2014年7月22日火曜日

プロバイダ責任制限法

プロバイダ責任制限法を知っていますか。
正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」と言います。



この法律は、「特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定め」ています(第1条)。

インターネットトラブルにより、自分の権利を侵害された被害者は、誰に対して損害賠償を請求できるのでしょうか。
もちろん、その権利を侵害する情報を書き込んだ張本人に対して請求することはできるでしょう。
しかし、どこの誰がその情報を書き込んだのか、特定することはそれほど簡単ではありません。

それでは、そのウェブサイトを提供しているプロバイダに対して、損害賠償を請求できるでしょうか。
プロバイダが、権利侵害者に情報を発信する機会を与えなければ、権利侵害は行われなかったはずだ、という理由は一応成り立ちますが、さすがに無理が大きいでしょう。

この法律では、プロバイダ自身の責任は第3条で制限されています。
第3条は長い文章ですが、まとめると以下のような意味になります。

第1項は、被害者からの責任追及を制限する条項です。

1 インターネット通信により他人の権利が侵害されたときは、そのプロバイダは、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定多数の者に対する送信防止措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次のいずれかに該当するときでなければ、賠償責任を負わない。
①  プロバイダが当該インターネット通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
②  プロバイダが、当該インターネット通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

第2項は、加害者となりうる者の情報を、削除等した場合に、加害者側からの責任追及を制限する条項です。

2 プロバイダは、インターネット情報の送信を防止する措置を講じた場合において、その措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、その措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次のいずれかに該当するときは、賠償責任を負わない。
①  プロバイダが当該インターネット通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
②  インターネット通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、侵害情報の送信を防止する措置を講ずるよう申出があった場合に、プロバイダが、当該侵害情報の発信者に対し防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から7日を経過しても防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

つまり、原則的にはプロバイダの責任を追及することはできません。

しかし、第3条の条項からも分かりますが、被害者には、被害の防止や損害賠償請求のために、プロバイダに対して、権利を侵害する情報の発信者に関する情報開示を求めることができます。

それは、第4条に規定されています。
第4条をまとめると以下のような内容になっています。

1 インターネット通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該インターネット通信のプロバイダに対し、当該プロバイダが保有する当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求することができる。
① 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
② 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
2  プロバイダは、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
3  第1項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
4  プロバイダは、第1項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該プロバイダが当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。

このようにして、プロバイダから提供される発信者情報をもとに、情報の発信者に対して損害賠償請求が可能となるのです。

ただし、第4項からも分かるように、プロバイダは発信者情報開示請求を拒否したからといって、被害者から損害賠償請求を受けることは、原則としてありません。
そのため、被害者にとっては、必ずしも使い勝手の良い法律であるとは言えないでしょう。

任意での開示請求が認められない場合には、発信者情報の開示請求のために、まず、当該ウェブサイトについて保全手続を行ったうえで、当該プロバイダに対して情報開示請求の訴訟を行う必要があります。
そこで得られた情報に基づいて、発信者に対して損害賠償請求を行うことになります。

損害賠償請求において、発信者情報の開示のために要した弁護士費用も含めた費用の一部は、損害として認められる傾向にありますが、それでも、費用と時間がかかる手続であるという事実は、否めないでしょう。




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