従来の住所・居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に,家庭裁判所は,申立てにより不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,財産管理人選任等の処分を行うことができます。
これを不在者財産管理人制度といいます。
1 不在者とは
不在者とは,住所又は居所を去った者であり,容易に戻る見込みのないものです。
引越しして転居したからといって不在者となるわけではありません。
(転居先が住所または居所となります。)
実刑判決をうけてしばらく刑務所に入っているからといって不在者となるわけでもありません。
(刑務所が居処となります。)
要するに,行方不明になっていて,どこに居るか分からないという状態であることが必要です。
そして,不在者であると認められるには,一定の調査を行うことが求められます。
なお,後述の「執行宣告」制度においては,行方不明の期間が一定以上なければなりませんが,不在者財産管理人制度との関係においては,期間は無関係です。
(かといって,行方不明になって3日目というようなケースで,不在者財産管理制度が適用されることはないでしょうが。)
2 どんな時に利用されるのか
不在者財産管理制度は,文字通り不在者の財産の管理をする必要がある場合に利用される手続です。
遺産分割に際して相続人の一人に行方不明者がいる場合や,共有状態の不動産を処分する必要がある場合などにも利用することは出来ます。
ただし,不在者財産管理人の権限は,原則として,民法103条に定められた保存行為や,利用又は改良を目的とする行為に限られています。
そのため,不在者財産管理人は,不在者の財産の処分行為等を行う場合には,家庭裁判所の許可を得なければなりません。
その場合,不在者の不利になるような処分行為等は許可されませんので,例えば遺産分割のシーンでは,少なくとも不在者については,法定相続分の取り分が確保されなければなりません。
家庭裁判所に対する申立ては,利害関係人,例えば共同相続人の一人などが行います。
3 不在者財産管理人の報酬
申立てにあたっては,数十万円の予納金を納めるように家庭裁判所から指示されます。
これは,不在者財産管理人の報酬金に引き当てられるものであり,不在者に財産がある程度ある場合には,あとから還付されますが,そうでない場合には戻ってこないものと思っておいた方が良いでしょう。
不在者財産管理人報酬は,管理人の申立てにより家庭裁判所が決定します。
4 不在者財産管理の終了原因
ア 管理財産が消滅したとき
報酬が毎年払われていって,管理すべき財産がゼロになった場合も含みます。
イ 不在者の所在が判明したとき
財産の管理処分権は,(元)不在者に戻ります。
ウ 不在者の死亡が明らかになったり,失踪宣告があったとき
失踪宣告は死亡とみなす制度ですので,いずれにしても当該不在者について相続が開始されます。
5 失踪宣告との関係
失踪宣告は,不在者が死亡したとみなす制度です。
これは通常時(普通失踪)であれば7年間,危難時の遭難等の場合(特別失踪)であれば1年間,生死が明らかでない不在者がいる場合に,申し立てすることができます。
普通失踪では,生死不明の状態が始まってから7年後に,特別失踪であれば危難の去ったときに死亡したものとみなされます。
死亡したものとみなされた日に,死亡の効果が発生するため,その時点で相続,配偶者との婚姻関係の終了等が発生することになります。
不在者財産管理制度は,不在者が生きていることを前提とした制度ですので,失踪宣告との使い分けが必要となります。
例えば,Aが行方不明になって7年以上たったあとに,Aの父Bが死亡して相続が開始した場合,Aは失踪宣告によりBより先に死亡していたことになりますから,それを前提として相続手続を行わなければなりません。
一方,Aが行方不明になって7年たたないうちに,Aの父Bが死亡して相続が開始した場合,AはBの相続人となりますから,Bの相続手続にあたっては,Aの不在者財産管理人による遺産分割手続参加が必要となるのです。
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