2014年5月23日金曜日

離婚に際して考えておくべきことを教えてください

離婚は,夫婦がただ別れることを合意すれば良い,という訳ではありません。

離婚に際しては,他にどういうことを考えておかなければならないのでしょうか。




1 親権

離婚の際には,未成年の子の親権を行使する者を決めなければなりません。
婚姻中は,父母が共同して行うことが原則です(民法818条)。
しかし,父母が離婚をすると,共同で親権を行うことができないため,どちらかを親権者と決めなければなりません。

協議離婚の際にも,親権者を定めていなければ,離婚届が受理されません(民819条1項)。
裁判上の離婚の際にも,必ず親権者が定められます(民819条2項)。

子の出生前に離婚した場合には,親権者は母になるのが原則です。
ただし,協議により父親を親権者と定めることも出来ます(民819条3項)。

親権を行う者は,子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負う(民820条)とされ,そのために必要な範囲での子の懲戒権もあり(民822条),子の居場所を定めるのも親権者です(821条)。
子の財産を管理し,子の財産に関する法律行為について子を代表するとされています(民824条)

このように,親権者は子に対する大きな権利を持っていますが,親権を行う方法が子の利益を害する場合には,親権を取り上げることも必要になってきます。

そのため,離婚の際に決めた親権は絶対ではありません。
子の利益のために必要があるときには,子の親族の請求により,家庭裁判所により親権者が他の一方の親に変更されることがあります(819条6項)。

法律上は,離婚の際に取り決めておかなければならないのは,未成年の子の親権者のみです。

なお,複数の未成年の子がいる場合には,それぞれにつき親権を行う者を決め,親権を行う者がまちまちになっても構いません。

以上が,必ず取り決めておかなければならない事項です。

しかし,共同生活で築き上げた生活をリセットするに際して,それだけで関係を終わりにすることは出来ません。


2 財産分与

離婚をした夫婦の一方は,相手方に対して財産の分与を求めることができます(民768条)。

これは離婚と同時に決めても構いませんし,離婚が成立した後に求めても構いません。
夫婦の協議でまとまらない場合には,裁判所に財産分与を求める調停を申し立てることになります(民768条)。
調停がまとまらない場合には,審判に移行し,裁判官により財産分与が決定されます。

なお,財産分与調停を申し立てることができるのは,離婚の時から2年間です。
期間には十分に注意する必要があります。

財産分与の対象となるのは,夫婦で築き上げた財産についてです。
したがって,婚姻前にそれぞれが持っていた財産や,婚姻中であっても,相続により得た財産などは,財産分与の対象にはなりません。

もっとも,例えば夫が働き,妻が専業主婦として婚姻生活を送ってきた場合には,離婚時の預金が全て夫名義であったとしても,それは夫婦で築き上げた財産として,財産分与の対象になります。


3 養育費

夫婦に子がいる場合には,子を養う親に対し,もう一方は養育費を支払わなければなりません。

養育費の金額は,子の年齢や,両親の年収などから決めることになります。

養育費は,子が一定の年齢になるまで支払うことになります。
通常は成人に達する20歳までと定めることが多いですが,これは夫婦間の協議により例えば22歳までとするとか,18歳までとする,という風に定めることが出来ます。

養育費に関しては,継続的な支払いの約束となるため,支払う方は滞納をしないこと,支払って貰う方は,滞納をさせないことが重要となります。

養育費の未払いに対する強制執行として給与差押えを行う場合,給与の1/2まで差押え可能になります(1/2が33万円を超える場合には,全額から33万円を除いた金額)。
これは,通常の給与差押えが1/4までと決まっていることからすると,支払う方には大きな負担となります。

生活状況が変わり,養育費の支払いが困難になった場合には,養育費減額調停の申立も可能です。


4 慰謝料

夫婦のどちらかが離婚原因を作った場合には,もう一方から損害賠償請求が可能です。

多くは不貞行為を原因とする慰謝料でしょう。
この慰謝料請求は,不法行為に基づく損害賠償請求であるため,損害及び加害者を知った時から3年以内に請求をしなければなりません。
ただ,通常は離婚そのものを損害と見るため,離婚成立から3年以内は請求可能です。


離婚に際しては,以上のようなことを考えておく必要があります。
もちろん,同時に決める必要があるのは,親権だけです。

しかし,その他の経済的要因の取り決めがまとまらないため,離婚の合意が出来ない,というケースもままあります。
このような時には,両者での話し合いには限界があることも多く,裁判所の調停手続などの利用を考えることになります。
そして,弁護士に相談することが,解決の早道であることは,少なくありません。


5 その他

婚姻の際に変更した氏は,元に戻ることが原則です(復氏)。
復氏した場合には,婚姻前の戸籍に戻ります。
ただし従前の戸籍が既に除籍になっていたり,戻ることを望まない場合には,新しく戸籍を作ることになります。

婚姻時の氏を続けて称したい場合には,離婚の日から3か月以内の手続が必要です(民769条)。
この場合は,新しい戸籍が作られ,親権を行う子がいる場合には,この戸籍に入籍させることができます。

復氏した親が子の親権者の場合には,子の氏と異なるという不都合が生じます。
その場合には,子について「子の氏の変更許可申立」を家庭裁判所に行う必要があります。
さらに,子の氏の変更が認められれば,入籍届を出すことにより,復氏した親権者の戸籍に子が入ることが出来るのです。
したがって,この場合には,復氏した親は,婚姻前の従前の戸籍に戻るのでは無く,新しく戸籍を作らなければ成りません。



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