2017年6月13日火曜日

法定相続情報証明制度が始まりました

平成29年5月29日から,全国の法務局において,各種手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

1 法定相続情報証明制度とは

法務局に戸籍・除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧にした図を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してもらえる,という制度です。

この認証文付一覧図を,相続手続を取り扱う各種窓口に提出することで,これまで毎回戸籍・除籍謄本等の束を提出する必要があった手続の煩雑さを軽減することが出来ます。

2 法定相続情報証明制度の利用

まず想定されているのは,不動産の相続登記の場面です。
不動産について,相続の登記がなされず放置されているケースは多数あり,いろいろと社会的問題になっています。
我々弁護士も,依頼を受けて不動産登記簿を調べたら,実態とは異なりはるか昔に亡くなった人が所有権者として登記されていることも少なくなく,問題の解決に想像以上の労力と費用がかかることがあります。
このような事態にならずに,相続登記を積極的に促す狙いがあるのでしょう。

それ以外にも,相続が発生すれば,いろいろな窓口での手続が必要になります。

金融機関においても,徐々に利用が広がっていく見込みです。
すでに利用可能である旨公表している金融機関も存在します。

裁判手続ではどうでしょうか。
相続関係の事件が調停や訴訟などの裁判手続になることが多く,これらのために,戸籍・除籍類の束を裁判所に出す必要があります。
今のところ,残念ながら裁判所が対応するという話は聞きません。

(6月16日追記)
一部の家庭裁判所で法定相続情報一覧図の利用を受け付けるようになったという情報がでました。
各裁判所が,徐々に対応するようになっていくものと思われます。
(追記以上)



3 法定相続証明制度により相続手続は簡単になるのか

戸籍・除籍の束一式を抱えて,窓口ごとに相続関係を説明したり,場合によっては手続きごとに戸籍・除籍の一式を取得し直さなければならない羽目になったり,といった非効率的な運用は軽減されるので,この点では歓迎すべき制度ですね。

もっとも,戸籍・除籍一式の取り寄せを行わなければならないという点では,一番面倒な部分はクリアされていませんね。
もちろん,あくまでも法定相続関係の証明の負担が軽くなるだけであるため,相続にまつわるもめ事・紛争を解決するのには,役に立つものではありません。
また,すでに長年放置された不動産登記の問題などは,個別で解決していくしか仕方が無いので,この制度が出来たから解決につながる,というわけではありません。

少し手続の煩雑さが軽減されたことは歓迎すべきでしょうが,相続手続には,まだまだ自身で処理するのが難しい問題はたくさんあります。
このような場合には,必ず専門家への相談を行うようにして下さい。

相続人間でもめているときは弁護士に。
税金関係の手続は税理士に。
不動産登記の手続は司法書士に。
などといった具合です。
(私に相談いただければ,各専門家をご紹介することも可能ですし,もめごとの解決後の諸手続についてはご自身の知り合いの専門家に依頼する,という方針でもお引き受けいたします。)

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