前回の記事はこちら。
今回の記事は,起訴後,判決確定前の身柄拘束についてです。
起訴後の身柄拘束も,勾留といいます。
なお,起訴前には「被疑者」と呼ばれていた捜査の対象者は,起訴により「被告人」と呼ばれる訴追の対象者となることになります。
1 起訴後勾留の要件
起訴後勾留の要件も,法律上は,起訴前勾留と変わりません。
勾留の要件は,刑訴法60条に次のとおり規定されています。
被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,次のいずれかに当てはまるときに,認められます。
・ 定まつた住居を有しないとき。
・ 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
・ 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2 どのような場合に起訴後勾留されるのか
(1)起訴前に勾留されていた場合
同一の事実によって勾留されていた被疑者が,適法に起訴された場合には,改めて勾留のための手続きをすることなく,起訴後勾留に切り替わります。
また,起訴前勾留されていた被疑者が,被疑者段階とは別の事実で起訴される場合には,「拘留中求令状」といって,裁判官が勾留の必要性を判断します。
ただし,求令状起訴の場合は,ほとんど勾留が認められます。
(2)起訴前に勾留されていない場合
逮捕されて,勾留前の被疑者が,そのまま起訴された場合には,「逮捕中求令状」といって,裁判官が勾留の必要性を判断します。
逮捕もされていない場合には,ほとんどが在宅のままですが,裁判所(第1回公判期日前は裁判官)は,職権で勾留を行うことができます。
ただし,裁判所・裁判官が自発的に職権を発動して被告人の身柄を拘束することはなく,検察官が「求令状起訴」により職権発動を促した際に,勾留の必要性が判断されます。
3 起訴後勾留の期間
起訴前には,勾留期間は最大10日,延長してもプラス最大10日,という決まりがありました。
起訴後勾留には,2ヶ月間(刑訴法60条2項)という決まりがあります。
起訴の日(起訴後に裁判官が職権により勾留した場合は勾留の日)から2か月間となります。
ただし,必要があれば1か月ごとに更新ができます。
一定以上の罪では,更新が無制限に認められます。
それ以外は,更新は1回に限られます。
4 起訴後勾留への対抗手段
(1) 勾留理由開示(刑訴法82条)
起訴前勾留と同じです。
被告人,その弁護人,法定代理人,保佐人,配偶者,直系親族,兄弟姉妹その他利害関係人は,裁判官に対し,勾留の理由の開示を請求することが出来ます。
勾留理由開示は,当該被告人及びその弁護人が出頭した公開の法廷で,行われる手続です。
実質的な勾留理由が開示され,勾留という処分について納得できることは少ないのが実情ですが,接見禁止により近親者との面会も制限されている被疑者にとっては,家族に接することのできるわずかな機会のひとつともなります。
(2) 保釈請求(刑訴法89条,90条,91条)
保釈は,被告人勾留にのみ認められる手続きです。
保釈には種類があり,権利保釈,裁量保釈,義務的保釈があります。
保釈については,記事を改めることにします。
(3) 勾留取消請求(刑訴法87条)
勾留取消請求とは,勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときに認められる手続です。
勾留の開始時には,一応勾留の理由があったといえるが,その後の事情によりもはや勾留を続ける必要がないにも関わらず,検察官が被疑者の身柄拘束を続けている,というような場合に,請求することになります。
被疑者本人,その弁護人,法定代理人,保佐人,配偶者,直系親族または兄弟姉妹が申立てすることができます。
実際には,勾留取消請求が認められることは,多くありません。
(4) 勾留の執行停止(刑訴法95条)
これは,請求により認められる手続ではありませんので,あくまでも裁判所の職権発動を促す,という形になります。
被疑者自身の病気,負傷,出産等や,近親者の危篤,葬儀への出席などのため,一時的に勾留を停止してその身柄拘束を解くという制度です。
ただし,勾留の執行停止は職権判断事項であるため,勾留の執行停止を認めなかった裁判官に対し,不服申立の手段は用意されていません。
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