2014年4月8日火曜日

遺言に書いてあることは絶対守らないといけないのですか

有効な遺言がある場合には,相続人や受遺者は,それに従わないといけないのでしょうか。

(1)相続放棄

相続人は,相続放棄を行うことが出来ます(民法915条)。

これにより,その相続人は,被相続人の遺言にかかわらず,遺産を相続することはありません。




(2)遺贈の放棄

遺贈は,被相続人の単独行為ですが,受遺者が承認しなければその効果は生じません。
よって,受遺者は,遺贈を放棄することができます。

遺贈には,包括遺贈特定遺贈があります。
財産のうち,特定のものを贈るとするのが特定遺贈で,財産の全部または一定割合を贈るとするのが,包括遺贈です。

特定遺贈の場合には,いつでも放棄することができます(民法986条)が,一度承認または放棄をすれば,これを撤回することはできません(民法989条)。
相続人や遺言執行者に対して放棄の意思を伝えることになります。

包括遺贈の放棄は,自分が包括受遺者であることを知ったときから3か月以内に,家庭裁判所での申述手続を行う必要があります(遺贈放棄の申述,民法990条,915条)。
相続放棄と同様の手続です。

遺贈が放棄された場合,対象となる遺産は,遺言のない相続財産となりますので,相続人間で遺産分割を行うことになります。

遺贈を受けた人が相続人であった場合には,遺贈だけを放棄しても相続人としての立場は変わらないため,相続財産を受け取らないようにするには,相続放棄の申述も必要となります(民法915条)。
(遺産分割で,一切受け取らないという合意が出来れば別ですが・・・)


(3)相続人全員による話し合い

被相続人の意思を尊重してなるべく遺言は守るべきであると言っても,相続人全員による話し合いで,その内容を変更することは可能です。
実際上は,遺産分割が成立してしまえば,遺言があったかどうかが分からないため,通常は問題となることはありません。

遺言執行者が定められている場合には引っかかりますが,この場合も相続人全員が合意している以上,問題ないと考えられています。


(4)遺留分減殺請求

兄弟姉妹以外の法定相続人には,遺留分があります。
相続人が直系尊属(父母等)のみの場合には,遺留分は1/3,その他の場合には1/2が遺留分とされます。

例えば,被相続人Xの相続人として配偶者A,子B,子Cがいた場合,全体として遺留分が1/2あります。
法定相続分で遺留分を分けて,Aは1/4,BとCはそれぞれ1/8の遺留分を,Xの相続財産に対して持つことになります。

Xがこれらの遺留分を侵害するような遺言をした場合,遺留分を侵害された相続人は,他の相続人に対して遺留分減殺請求を行うことができます。

例えば,XがAに対して全財産(1億円相当)を遺贈するという遺言を遺した場合,B及びCは,それぞれ1250万円の遺留分減殺請求をAに対して起こすことが出来ます。

遺留分減殺請求権はあくまでも権利ですので,行使しないで遺言に従うことに問題はありません。

(5)負債に関する遺言

負債を相続人の誰が負担すべきかを遺言で決めた場合,相続人間では有効ですが,債権者との関係では効力がありません。

各相続人は,法定相続分に従って,債務を相続します。

例えば,次のような場合を考えてみます。
被相続人Xが死亡し,相続が開始しました。
法定相続人は配偶者A,子B,子Cであり,XはBに全ての財産と負債を相続させるという,遺言を残しました。
A,B,Cは遺言に従うことにしました。

債権者Yが,Bにしか返済を求めることは出来ないのか,というと,そうではありません。
Yは,Aに1/2,Bに1/4,Cに1/4の割合で,返済を求めることができます。
この求めに従ってAまたはCが返済した場合,Bに対して求償することができることにはなりますが,遺言があるからという理由で,Yの請求を拒むことは出来ないのです。
(この場合,A及びCが相続放棄を行うことで,Xの意図した効果は得られるでしょう。)



以上のとおり,遺言は絶対ではありません。


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