2026年5月19日火曜日

自筆証書遺言書保管制度について

法務局における遺言書保管制度が、2020年7月10日から開始されました。


自分で書く「自筆証書遺言」のメリットを活かしつつ、デメリット(紛失、隠匿、形式不備による無効など)を解消するために作られました。実務上も非常に利便性が高く、利用者が増えている制度です。

この制度の概要、メリット、手続きの流れについて分かりやすく解説します。

1. 制度の主なメリット
従来の自筆証書遺言は「自宅で手軽に書ける反面、紛失や改ざんのリスクがあり、死後に家庭裁判所の『検認』が必要」という負担がありました。
この制度を利用すると、以下の強力なメリットが得られます。

紛失・隠匿・改ざんの防止
遺言書の原本が法務局(遺言書保管所)に安全に保管されるため、紛失や、特定の相続人による破棄・隠匿・改ざんの恐れが完全になくなります。

家庭裁判所の「検認」が不要
自筆証書遺言は通常、遺言者の死後に裁判所で「検認」という手続きを踏まないと遺産分割協議や各種名義変更に使えませんが、この制度を利用した遺言書は検認が不要になります。相続開始後、速やかに手続きに移れるため、相続人の負担が大幅に軽減されます。

外形的な形式チェックを受けられる
申請時に、法務官が「日付はあるか」「署名・押印はあるか」といった民法上の形式要件を満たしているかを確認してくれます(※遺言内容自体の有効性を保証するものではありません)。

通知システム(死亡時通知)
あらかじめ希望しておけば、遺言者が亡くなった際、法務局が戸籍担当部署と連携して死亡を検知し、指定された相続人等(1名)に「遺言書が保管されていること」を自動で通知してくれる機能があります。


2. 保管できる遺言書の種類とルール
対象となるのは「自筆証書遺言」のみです(公正証書遺言や秘密証書遺言は対象外)。
また、法務局のシステムで画像データとしても管理するため、用紙のサイズや余白に厳格なルールがあります。

用紙サイズ: A4サイズのみ(片面印刷・筆記)

余白: 上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上の余白が必須

綴じ方: 複数枚になってもホチキス等で綴じてはいけない(契印も不要)

財産目録の緩和: 本文は自筆が必要ですが、財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピー、登記事項証明書の添付でも認められます(ただし、目録の全ページに署名・押印が必要)。

用紙サイズの限定や、綴じ方については、保管制度を利用しない自筆証書遺言とは異なるところです。


3. 手続きの流れ(遺言者本人が行うこと)
保管申請の手続きは、必ず遺言者本人が法務局に出向く必要があります(代理申請は不可)。

① 保管する法務局(遺言書保管所)を選ぶ
以下のいずれかの管轄にある法務局(本局・支局のうち指定された保管所)を選択します。

・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地

② 予約と申請
遺言書、申請書、添付書類(住民票の写し、顔写真付きの本人確認書類など)を用意し、法務局に事前予約を行った上で出向きます。

費用(手数料): 遺言書1通につき 3,900円(収入印紙で支払い)

③ 保管済証の受取り
手続きが完了すると、遺言者の氏名や出生の年月日、保管番号などが記載された「保管済証」が交付されます。

4. 遺言者の死後に相続人が行うこと
遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者、遺言執行者は以下の手続きを行うことができます。
・遺言書保管事実証明書の請求
・遺言書情報証明書の請求・・・検認済み遺言書と同じ効力をもつ書面で、各種相続手続きに用いることが出来ます。
・遺言書の閲覧



まとめ
公正証書遺言を作成するほどのコスト(公証人費用など)をかけたくないものの、自宅保管によるリスク(紛失・死後に発見されない・無効になるリスク)を回避したい場合には、有力な選択肢となります。




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2026年5月12日火曜日

共同親権について

2024年5月に成立した改正民法により、日本でも離婚後の「共同親権」が導入されることになりました。

そして、2026年4月1日から、実務上の運用が本格的に始まりました。





1. 原則と選択制

これまでは離婚後、父母のどちらか一方が親権者となる「単独親権」のみでしたが、改正後は「共同親権」か「単独親権」かを父母の協議で選択できるようになりました。

  • 協議で決まる場合: 父母が合意すれば、共同親権を選択できます。

  • 協議が調わない場合: 家庭裁判所が、「子の利益」を最優先に考慮して、共同か単独かを判断します。

2. 裁判所が「単独親権」を命じるケース

共同親権が原則として検討される一方で、子の安全が脅かされる可能性がある場合は、裁判所は必ず「単独親権」を定めます。

  • DV(配偶者暴力)や虐待: 一方の親による暴力や虐待の恐れがある場合。

  • 関係破綻: 父母の対立が激しく、共同して親権を行使することが困難と認められる場合。

3. 親権行使のルール(日常と緊急時)

共同親権において、あらゆる決定に双方の合意が必要となると生活が停滞するため、以下の例外が設けられています。

  • 日常の行為: 習い事の選択、食事、軽微な治療などは、同居している親が単独で判断可能です。

  • 急迫の事情: 緊急の手術や虐待からの避難など、猶予がない場合は一方が単独で親権を行使できます。

  • 重要な決定: 教育方針(進学先)、転居、重大な手術などは、原則として父母の合意が必要となります。

4. 養育費と面会交流の強化

親権のあり方だけでなく、子の生活を支える実務面も強化されました。

  • 法定養育費制度: 養育費の取り決めをしなくても、一定額を請求できる仕組みが新設されました。

  • 先取特権の付与: 養育費債権に優先的な効力(先取特権)が認められ、強制執行が容易になりました。

5. 過去の離婚への適用

この制度は、法改正前に離婚した父母にも適用可能です。すでに単独親権で離婚している場合でも、家庭裁判所に申し立てて「子の利益」にかなうと認められれば、共同親権に変更することができます。


この制度変更により、親権の有無にかかわらず「父母双方が子の養育に責任を持つ」という理念が明確化されましたが、実務上は「日常の行為」と「重要な決定」の境界線など、個別の事案に応じた解釈が重要になります。

親権があることと、一緒に生活することはまた別の話で、一緒に生活するのは監護権を持つ親ということになります。
もっとも、共同親権の導入により、監護の分掌など、より柔軟な監護のあり方についても選択肢が広がったと言えます。


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