2017年2月8日水曜日

相続税対策の養子縁組の有効性について

相続税対策の養子縁組の有効性について,最高裁判所の判決が出ましたので御紹介します(平成29年1月31日第3小法廷判決)。

孫を養子にすれば,養親である被相続人(養子から見れば,血縁上は祖父母)が亡くなった場合,財産を孫に(も),直接相続させることが可能になります。
被相続人の財産がそれほどない場合にはこのような工夫は必要ありませんが,資産家の場合には,一度の相続で負担することになる相続税の金額が馬鹿にならないため,養子縁組が相続税対策として利用されることがあるのです。

この最高裁判決のもととなった事件も,このような相続税対策の養子縁組の有効性が争われた事件でした。
民法802条1号は,当事者間に縁組をする意思がない場合には養子縁組は無効になると定めています。
養子縁組とは,養親になる者と養子になる者との間に,親子関係を発生させるものですので,相続税の節税のために行う養子縁組が,果たして縁組をする意思に基づいて行われたと言えるのかが問題となるのです。
上の例で言えば,祖父母と孫の間に,親子関係を作る意思,というのが果たして存在すると言えるのでしょうか。
縁組をしたところで,当事者は,祖父母と孫という人間関係を変えたいとは思っていないのではないでしょうか。

今回の最高裁判決では,「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」とされました。
要するに,相続税節税目的の養子縁組であっても,有効な養子縁組だと認められたのです。
その理由として,相続税の節税の動機と,縁組をする意思とは併存しうるものであることが挙げられています。
少しわかりにくいかも知れませんが,普通養子縁組において発生する「親子関係」というのは,いわゆる親子の情などによる結びつきを意味するのではなく,あくまでも法的な親子関係に過ぎないということです。
今回の判決は,当たり前のことを判断したとも言えるでしょう。

法的な親子関係を発生させる意思というのは,実に様々な動機と両立し得ますし,実際,相続税節税の動機だけでなく,様々な理由で養子縁組は行われています。
ただし,養子縁組の際に守るべきルールは何点かあり,それに違反した場合,民法802条で無効とされる場合のほか,民法803条以下で取り消される場合が規定されています。

摂津市,吹田市,茨木市,高槻市,島本町で,遺言相続に関するご相談は, 大阪北摂法律事務所まで。 もちろん他の地域からのご相談も受け付けています。 お気軽にどうぞ。