2014年12月17日水曜日

偽装請負,偽装派遣について

偽装請負という言葉を聞いたことはありませんか。あるいは偽装派遣という場合もあります。


X社は,商品Aのメーカーであり,商品AのパーツBを下請業者Y社に発注して組み立てています。
しかし,Y社は,実際には自身だけでパーツBを組み立てる能力はなく,孫請業者Zに発注して,Zに作成させています。

この状態では,違法なのか合法なのかは分かりません。
それでは,次のような場合はどうでしょうか。

Zは,X社の工場に行き,パーツBを組み立てることになりました。
そこでは,Y社から指示されるのではなく,X社の責任者から指示されながら,パーツBの組み立てを行うようになりました。

このような場合,はたしてZはY社の下請け,X社の孫請けの関係にあると言えるのでしょうか。
Y社の果たした役割に着目してみましょう。
Y社は,X社から何を注文されたのでしょうか。
パーツBを組み立てる人員としてZをX社に送り込んだだけではないでしょうか。
このようなY社の役割を,聞いたことはありませんか。
そう,労働者派遣です。

すなわち,この事例では,契約書上は,X社とY社の間に請負契約があり,Y社とZ社の間に請負契約がある(ZはX社の孫請け)ように見えますが,実質的には,Y社がX社に対して,Zを派遣しているといえるのです。

こういう状態を,偽装請負と言います。
実質的には労働者派遣であるという点に着目して,偽装派遣と言うこともありますが,偽装請負と偽装派遣がさすのは,同一のものであると認識してよいでしょう。

X社とY社は,なぜ本当は労働者派遣なのに,孫請け関係のような法律関係をよそおったのでしょうか。
また,このように偽装されることで,誰がどのような不利益を受けるのでしょうか。

偽装をする理由と,それによる不利益は表裏一体です。
偽装を作出したX社,Y社にメリットがあり,それにより割を食うのは,Zであるというのは予想できるのではないでしょうか。

実態どおり労働者派遣契約であるということになれば,Zは労働者ということになります。
労働者であれば,労働基準法等の労働法規の規定に服することになります。
ところが,請負契約であるとすれば,労働法規の適用はありません。
労働法規において労働者は,使用者に対して弱い立場にあるという前提から,保護が図られています。
これに対して,請負契約であれば,請負人が注文者よりも弱い立場にあるとは必ずしも言えないため,請負人が保護されるのは下請法等のごく一部に限られています。
Zは,「使い勝手が悪い」と評価されると,簡単に契約を切られてしまうのです。
もちろん,社会保険,有給休暇,福利厚生など,労働者であれば求めることができる権利を,Zは享受することは出来ません。

要するに,Zは,実態に反して不利益な契約を結ばされているということになります。

なお,Y社とZとの契約は,業務委託を装われることもあります。

請負を装われたZが,労働者としての地位の確認を求めることは可能です。
また,偽装請負はもちろん違法であるため,X社,Y社は,刑罰を含めた規制に服しますので,被害者であるZは,刑事告訴等を行うことも可能です。

偽装請負をしたX社,Y社は,法律上のペナルティを受けるほか,コンプライアンス違反として社会的評価の低下も招くことになります。


摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,労使問題に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。