2015年1月31日土曜日

期間の定めのある労働契約の更新拒否について

契約社員等,期間の定めのある労働契約については,契約期間が満了した場合にも,契約を更新して同じ使用者のもとで働き続ける場合もあります。
そして,これらの更新が何度か繰り返された場合,次も更新されるだろうという期待が,労働者の側に生まれてもおかしくはありません。



もっとも,本来期間の定めがあるのですから,期間が満了した際には,使用者・労働者双方の合意がなければ更新されないのが原則のはずです。
それでは,労働者側にうまれた,更新の期待というのは,全く保護される余地はないのでしょうか

この点については,判例の積み重ねにより労働者側の権利がある程度認められるようになり,労働法制が近年改正されています。

まず,労働契約法18条は,5年を超えて反復継続された有期労働契約を,労働者の申し込みにより,無期契約に転換させる仕組みを作っています。
(ただし,空白期間が6か月以上ある場合には,期間はリセットされてしまいます。)

しかし,労働契約法18条だけでは,根本的な解決には至りません。
18条があるから,5年に及ばない継続している有期労働契約は保護する必要がない,というわけではありませんし,使用者としても,この18条の適用を避けるために,5年たったら更新しない,という方法で契約を終了させてしまう対抗策を考えることができるからです。
(むしろ,18条は,契約社員等の立場を弱くする,というような考え方も聞きます。)

有期労働契約を期間の満了により更新せずに終わらせることを,「雇止め」といいます。
雇止めがどのような場合に有効で,どのような場合に無効であるかは,これまで裁判例が積み重ねられてきました。
そして,労働契約法の改正により,第19条には,次のように定められるに至りました。

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を下記,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をするにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること

この19条に該当する場合には,使用者が,契約の更新を望んでいない場合でも,契約の継続を認めざるを得ません。
そして,この状態であくまでも契約終了を選択するということは,期間の定めのない労働者を解雇することと同じ判断基準で,解雇の有効性が判断されることになるのです。
(期間の定めのない労働契約だからといって,どんな時でも解雇が認められるわけではありません。解雇権については,別記事参照。)

19条の適用にあたり,重要なポイントとなるのは,更新に対する労働者側の合理的な期待です。

それでは,はじめから労働者側がこのような期待を抱かないように,あらかじめ労働契約に,更新回数や上限期間を定めていた場合はどうでしょうか。
この条件に合意している以上,労働者としても,更新に対する合理的な期待は持てないかも知れません。
しかし,これらの労働契約上の条件が付いていたとしても,具体的な業務中のやりとり等から,更新に対する期待が生じたとして,19条による契約の更新が認められる場合もあり得ます

それでは,すでに更新に対する合理的期待がある,と判断される更新の段階で,次は更新しない,という条件をつけたうえで契約をした場合はどうでしょうか。
ここでは,次回更新拒絶の条件をつけることにより,既に生じていた更新に対する合理的期待が消滅したかどうかが問題となり,その判断はケースバイケースとなります。

なお,有期労働契約期間においては,やむを得ない理由がなければ,契約期間中に契約解除をすることは出来ない,とされています(労働契約法17条)。



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