関西では台風21号が大荒れでした。
幸いにも当事務所は人的物的被害はありませんでしたが,被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。
大阪北部地震やこの台風,関西を離れると,西日本豪雨に北海道胆振東部地震と,国内での天変地異の続いている今日この頃です。
これらの天変地異によって生じた損害についての以下のような相談が増えています。
自宅の屋根から瓦が落ちて他人の自動車に傷をつけてしまった
土地の上に人工的に設置された物である建物からの損害は,民法717条に定められた「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」という問題になります。
1 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
717条は,一般不法行為(709条)の特則と考えられ,故意・過失の要件が変更されています。
民法717条は,一次的に土地の工作物の「占有者」に責任を認め,占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときには,二次的に「所有者」がその損害を賠償する義務があることを定めています。
もっとも,その要件として「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって」という内容になっているため,瑕疵と損害との相当因果関係が必要となります。
上の事例では,瓦が落ちたことが「瑕疵」によるかどうかが問題となりますね。
今回のような超大型台風によって屋根瓦が落ちたからといって,家屋に瑕疵があったと言うことは難しいでしょう。
結局,損害を受けた側は,占有者または所有者に対して損害の賠償を請求することができないことがほとんどです。
老朽化していて見るからに危ない家だった,というような場合には,損害賠償の責任が発生する可能性はあります。
もっとも,これも瑕疵と損害に因果関係があるのか,という問題になります。
今回のように瑕疵の無いと思われる工作物からの損害が多数生じているような天災の場合は,結局瑕疵と損害には因果関係なし(瑕疵がなくても損害は生じていた)ということになりそうです。
一方,まわりはどこも壊れていないのに,その家の瓦や壁だけ崩落した,という場合は因果関係が認められやすそうですね。
天災のような不可抗力の関係する損害を,他人に責任追及することは,それほど簡単ではありません。
もっとも,台風だから諦めるべき,というわけではなく,個別の事例ごとに判断していくことになりますので,一度は相談してみてください。
だれからも賠償を受けられない。
このような場合には損害保険の活用が考えられます。
(瓦が落ちた屋根の補修にせよ,瓦が直撃した自動車の修理にせよ。)
しかし,台風などの風災による損害が,保険でカバーされるかどうかは,保険契約の内容によります。
地震による損害は,一般的な火災保険では保険金が下りない,というのは割合有名かと思いますが,多くの火災保険では風災も保険対象外としているようです。
何が起こるか分からない天変地異,この際保険契約を見直すことも必要かも知れません。
なお,天災による損害については,自治体からの助成金などが支給される場合もありますので,市町村からの情報には注意しておいた方がよいでしょう。
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