2014年5月14日水曜日

後見,保佐,補助制度の違いを教えて下さい

精神障害の程度により後見,保佐,補助という3段階の制度があることはご紹介しました。
その記事はこちら

具体的な違いは何でしょうか。



(1)開始の要件

後見開始の要件は,本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」ことです(民法7条)。

保佐開始の要件は,本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である」ことです(民法11条)。

補助開始の要件は,本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」ことです(民法15条)。

精神障害の程度が進むにつれて,補助,保佐,後見となっていくことは分かると思います。
しかし,精神障害の程度は段階的に無数に存在しますし,人それぞれの特性もあって,客観的で明確な判断が可能というわけではありません。

そのため,各手続を開始するかどうかについては,鑑定意見を参考にしつつも,最終的には家事審判官による判断となります。
そのため,後見開始の申立をしたとしても,保佐相当にとどまるとして保佐開始の審判がなされることもあります。


(2)後見人が出来ること・出来ないこと

後見人は,被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表します(民法859条)。

また,後見人は,本人の法律行為を取り消すことができます。
ただし,後見人が取消権を行使することはあまりないとされています(民法9条)。
本人が消費者被害にあったような場合には,取消権を行使すべきでしょう。

取消権があるということは,後見人が行った法律行為は最初から無効,というわけではないということです。

日常生活に関する行為については取消権が認められません(同条ただし書き)。
その他,後見人が本人に代わって出来ないことについては,別の記事にまとめましたので,そちらを参照して下さい。


(3)保佐人が出来ること・出来ないこと

保佐の開始がなされた場合,本人が民法13条1項に列挙された法律行為を行う際に,保佐人の同意がなければなりません(民法13条1項)。
この同意がなくなされた本人の行為については,保佐人が取り消すことができます(同条4項)。

同意を要する法律行為は,必要に応じて家庭裁判所の審判により増やすこともできます(同条2項)。

民法13条1項の列挙事項以外であれば,保佐人は自分で判断して法律行為を行うことができ,それを保佐人は取り消すことができません。

(参考) 民法13条1項の列挙事項
①  元本を領収し、又は利用すること。
②  借財又は保証をすること。
③  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④  訴訟行為をすること。
⑤  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
⑥  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。


(4)補助人が出来ること・出来ないこと

補助開始の審判と同時になされる補助人の同意を要する旨の審判により,本人が行う一定の法律行為につき,補助人の同意が必要となります。
補助人の同意が必要とされる法律行為は,民法13条1項の列挙事項の一部に限られ(以上,民法17条1項),補助開始の申立と一緒に,同意権の必要な事項を申し立てるのが通常です。

この同意を要する旨の審判を行うためには,本人による申立か,そうでない場合は本人の同意が必要となります(民法17条2項)。

補助人の同意を要する法律行為につき,本人が単独で行った場合には,補助人が取り消すことができます(同条4項)。



なお,3つの制度に共通しますが,「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」とされています(民法21条)。


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