ある日突然,警察に捕まってしまったという場合を想像してみて下さい。
身に覚えがない場合にはもちろん,自分に責任がある場合でも,捕まってしまうと,これからどうなってしまうのかといった不安はとても大きいものです。
逮捕されたら,弁護士を呼んで貰うことが出来ます。
これは,黙秘権の告知と同じく,被疑者の防御のために認められていますので,捜査機関からも弁護士を呼ぶかどうか聞かれると思います。
このときの選択肢としては,3つ考えられます。
① 呼ばない
② 知り合いの弁護士を呼んで貰う
③ 当番弁護士の派遣を依頼する
①で呼ばなかった場合,逮捕に続いて勾留された際に,被疑者国選対象事件であれば,国選弁護人が選任されますので,一人で戦い続けるということはありません。
しかし,逮捕はされたものの勾留されなかった場合や,勾留されたとしても被疑者国選対象事件でない場合には,(少なくとも被疑者段階では)国選弁護人は選任されないため,一人で事件に対処しなければならないということになります。
被疑者国選対象事件は,「法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を越える懲役若しくは禁錮に当たる事件」で,割合広い罪名をカバーしていますが,全てではありません。
被疑者段階を弁護人なしで過ごすのは,違法な捜査に対抗する手段もなく,厳しい追求により身に覚えの無い事実を自白してしまう,といった恐れなどもあります。
かならず弁護士を呼ぶ,という選択肢を選ぶべきです。
しかし,弁護士を呼んでも,弁護士に払う費用が用意できないかも知れない,という心配がありますね。
たしかに,来て貰った弁護士に対し,弁護人として活動してもらうためには,費用が必要になってきます。
知り合いの弁護士を呼んでも,依頼に至らなかった場合には,最初に弁護士を呼ばなかった場合と同様になります。
すなわち,被疑者国選対象事件であり,勾留された場合には国選弁護人が選任されますが,それ以外の場合には弁護人はつかないことになります。
③当番弁護士は,最初の1回の接見について,無料で行います。
知り合いの弁護士がいない,来てもらえなかったなどという時には,当番の派遣を依頼します。
ここで,これからの手続の見通しを検討のうえ,必要があれば弁護人として選任します。
弁護士費用が支払える場合には,通常の私選契約となります。
(ただし,弁護士も断ることはあります。)
しかし,弁護士費用が簡単に払えない人も多いので,その場合には刑事被疑者援助制度の利用をすることになります。
被疑者援助制度は,弁護士費用を日弁連から業務委託を受けた法テラスが立替える制度で,被疑者国選からもれた被疑者を救済する制度といえます。
弁護士費用の償還は,弁護人が償還不要の意見を出すと基本的に求められませんので,被疑者の負担はありません。
ただし,流動資産50万円以下などといった制限がありますので,誰でも使える訳ではありません。
(流動資産がある方は,通常の私選契約をして下さい。)
被疑者援助制度を利用して弁護士と契約した場合,勾留された後は,被疑事件が被疑者国選対象事件であるかどうかで変わってきます。
被疑者国選対象事件でない場合は,そのままその弁護士が私選弁護人として活動しますが,被疑者国選対象事件の場合には,援助は打ち切られ,その弁護士が国選弁護人に切り替えられて活動することになります。
被疑者にとっては,あまり変わらないイメージでしょう。
被疑者援助制度を利用したものの,勾留されなかったり,勾留されたものの身柄解放された場合には,そこで援助は終了になるため,通常は委任契約が終了します。
被疑者の立場で一番重大なのは身柄拘束されているかどうか,という点であることが多いので仕方ないかも知れませんが,経済的な裏付けのない被疑者に対する手当ては,身柄拘束されている事が前提となっている点は,少し残念ではあります。
在宅の事件であっても,弁護人の活動の余地が大きい事件は沢山あります。
せめて流動資産のある人は,弁護士をきちんと雇った方が良いですよ。
刑事弁護人の手続は,国選弁護制度とそれから漏れ落ちた救済すべき人を捕捉する制度などにより,大変わかりにくい制度となっております。
一応まとめてみました。
① 弁護人を呼ばない場合
①-1 勾留あり
【被疑者国選対象事件】 → 国選弁護人がつく
【それ以外】 → 弁護人なし
①-2 勾留なし → 弁護人なし
② 知り合いの弁護士を呼ぶ場合
②-1 委任契約締結 → その弁護士が私選弁護人として活動
②-2 委任契約なし
②-2-1 勾留あり
【被疑者国選対象事件】 → 国選弁護人がつく
【それ以外】 → 弁護人なし
②-2-2 勾留なし → 弁護人なし
③ 当番弁護士の利用
③-1 弁護人選任なし
③-2-1 勾留あり
【被疑者国選対象事件】 → 国選弁護人がつく
【それ以外】 → 弁護人なし
③-2-2 勾留無し → 弁護人なし
③-2 被疑者援助なし委任契約締結 → その弁護士が私選弁護人として活動
③-3 被疑者援助利用 → その弁護士が私選弁護人として活動
③-1 勾留あり
【被疑者国選対象事件】 → その弁護士が国選弁護人に切替えとなる
【それ以外】 → 援助利用による私選弁護人継続
③-2 勾留なし → 身柄解放により援助打ち切り,弁護人解任
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