2014年7月30日水曜日

少年事件の手続きの流れ

未成年者が非行を行った場合に,どのような手続きをとることになるのでしょうか。

法律上,少年は20歳に満たない者をいい,男性,女性は関係なく,「少年」です。



非行少年とされるのは,罪を犯した「犯罪少年」,14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした「触法少年」,その他,一定の不良行状があって犯罪少年や触法少年になるおそれのある「虞犯(ぐはん)少年」があります。
犯罪少年と触法少年は,年齢による違いと考えれば良いでしょう。

法律上,少年は取り締まりの対象ではなく,「保護」の対象であるという考えのもと,成人とは異なる手続きが用意されています。
成人とは異なり,実際に犯罪行為を行っていなくても保護の対象となる(虞犯少年),というのが一つの特徴です。

以下は,犯罪少年の手続きについて,考えます。

(1) 捜査

14歳以上の少年が犯罪行為を行った(疑いがある)場合には,捜査段階では成人と同じような刑事手続が用意されています。

少年は,「被疑者」として扱われ,必要な場合には,逮捕勾留がされますし,勾留延長もあり得ます。

勾留の場所としては,少年鑑別所とするのが原則です。
しかし,実際には,警察署の留置施設に勾留されることがほとんどです。

また,少年の場合には「勾留に変わる観護措置」が用意されており,この場合には必ず少年鑑別所に収容されます(少43条1項)。
後述の「観護措置」と区別するために,一般にこのように呼ばれています。
「勾留に変わる観護措置」には,10日間の期間制限があり,勾留の場合と違って延長はできません。

少年の被疑者については,なるべく身柄の拘束を避けなければならないとされていますし,やむを得ず身柄拘束する場合も,なるべく短期間でなければならないと考えられています。
勾留は,やむを得ない場合でなければ,請求できないとされています(少43条3項)。

また,少年に余罪がある場合にも,なるべく余罪での再逮捕などの手続を行わず,速やかに後述の家裁送致をしたうえで,余罪の取り調べなどは,家裁送致後に行われることもあります。


(2) 家裁送致

犯罪少年は,検察官により全件が家庭裁判所に送致されることになります。
そして,家庭裁判所における少年保護手続としての少年審判が始まります。

成人の事件では,検察官が,起訴するかどうかも含めて判断しますが,少年事件ではそのような判断はありません。

もしも,身柄拘束の期限までに必要な捜査が終わっていない場合には,身柄を解放したうえで,在宅事件として捜査を続け,その場合もかならず家庭裁判所に送致しなければなりません。

少年審判は,少年の住所地を管轄する家庭裁判所で行われるのが通常です。
よって,地元から遠征して他県で犯罪行為を行い,身柄拘束されてしまった少年も,遅くとも家裁送致後には,地元に送られることになります。

家庭裁判所では,少年審判が開かれますが,それまでの間に調査官による調査などが行われます。
調査官の調査の対象は,少年自身や家族,学校関係,交友関係,社会関係など多岐にわたります。
この間に,少年の身柄を拘束しておく必要がある場合には,少年鑑別所において,「観護措置」がとられます。
(観護措置とは正確には,在宅にて調査官の観護に付すという在宅手続も含むのですが,通常観護措置といえば,鑑別所における観護措置を指します。)

観護措置の期間は2週間で,必要に応じてさらに2週間の延長がなされます。
この間に,少年審判の日時が指定されます。

在宅の場合は,少年審判までの期間に制限はありません。


(3) 少年審判

少年に対して,審判を開始することができない場合を除き,審判の開始決定をします。
少年に対する処遇としては,次のようなものがあります。

・ 試験観察

保護処分を判断するための時間がさらに必要な場合には試験観察が選択されることがあります。

試験観察は,少年に対する終局処分ではなく,中間処分です。

少年を自宅に居住させて行う在宅の試験観察のほか,民間の人や施設に指導をゆだねて観察する補導委託もあります。

試験観察期間は在宅の場合でも3~4か月,補導委託の場合はそれよりも長期に及び,場合によっては1年を超えることもあります。

試験観察期間が終わると,家庭裁判所から終局審判の期日が指定され,少年に対する処遇がきまります。


・ 不処分

少年に対して保護処分を行う必要がない場合に選択されます。
従前の保護観察を取り消すことなく続けることが選択される場合にも,不処分となります。


・ 保護観察

少年に対する保護処分の1つで,保護観察所の行う指導監督および補導援護により,社会内において少年の改善更生を図るものです。

保護観察の期間は,原則,少年が20歳になるまでですが,少年が20歳になるまでの期間が2年に満たない場合には,2年間となります。

保護観察においては,少年には遵守事項が課せられ,それを守らなければ少年院送致となる可能性もあります。


・ 少年院送致

少年に対する保護処分の1つで,施設内で,生活指導,教科教育,職業補導,情操教育,医療措置等を行うことにより,少年を矯正することを目的とするものです。

少年院には,初等少年院,中等少年院,特別少年院,医療少年院があり,審判における少年院送致決定の際に,併せて送られる少年院も指定されます。

初等少年院と中等少年院は,主に年齢の違いであり,特別少年院は犯罪傾向が進んでいる少年について選ばれます。
医療少年院は,心身に著しい故障がある場合に選択されます。

少年院における収容期間は,短期から,2年以上に及ぶ相当長期まであります。
通常は,1年程度の処遇計画が編成されます。

少年院における処遇が成功し,保護観察に付することが相当と認められる場合には,仮退院が許され,保護観察に付されます。
その後,保護観察を継続する必要がなくなったと認められると,正式に退院となります。


・ 児童自立支援施設など送致

保護処分の1つで,児童自立支援施設または児童養護施設に送致する決定です。
対象となるのは,18歳未満の者です。
これらの施設は,少年院とは違って開放された施設ですので,施設処遇といっても少年院とはだいぶ違います。

児童自立支援施設の場合には,自宅の保護者のもとから通うケースもあります。
少年の非行傾向は進んでいないものの,家庭環境に問題がある場合などに選択されます。

児童養護施設送致は,保護者のない少年,虐待されている少年などが対象となります。


・ 検察官送致

少年に対して刑事事件として扱うべきであると家庭裁判所が判断した場合には,検察官送致が選択されます。
一度検察官から家庭裁判所に送られた事件が,再び検察官に送り返されるので,逆送と呼ばれます。

故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であり,罪を犯した少年が16歳以上であった場合には,原則として検察官送致しなければならないことになっています。

逆送された検察官は,捜査を経て,原則として起訴を行い,通常の刑事手続に進みます。

ただし,その刑事手続においても,たとえば不定期刑の選択など,少年であることを考慮した修正が加えられています。

・ 児童相談所長など送致

これは,保護処分ではありません。
保護処分や不処分よりも,指導福祉機関の措置に委ねるのが適当であると判断される場合に選択されます。

具体的には,少年の非行性は強くないものの,家庭環境などの環境面が不十分であるため,継続的な指導が必要である場合には,都道府県知事または児童相談所長に対して送致されます。
都道府県知事が送致を受けても児童相談所に措置を委ねるだけで無意味ですので,実際には児童相談所長送致が選択されます。


少年事件における弁護士の役割については,記事を改めて解説したいと思います。



摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,少年事件に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。