2014年5月9日金曜日

遺言を残さずになくなった人の財産はどうなるのですか

遺言を残さずに人が亡くなった場合には,その人の財産はどうなるのでしょうか。
法定相続人がその財産を遺産分割することになるのは,ご存じだと思います。
具体的には,どのように手続を進めていくことになるのでしょうか。




(1)法定相続人とは

亡くなった人(被相続人)に配偶者がいる場合は,必ず相続人となります。

被相続人に子がいる場合には,必ず相続人となります。
子が被相続人よりも先になくなっていたとしても,さらにその子がいる場合には,相続人となります(代襲相続)。
理論的には,孫の代までに限らず,生存している直系卑属のうち被相続人に近い代の人は代襲相続により相続人となります。
亡くなった子の配偶者は,相続人ではありません。

被相続人に直系卑属が一人もない場合,被相続人の親が相続人となります。
この場合に,両親が亡くなっていたとしても,祖父母が存命であれば,相続人となります。
理論的には,祖父母の代までに限らず,生存している直系尊属のうち被相続人に近い代の人が相続人になります。
(片親だけが亡くなっていた場合には,残りの片親が相続人となり,祖父母は相続人になりません。)

被相続人に直系卑属,直系尊属がいない場合,被相続人のきょうだいが相続人となります。
きょうだいが先に亡くなっている場合には,そのきょうだいの子(おい,めい)が相続人となります(代襲相続)。
きょうだいの代襲相続人は,おい・めいまでで,その子には及びません。
亡くなったきょうだいの配偶者は,相続人ではありません。


(2)遺産分割協議

被相続人が遺言を残さなかった時,あるいは遺言があるものの,財産全ての分配方法を決めていなかった場合には,相続人間で遺産分割の話し合いをすることになります。
遺言があった場合でも,それとは異なる分け方を相続人全員で決めることも可能です。

全ての相続人が遺産分割協議に入っていなければ,その遺産分割は無効です。
相続人の範囲は,被相続人の戸籍を遡って,きちんと調べなければなりません。

遺産分割協議では,話し合いにより,相続人の間でどのような分け方をしても構いません。
全財産を配偶者が譲り受けることにしても構わないですし,遺産の大部分を占める不動産を一人が相続する代わりに,相続分に応じた代償金を他の相続人に支払う,などと取り決めることも出来ます。


(3)遺産分割調停・審判

遺産分割協議がまとまらない場合には,家庭裁判所に調停または審判を申し立てます。
調停は話し合いの手続,審判は家事審判官(裁判官)による判断で遺産を分ける手続です。
調停前置主義の適用はないので,いきなり審判を申し立てることも可能ですが,よほどの事情がなければ調停回付されてしまいます。

遺産分割調停がまとまらずに不調に終わった時は,自動的に審判に移行します。

審判においては,法定相続分を基準に,その他の事情を加味して,それぞれの相続人の承継すべき財産が決まります。
調停においても,すでに裁判外での話し合いがまとまらなかったから裁判手続になっているのですから,分割の基準は法定相続分ということになるでしょう。


(4)法定相続分

法定相続分は,相続人の構成によって変わります。

① 配偶者だけの場合
当然ながら配偶者が全部を取得します。

② 配偶者と子
配偶者の法定相続分は1/2
残りを子が等分します。
代襲相続がある場合は,亡くなった子が本来相続できた分を代襲相続人が等分することになります。
なお,非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とするという規定は廃されました。

(例)相続人が妻A,子B,亡くなった子Cの子D・Eであった場合。
    妻Aの法定相続分は1/2
    子Bの法定相続分は1/4
    D・Eの法定相続分は1/8ずつ
    Cの配偶者が生存していても相続人にはなりません

③ 子だけ
子が等分します。
代襲相続がある場合は,亡くなった子の取り分を代襲相続人が等分することになります。

④ 配偶者と親
配偶者の法定相続分は2/3
残りが親の相続分です。両親が生存している場合は,等分することになります。

⑤ 親だけ
片親だけが生存している場合は全部をその片親が相続。
両親が生存している場合は,両親で等分することになります。

⑥ 配偶者ときょうだい
配偶者の法定相続分は3/4
残りはきょうだいで等分します。
代襲相続がある場合は,亡くなったきょうだいが本来相続できた分を代襲相続人が等分することになります。

(例)相続人が妻A,妹B,亡くなった弟Cの子D・Eであった場合
   妻Aの法定相続分は3/4
   妹Bの法定相続分は1/8
   D・Eの法定相続分は1/16ずつ
   Cの配偶者が生存していても相続人にはなりません


(5)法定相続人がいない場合

最後に,法定相続人がいない場合の手続について,触れておきましょう。

① 相続財産管理人
遺言のあるなしに関わらず,法定相続人がいない場合には,利害関係者や検察官の請求により,家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
相続財産管理人の選任は公告され,2か月以内に相続人は名乗り出るように促します。

② 債権者及び受遺者に対する申出の催告
2か月たっても相続人が現れなかった場合,相続財産管理人は,被相続人の債権者や被相続人の遺言により財産を受け取ることになっている受遺者に対し,申し出るよう2か月以上の期間を定めて公告します。
申し出る債権者や受遺者があった場合には,期間満了後に清算手続が行われます。

③ 相続人不存在の確定
さらに6か月間,相続人を探すための公告が行われ,この期間が経っても相続人が現れなかった場合には,相続人不存在が確定します。

④ 特別縁故者への財産の分与
相続人不存在の確定後,被相続人と生計を共にしていたり,介護をしていたなど,特別のエンコがある人は,3か月以内に財産の分与を請求することが出来ます。
遺言で財産を残してもらえなかった内縁関係にあった人なども,ここで財産の分与が認められることがあります(②の清算手続の後ですので,不利ですね)。

⑤ 国庫
特別縁故者への分与を経ても,財産が残っている場合には,国庫に納められます。



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