2014年9月1日月曜日

上告審の手続

刑事裁判では,正式に起訴(公判請求)された場合,第1審が簡易裁判所でも地方裁判所でも,必ず控訴審(第2審)は,高等裁判所となります。



そのため,上告審は,必ず最高裁判所の管轄となります。

最高裁判所は,全国でただ1カ所存在する裁判所であり,3つの小法廷と,大法廷からなります。

上告を行った場合,通常は,いずれかの小法廷に係属することになります。

さて,控訴審の弁論手続では,必ずしも被告人の出席は必要ではありません。
上告審ではどうなのでしょうか。

実は,上告審では,弁論が開かれることも”まれ”ということになります。

刑事の上告理由は,後述のとおりに決まっており,それに当てはまるようなケースはほとんどないため,弁論が開かれることはないのです。
したがって,上告した後に書くことになる,「上告趣意書」が,ほとんど唯一の主張機会となります。

刑事事件の上告理由は,刑事訴訟法405条に規定されています。
① 判決に憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあること(1号)
② 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと(2号)
③ 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又は刑事訴訟法施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと(3号)

これらの場合には,上告理由があるということになりますが,ほとんどは上告理由が見つからない事件ばかりです。
(もちろん,憲法違反等の主張を,上告趣意書にて行うことにはなりますが,それが認められる主張である可能性は低いです。)

一方,上告理由が見つからない場合にも,最高裁が原判決を変更できる場合が定められています(刑事訴訟法411条)。
①  判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
②  刑の量定が甚しく不当であること。
③  判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
④  再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
⑤  判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

これらの事情が認められることは,ほとんどありません。
事実誤認という最重要の部分まで,調べるかどうかが裁判所の職権に委ねられているというのは,一見,不合理に見えるかも知れませんが,最高裁の役割を考えると仕方ない部分かも知れません。

したがって,刑事裁判においては(刑事裁判においても),第1審が最重要であり,控訴審は,それをひっくり返すことのできる最後の機会と考えておいた方が良さそうです。

弁論を開かない場合の,最高裁の判断はあっけなく,3行程度の理由が書かれた決定書が送られてくるだけです。

最高裁で弁論が開かれる場合というのは,判決の変更がありうる場合,と考えておいて良いでしょう。
なお,死刑事件については,判決変更がなくても弁論を開く慣習になっている,ということです。
死刑が,国家による最大の人権侵害である,という考えからすれば,これもうなずけるところです。


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