2018年11月6日火曜日

借地権譲渡と地主の承諾

家を建てる際には、もちろん土地を買ってその上に建物を建てるという方法もありますが、地主から土地を借り、その上に家を建てるということもあります。
地主に対して主張できる、その土地を使用する権限を借地権と言います。
なお、親子関係などに多い無償の使用貸借もありますが、ここでは省略します。

借地権には地上権と賃借権の2種類があります。
地上権は「物権」の一つであり、非常に強力な権利ですが、多くの借地権は賃借権でしょう。
ここでは賃借権としての借地権について書くことにします。

賃借権自体も登記することはできますが、登記には地主の協力が必要です。
通常は、土地上の建物に借地人名義の登記を備えることで、第三者への対抗手段となります。

第三者への対抗要件を備えたということは、たとえば、地主が売買などによりかわった場合であっても、新しい地主に賃借権を主張できるということです。
これにより、新しい地主から、この土地は自分のものになったから出ていけ、とは言われないことになります。

さて、第三者への対抗力のある土地賃借権とはいえ、地主本人は契約の当事者ですから、建物を第三者へ売ったからといって、自動的に賃借権も第三者に移る、というわけではありません。
これは、賃借権自体を登記したときでも同じです。

賃借権の譲渡・転貸にあたっては、地主の承諾が必要とされています(民法612条)。
地主の立場では、土地の借り主が誰であるかは重要ですので、勝手に処分されては困りますね。

地主の承諾が得られない場合、地主の承諾に代わる許可を裁判所から受ける制度があります(借地借家法19条1項)。
条件として、「第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないとき」とされています。
また、地主の権利を不当に侵害しないように、許可に当たっては「当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」とされています。
さらに、地主側では、どうしても賃借人の交代を認めたくないときには、対抗的に建物を買い取ることも可能です(同3項)。


ややこしいのは、相続に伴う賃借権の移転に際して、地主の承諾が必要かどうか、という点です。

一般的には相続による包括承継の場合には、地主の承諾は不要です。
特に契約書を書き換えたりする必要もありません。

法定相続分にしたがって相続した場合はもちろん、法定相続人間での遺産分割により相続することになった場合も、賃借権を引き継ぐのに地主の承諾は不要です。
また、死因贈与や遺贈で建物(と土地賃借権)を引き継ぐことになった人が法定相続人であれば、地主の承諾は不要とされています。
この場合、地主としては、家の持ち主が代わってしまっても、それは受け入れざるを得ません。

一方、相続手続においても地主の承諾が必要な場合もあります。
死因贈与や遺贈によって財産を得る人が相続人以外であれば、地主の承諾が必要になってきます。


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