2014年7月31日木曜日

相続人の廃除

被相続人が亡くなるにあたって,特定の相続人にはどうしても財産を残したくない,と思った場合にはどうしたら良いのでしょうか。

まずは,遺言を書きますね。
遺言で,相続財産の適切な分配先を決めておけば,相続人の一部の人には,遺言が渡らないことになります。



遺留分を持たない相続人の場合には,遺言で決めておくことにより,相続財産が渡ることはなくなります。
たとえば,相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合,一部の兄弟姉妹には絶対に遺産を渡したくない,と思えば,他の相続人に対して遺産を分割する(残したくない相続人には一切遺産を残さない)遺言を書けばよいのです。

しかし,遺留分を持つ相続人の場合には,遺言を残すだけでは十分ではありません。
もちろん,その相続人が,遺言者の意思を尊重して,遺留分減殺請求は行わない,というのであれば,遺言者の意思は守られることになりますが,そうでないことの方が多いでしょう。
(相続させたくない,という被相続人の意思は,当該相続人との利害対立に基づくのが普通であるからです。)

そのような場合に,一つ考えられるのが,相続人の廃除です。

民法892条は,次のように定めています。
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

すなわち,被相続人は,推定相続人を廃除する旨,家庭裁判所に請求できるのです。
廃除できるのは遺留分を持つ相続人ですから,兄弟姉妹のように遺留分のない相続人については,遺言で対応する必要があります。

廃除の要件は厳しくなっており,裁判所は相続人の廃除をなかなか認めてくれることはありません。
なお,相続人の廃除は,遺言で行うこともできます(893条)が,この場合は,なおさら廃除は認められづらいでしょう。

・ 推定相続人が,被相続人に対して虐待をした
・ 推定相続人が,被相続人に対して重大な侮辱を加えた
・ 推定相続人に著しい非行があった

これらのいずれかでなければ,相続人からの廃除をすることはできません。

重要なのは,廃除された相続人については,代襲相続が認められる,ということです。

たとえば,Xには,推定相続人として3人の子(Y,A,B)がいたとします。
そして,XはYに著しい非行があったとして,裁判所にYの廃除を請求し,認められたとします。
この場合,Xの相続人がA,Bだけになる,という訳ではありません。
Yに子Zがいる場合には,ZがYを代襲相続することになりますので,相続人は,Z,A,Bということになります。
相続人の廃除は,当該相続人個人の問題であるからです。

Yの廃除が認められ,未成年のZがXの遺産を相続した場合に,Yがその遺産を自由にすることがないようにするには,別途方策が必要となります。

廃除の認められた場合でも,被相続人は,いつでも廃除の取り消しを家庭裁判所に請求することができます。
また,遺言で廃除の取り消しをすることもできます(以上,894条)。

いずれにしても,相続人の廃除は,親族関係に重大な変化をもたらすことになるので,慎重に考えるべきでしょう。


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