昨日(平成26年11月4日),東京地裁において,過労自殺を巡る民事裁判で,事業者に対し約5790万円の損害賠償を命じる判決がなされたそうです。
事業者側の過失相殺の主張を認めなかったそうで,これは画期的ともいえる判決ですね。
さて,過労死等防止法とはどのような法律でしょうか。
過労による脳血管疾患・心臓疾患は死亡につながる可能性もあり,また精神疾患は自殺に繋がる可能性もあります。
今回施工された過労死防止法においては,「過労死等」については,第2条において,次のように定義されています。
この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。
もっとも,形式的には,過労死等の防止のための対策推進を定めた法律です(第1条)。
基本的には行政のとるべき措置等が定められており,事業者は,行政のとる過労死等防止のための対策に協力するという努力義務が定められているに過ぎません(第4条3項)。
したがって,労働者は,この過労死等防止法によって何らかの権利を認められる訳ではありません。
同法律に基づいて事業者に対して待遇の改善を求めることはできないでしょう。
不幸にも過労死等が生じてしまった場合も,従前どおり,労働関係法や民法の規定による損害賠償等の請求を行うことになります。
もっとも,このような法律も施行され,事業者には協力義務も(努力義務とはいえ)規定されているのですから,過失相殺などの主張はより通りにくくなる可能性はあります。
願わくば,これをきっかけにブラック企業などと呼ばれる事業者が無くなりますように。
売上のためには労働者の環境の悪さに目をつぶっていた事業者の方々は,これを機会に見直しを行わなければ,労働問題により,後から事業存続の危機に直面する可能性もありますよ。
なお,国民は,過労死等を防止することの重要性を自覚し,これに対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。という国民の努力義務が定められています(第4条4項)。
そのため,毎年11月は過労死等防止啓発月間と定められました(第5条)。
人ごととは思っていられない,ということです。
労働者の側も,何のために働くのか,自分の身体に異変はないのか,おかしいなと思ったら,すぐに相談するようにしましょう。
緊急の相談の場合には,なるべく時間外でも対応するようにしますので。
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