特定商取引法で規制される訪問販売取引とは,どのような取引でしょうか。
セールスマンが自宅を訪問し,商品を販売する取引が,訪問販売に当たることは,当然ながら,路上等で呼び止めた後に営業所等に同行させて販売するキャッチセールス,電話等で販売目的を告げずに事務所等に呼び出して販売するアポイントメントセールスなども,訪問販売取引規制によって規制を受けることになります(特商法2条1項)。
特定商取引法の対象となる業者は,販売業者と役務提供事業者でしたね。→記事
以下では,販売業者と役務提供事業者をあわせて「業者」と記載します。
訪問販売については,業者に対し,次のような規制がされています。
★ 氏名等の明示義務(特商法3条)
ここで明らかにしなければならないのは,次のとおりです。
① 業者の氏名または名称
② 売買契約(役務提供契約)の締結について勧誘する目的であること
③ 勧誘にかかる商品または権利(役務)の種類
★ 契約を締結しない旨の意思表示をした者に対する勧誘の禁止(特商法3条の2)
業者は,まず,対象者に対し,勧誘を受ける意思があるかどうかを確認することが求められます。これは努力義務です。
さらに,対象者が契約を締結しない旨の意思を表示した場合には,それ以上の勧誘をしてはいけません。
★ 契約申込みを受けた際の書面の交付義務(特商法4条)
業者は,契約の申込みを受けた際には,次のような事項の書かれた書面を対象者に交付する義務があります。
ただし,そのまま契約締結に至った場合には,この書面を交付する必要はありません(第5条の書面交付義務に収束します)。
法律で定められている書面の記載事項は,次のとおりです。
① 商品または権利(役務)の種類
② 商品または権利の販売価格(役務の対価)
③ 商品または権利の代金(役務の対価)の支払い方法
④ 商品の引渡時期または権利の移転時期(役務の提供時期)
⑤ クーリングオフに関する事項(特商法9条2項~7項)
※ このクーリングオフには,契約解除だけでなく申込の撤回も含みます
⑥ そのほか省令で定める事項 → 特商法規則3条
ア 業者の氏名または名称,住所および電話番号,
さらに法人の場合には代表者氏名
イ 契約の申込みまたは締結を担当した者の氏名
ウ 契約の申込み又は締結の年月日
エ 商品名及び商品の商標又は製造者名
オ 商品に型式があるときは、当該型式
カ 商品の数量
キ 商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
ク 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
ケ 前2号に掲げるもののほか特約があるときは、その内容
★ 契約締結の際の書面の交付義務(特商法5条)
業者は,
・ 営業所等の外で契約を締結した場合
・ 営業所等の外で契約の申込みを受け,営業所等で契約を締結した場合
・ キャッチセールスやアポイントメントセールスによる顧客と契約を締結した場合
には,遅滞なく(申込みからそのまま契約締結の場合には,直ちに),第4条に定められた要件を備えた書面を,対象者に交付する義務があります。
※ ただし,この場合は,クーリングオフに関する事項は,契約解除の場合に絞られます。
すなわち,申込から契約締結まで時間がある場合には,4条書面と5条書面の両方を交付する必要があります。
なお,契約と同時に,商品引渡もしくは指定権利の移転または,役務の提供をし,かつ代金または対価の全部の支払いが行われた場合には,前述の③,④は書面に記載する必要はありません。
★ 禁止されている行為(特商法6条)
① 業者は,対象者に対し,契約締結のための勧誘の際,あるいは,申込みの撤回や解除を妨げる際に,次の事項について,不実のことを告げてはいけません。
② 故意に事実を告げないこと,も禁じられています。
③ 対象者を威迫して困惑させてはなりません。
④ 勧誘目的であることを告げずに,営業所等以外の場所において対象者を呼び止めて同行させること等は禁じられています。
訪問販売取引の申込を撤回・契約を解除する手段
民法の一般規定による申込の撤回・契約の解除は可能です。
それ以外に,特定商取引法ならではの原因が認められることがあります。
そのひとつとしてクーリングオフ(特商法9条)が有名ですが,これは訪問販売取引の場合に限ったものではないため,詳しい内容については,別の記事にしたいと思います。
訪問販売取引の場合に認められる撤回・解除の原因として,過量販売(特商法9条の2)があります。
① その1回で,日常生活においおて通常必要とされる分量・回数・期間等を著しく超える売買契約または役務提供契約
のほか,
② 同一業者との複数回契約により,過量となる場合,
③ 複数業者による契約で,業者が今回の契約で過量となることを知っていた場合
には,過量販売と認められます。
ただし,業者が,対象者側に当該契約を締結する特別の事情があったことを立証した場合には,過量販売による撤回・解除は出来ません。
また,過量販売の訪問販売取引を解除できるのは,契約締結時から1年以内です。
契約締結前の申込の撤回は,いつでも出来るということになります。
不実告知・故意の事実不告知による取消権行使
以上のほか,訪問販売では,第6条①,②違反により契約締結に至った場合に,消費者側から取消権を行使することが認められます(特商法9条の3)。
この取消権行使は,訪問販売取引以外の一定の取引においても,準用されます。
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