債権回収に困っているが,自分一人では回収が出来そうもない。
第一,自分は仕事があるのだから,債権回収に時間ばかりかけているわけにもいかない。
そんな時,どうしますか。
身軽に動き回れる知り合いがおり,頼めば債権の取り立てくらいはしてくれるそうです。
そこで,その人に,報酬を払って債権回収をお願いすることにしました。
弁護士に依頼するよりも,安くつくと思ったからです。
しかし,これは違法なのです。
弁護士法72条は,次の通り定めています。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
特に債権回収に限って定められた規定ではありませんが,一般の人が巻き込まれやすい事例としては,債権回収なども多いでしょう。
上記事例では,報酬の支払いが発生しているので,同条違反となります。
これに対し,いわゆるサービサーと言われる債権回収会社の例を思い出す方もいるかも知れません。
しかし,サービサーは,債権管理回収業に関する特別措置法により,弁護士法72条の例外(「他の法律に別段の定めがある場合」)として,認められているのです。
そのため,一般の人が,他人のために報酬をもらって債権の取り立てを行うことは出来ません。
弁護士法72条違反は,その取り立てを拒否する理由になるばかりか,違反者に対する刑事罰も定められています(77条3号,2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)。
一定の範囲内では,司法書士が報酬を得て代理行為を行うことが認められています。
これも,弁護士法72条の例外と言えます。
弁護士法72条違反と言われることを避けるために,債権譲渡の形式をとるような事例もありますが,その実質を検討すれば,やはり弁護士法72条違反という場合もあります。
弁護士法72条違反の行為を「非弁行為」といい,弁護士・弁護士会は,非弁行為を防ぐことに力を注いでいます。
弁護士は,専門的知識を前提に資格を与えられこれらの業務を行っているのですが,非弁行為にはその裏付けがないため,トラブルを発生する可能性が高いと考えているからです。
もっとも,なげかわしいことに,こういった非弁行為者に名義を貸すような形で協力する弁護士もいます。
また,非弁護士が集めた顧客から仕事の依頼を受け,非弁護士には紹介料を支払うような弁護士もいます。
これらの弁護士は,非弁提携弁護士,と言って,厳しく取り締まられます。
債権回収に行き詰まった,などというトラブルを抱え込んだときには,もちろん身の回りの人に相談してみても良いのですが,その解決のために報酬を支払ってはいけません。
自分では解決できない,判断できない,と思ったら,弁護士に相談するようにしましょう。
長い目で見れば,非弁行為に頼る方が,確実に高くつきます。
逆の立場でも同じです。
支払いに窮していたところ,突然取り立てを行う人が変わった,などという場合は,相手が非弁行為を行っている可能性もあります。
(もちろん,適法なサービサーや,適法な債権譲渡を受けた者である場合もありますが。)
そのような場合には,あっさり支払ってしまうのではなく,弁護士に相談した上で,解決の方法を考えてみましょう。
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