養育費は扶養義務に基づき,子の生活のために必要とされる費用ですので,裁判手続き上も厚く保護されていると言って良いでしょう。


3 養育費の支払いに困った時は

このように,取り決めた養育費は,子が成熟するまできちんと支払われなければならない,というのが原則です。

しかし,子の年齢によっては,子の成熟までの年数は相当長期間となり,この間に,離婚当時の状況が変わっていない,ということはほとんどあり得ないでしょう。

そのような場合,元夫婦間の話し合いで,養育費の増減を決めることはできます。
しかし,実際には,別れた後も相手の状況をしっかり把握して,状況の変化があるたびに養育費の増減を話し合う,などという夫婦はそれほど多くないでしょう。
(そもそも,最初から養育費を決めていない夫婦の方が多いのですから。)

実際には,養育費の支払いを行っていた方の親が,生活状況の変化(自分自身が再婚して扶養家族が増えた,など)により,約束の金額を払えなくなった,というような場合が多いと思います。
また,養育費を受け取っていた親が再婚して経済的に余裕が出来たのに,今までどおりの養育費を支払い続けるのは納得いかない,という場合もあるでしょう。

そのような場合には,養育費変更の調停を利用することが出来ます。


4 さいごに

離婚した夫婦で,子を養育する方の親が養育費を受け取っている割合は,日本ではかなり低いと言われています。

子を養育する方の親が経済的に恵まれており,もう一方の親に頼る必要がないのであれば,問題ないかも知れませんが,現状ではそのようになっていません。

特に,母子家庭の貧困率は,そうでない家庭よりもかなり高いというのが実情です。
幼い子を養育しながら,生活に十分な収入を得る働き方をすることは,現実的には困難であり,そのための公的な手当などもないわけではありませんが,十分とは言えません。
その結果,母子家庭が貧困に陥るという事態になっているのです。

養育費を受け取れば全て解決する,という問題でもありませんが,ちゃんと養育費の話し合いをせずに別れてしまったばかりに,非常に苦労している,という家庭はたくさんあります。

また,別れた元配偶者に子を面会させたくない,として養育している側の親が,養育費の受取を拒否しているケースもあるようです。
これが,果たして子の福祉のためになっているのかは,非常に疑問です。

離婚に当たっては,未成年の子の親権を決めなければならないのですから,それに併せてかならず養育費の話し合いを持つようにすべきでしょう。
そして,養育費の支払い義務のある親は,責任を持って,子が成熟するまで養育費を支払い続けるべきでしょうし,受け取る権利のある親は,きちんと請求するようにすべきでしょう。

なお,離婚成立前の別居状態のときの養育費については,婚姻費用という形で請求することになります。



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