2014年5月22日木曜日

消滅時効に気をつけて(2)

昨日の記事の続きです。

前回は,債権の種類によって消滅時効期間が異なることや,判決などの債務名義がある場合には,時効期間が10年間延びることなどを書きました。


昨日の記事はこちら。

さて,それでは時効を完成させないためにはどうしたら良いのでしょう。

一つはすでに出ています。
裁判を起こすこと。

判決などの債務名義を取れば10年間時効期間が延びるということは,時効中断の効果が認められるということです。

時効の中断事由としては,法律上次の3つが挙げられています(民法147条)。
① 請求
② 差押え,仮差押え又は仮処分
③ 承認

裁判を起こすことは,①請求にあたります。

どうして裁判を起こす必要があるのでしょうか。
請求書を債務者に送っただけでも,時効中断しても良さそうですよね。
それは,次の条文があるからです。

民法153条
催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

6か月以内に裁判を起こさなければならない,というのが民法で定められたルールです。
なお,裁判を起こしても途中で取り下げたり,訴えが却下されてしまったりしたら時効中断の効果は生じません(民法149条)。
訴えの却下とは,訴えが不適法な場合です。
(もちろん,請求棄却になった場合も,請求そのものが認められない,ということなので,時効中断の効力は認められません。)

その他の時効中断事由として重要なのは,債務の承認でしょう。

債務者が債権者に対して,その債権があることを認めた時は,時効が中断します。

時効の中断が認められると,そのときから時効期間の進行が始まることになります。
例えば,消滅時効期間5年の商事債権で,弁済期の過ぎているものについて,必ず支払います,という約束をすれば,債務の承認になるため,そのときからまた時効が進行します。
この場合は,判決などによる場合と違い,もとの消滅時効期間と同様に5年間です。

債務の承認があったかどうかは,しばしば争いになります。

口頭での支払い約束を取り付けたとしても,あとで否定されると,債務の承認が認められにくくなりますので,債権者としては,必ず書面など客観的な証拠を残すようにすべきです。
(債務の承認があったことは,債権者が証明しなければなりません。)

また,支払い方法などについて交渉を行っていた事実が,債務者による債務の承認と認められるかどうかはケースバイケースなので,債権者としては債務の承認に頼らずに,時効期間経過前(あるいは最期の請求から6か月以内)に速やかに訴訟を提起すべきです。

時効の管理はきちんと行いましょう。

未払いの売掛金について,毎月請求書を送るだけになっていませんか?
それだけでは時効の中断は認められませんよ。

回収すべき売掛金は,溜めずに回収するようにしましょう。


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